「理系は無理」「高学歴は結婚できない」女子への偏見が阻む理数教育

NPO法人「Waffle(ワッフル)」の田中沙弥果理事長=ワッフル提供

 日本のSTEM(理工系分野)の学部の女性比率は、経済協力開発機構(OECD)加盟国で最下位に沈んでいる。

 女子中高生らの理数系教育支援に取り組むNPO法人「Waffle(ワッフル)」の田中沙弥果理事長(34)は、根底にある社会のジェンダーバイアスの影響を指摘する。

日本の女子の理数系は世界トップレベル

 ――理系のジェンダーギャップに注目するようになったきっかけはなんですか。

 ◆2017年から学校現場のプログラミング教育を支援するNPO法人で働きましたが、中高生向けのプログラミングイベントで、参加生徒の男女比が「20対1」でほとんど女子がいない状況を目の当たりにしました。

 副業として女子中高生のプログラミングコンテストを開催し、19年にワッフルを立ち上げました。

 国内では理系を選択する女子が極端に少なく、特に工学系はOECDで最下位です。

 「女性は理系が苦手だから」との声も聞きますが、OECDの国際学習到達度調査(PISA)でも日本の女子の理数系の成績はトップレベルで、半分は理系に進んでいてもおかしくないはずです。

 ――背景には何があるのでしょうか。

 ◆社会の構造的な問題だと思います。

 学習環境においては数学や技術、科学を教える先生が男性に偏っていたり、生徒が女性の理工系研究者やエンジニアのロールモデルに触れる機会が少なかったりするなどの要因があると考えられます。

 女子を取り巻くジェンダーバイアスとして、例えば先生や家族から「女子に理工系は無理」「高学歴だと結婚できなくなるよ」などの声かけが挙げられます。

 また、大学で工学系に進んだとしても少数派としての孤独感があり、エンジニアやAI(人工知能)の開発者にはなることなく、コンサルタントなど女性が比較的多い職種を選ぶという傾向も指摘されています。

 学校組織にもジェンダーバイアスは根強いです。

 例えば教員向けのプログラミング教育研修がある際にも、学校から研修に教員を1人出す際に「情報に強い男性に行ってもらおうか」などと、無意識のうちに男性に偏る構造があります。

 今までのやり方では、これまでほとんど変化のなかった女子比率は変わらない。

 ジェンダーバイアスについて無自覚な限り、国が目指す女性の理系人材増加は難しいと思います。

成功体験が原動力に

 ――国内では何が壁になっていますか。

 ◆例えば韓国では…

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