ほかの社員は1日4.8回なのに…トップ5%の社員は17.3回も口にしていた、心が安定する"5文字の言葉"
優秀な社員と一般的な社員の大きな違いは何か。のべ17万人の働き方を分析したクロスリバー代表の越川慎司氏は「成績トップ5%に入る社員が1日17.3回も口にするのに、それ以外の社員が1日4.8回しか発さない言葉があった。この言葉は“感情”に大きな影響を与えることが分かっている」という――。
※本稿は、越川慎司『17万人の分析データから導き出した トップ5%社員の感情に振り回されない習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/SunnyVMD
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トップ5%社員は「緊張」を活かす
大事なプレゼンの前、重要な交渉の直前、大型案件の最終提案。プレッシャーがかかる場面で、95%社員の多くは「緊張しないようにしよう」と自分に言い聞かせます。弊社が11社で行った調査では、プレッシャーがかかる場面で「緊張を抑えよう」とする社員は79%でした。
しかし、この「緊張を抑えよう」というアプローチ自体が、感情マネジメントの観点からすれば逆効果であることが明らかになっています。
社内評価トップ5%に入る社員は、まったく違うアプローチを取っていました。彼らの82%は、プレッシャーを感じたとき「これは自分にとって大事な場面だから緊張している。それだけ本気だということだ」とリフレーミングしていたのです。
緊張のときに分泌されるアドレナリンは、心拍数を上げ、視野を狭め、反応速度を上げます。プレゼンや交渉では、これらの生理反応はマイナスではなく、むしろパフォーマンスを支える側に働きます。
心理学者ジェームズ・グロスの感情調節モデルによれば、感情への対処戦略には「感情が生まれる前にその解釈を変える(認知的再評価)」と「感情が湧いた後でその表出を抑える(抑制)」の2種類があります(注1)。
研究では、認知的再評価(リフレーミング)は、感情の抑制に比べて、精神的健康への負担が少なく、長期的なパフォーマンスの安定に寄与することが示されています。「緊張しないようにしよう」という抑制アプローチよりも、「この緊張は本気の証拠だ」というリフレーミングが、長期的に有効なのです。
注1:James J. Gross/1998年/Journal of Personality and Social Psychology, 74(1), 224-237
「脅威」を「挑戦」に置き換える理由
さらに、ハーバード大学のブルックスは、本番直前に「落ち着け」と自分に言うより「ワクワクしている」と言い換えた方が、スピーチ・歌・計算の成績が有意に上がることを実験で示しました(注2)。同じ高揚した身体状態を「不安」と呼ぶか「興奮」と呼ぶかで、結果が変わるのです。
リフレーミングとは、出来事に対する「枠組み」を変えることです。同じプレッシャーでも、「つらい」と捉えるか「やりがいがある」と捉えるかで、身体の反応が変わります。
弊社がウェアラブルデバイスで計測した結果では、プレッシャーを「脅威」と捉えた社員は、心拍数の急上昇とHRV(心拍変動)の低下が顕著で、自己申告のストレス強度も平均で2.4倍高い数値を示しました。
一方、「挑戦」と捉えた社員は心拍数の上昇が穏やかで、HRVの低下も小さく、むしろパフォーマンスが向上するゾーンに入っていたのです。
「脅威」と「挑戦」のラベルは、自律神経系に異なる指令を送ります。脅威は防御モード(血管収縮・思考の硬直)、挑戦は対処モード(血管拡張・思考の柔軟性)。ラベルの選び方が、生理反応そのものを切り替えます。
注2:Alison Wood Brooks/2014年/Journal of Experimental Psychology: General, 143(3), 1144-1158
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感謝と幸福感の関係について、心理学者ロバート・エモンズとマイケル・マッカロウの研究が重要な示唆を与えています。
越川慎司『17万人の分析データから導き出した トップ5%社員の感情に振り回されない習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
この研究では、毎週「感謝できることを5つ書き出す」グループと「不満に思うことを書き出す」グループを比較したところ、感謝グループの方が幸福感が高く、楽観性も向上し、運動習慣など健康行動も改善したことが示されています。
感謝を表現する習慣は、感情の安定という「副次効果」だけでなく、生活全体のウェルビーイングを高める効果があるのです。
「ありがとう」を言うためには、相手の行動の中に「良い点」を見つける必要があります。つまり、「ありがとう」を言う習慣がある人は、無意識のうちに周囲のポジティブな要素を探索するモードになっているのです。この「ポジティブ探索モード」が、ネガティブな感情の発生頻度そのものを下げていました。
脳の注意システムは「探索対象」を設定すると、その対象を視野の中で優先的に拾います。「ありがとう」を言う前提があると、感謝に値する出来事を拾うフィルターが常時稼働している状態になります。
コストなしで効果絶大な感情マネジメント
弊社が観察した5%社員の感謝の特徴は、「大きなことへの感謝」ではなく「小さなことへの感謝」でした。昇進や受注などの大きな出来事には誰でも感謝するでしょう。しかし5%社員は、「コーヒーがおいしかった」「電車が時間通りに来た」「部下が笑顔で挨拶してくれた」という日常の小さなことへの感謝を口にしていました。
大きな感謝は年に数回しか発生しません。小さな感謝は1日に何十件も発生します。発生頻度の高い感謝を拾うフィルターを持つほど、1日の中で「ポジティブな入力」を受ける回数が増えます。
9社の協力を得た再現実験では、一般社員に「1日15回の『ありがとう』を目標にする」を4週間実践してもらいました。結果、対象者の67%が「気分が安定するようになった」と回答し、「人間関係が改善した」と回答した人も63%にのぼりました。
「ありがとう」は語彙の選択コストがほぼゼロです。長い文章を考える必要も、フォーマットを覚える必要もない。導入コストが低く、効果の蓄積が速い。費用対効果が極端に高い感情マネジメントの手段です。
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