生存戦略だったカモフラージュ 発達障害受け止めた上司の存在
毎日新聞 2026/3/30 05:00(最終更新 3/30 05:00) 有料記事 3406文字
取材に応じる真由さん=東京都内で2025年11月4日、渡部直樹撮影
会社にかかってきた電話に出るときは、事前に頭の中に言葉を用意し、セリフを読むように話す。飲み会では大きめに声を出し、笑ってみる。
声色や相づち、間の取り方。真由さん(29)=仮名=は周りを観察して学習してきた。それが周囲から浮かないための「生存戦略」だった。
発達障害のある人は、自分の特性を隠して、無理して社会に溶け込もうとすることがある。こうした行動は「カモフラージュ」と言われる。
入社後、ストレスを抱え込んだことを機に、発達障害の診断を受けた。カモフラージュによって疲れ果てていた。
だが職場には、たった一人の理解者がいた。
上司の山崎淳さん(50代)=仮名=だ。山崎さんを起点に、変化が生まれた。
想定外のやりとりにパニック
集団行動がずっと苦手だった。高校の文化祭では、疲れてトイレの個室にこもっていた。関東地方の国立大に入学したが、授業のグループワークになじめず、友達の輪に入れなかった。授業に足が向かなくなり、卒業に必要な単位はぎりぎりだった。
就活では数社受け、中規模の東京都内の出版社に入社した。出版物に誤りがないかを確認する校正の仕事だった。文章を読むのは得意だった。のんびりした社風も気に入った。
でも入社後、壁が立ちはだかった。
校正は細かなことに気がつく自分に合っていたが、電話応対は苦痛だった。
真由さんは音声の情報を処理するのが苦手だ。臨機応変な受け答えが求められ、見通しがつかないのも不安だった。マニュアルを頼りに受け答えしていたが、想定外のやり取りが生じるとパニックになった。
「めっちゃ笑うんだね」と言われ…
会社の飲み会にも苦労した。元々、会話の相手と視線が合いづらく、感情が顔にあまり出ない。3人以上の会話ではどのタイミングで話せばいいのか全く分からず、黙ってしまう。
溶け込むために必死だった。…