米PFAS問題、化学大手3社が1,300億円を支払うことで州と和解 企業に対する責任追及の動き加速 #エキスパートトピ
有機フッ素化合物(PFAS)による環境汚染問題で、ケマーズ、デュポン、コルテバの化学大手3社がニュージャージー州に8億7,500万ドル(約1,300億円)を支払うことで4日、和解した。同州によると、環境関連訴訟で一つの州が受け取る和解金としては史上最大額。米国ではPFAS汚染に関し裁判で排出企業の責任を追及する動きが活発化。和解金や損害賠償金を活用した汚染除去も進み始めており、米国と同様に深刻なPFAS汚染問題を抱えながら原因究明や汚染除去がほとんど進んでいない日本とは対照的だ。
ココがポイント
companies will(中略)pay New Jersey up to $2 billion出典:CBS NEWS 2025/8/5(火)
PFAS(有機フッ素化合物)をめぐり、裁判で企業の法的責任を追及する動きが米国で活発になっている。出典:猪瀬聖 2025/1/29(水)
日本でも企業に損害賠償を求める動きはあるが、規制に曖昧な部分があり責任追及は難しい。専門家は法整備の重要性を訴えている。出典:共同通信 2025/7/6(日)
エキスパートの補足・見解
和解内容は、米メディアによると、PFASによって汚染された土壌を元通りにする費用として3社が向こう25年間で8億7,500万ドルを州に支払う。加えて、汚染除去を目的とした最大12億ドルの基金を設立。さらに、いずれかの企業が破産や債務不履行に陥った場合に備え、4億7,500万ドルを積み立てることでも合意した。
米国ではここ数年、PFAS汚染で関連企業の責任を問う大型訴訟が各地で頻発。2023年には3Mが総額103億ドルを支払うことで複数の自治体と和解。ほぼ同時期に、デュポン、ケマーズ、コルテバの3社も11億9,000万ドルを拠出することで水道事業者と和解したが、別の自治体から次から次へと訴訟を起こされており、企業収益の圧迫要因となっている。アップルなど一見、PFASと無関係の企業や、現地で操業する日本企業の関連会社が被告に名を連ねるケースも出ている。
トランプ大統領は環境問題では企業寄りの姿勢を見せているが、PFASに関しては自治体の動きを黙認。さらに、民主党が強い州だけでなくテキサス州など共和党優勢の州にも訴訟の動きが広がっていることなどから、企業に対する責任追及の動きはさらに勢いを増すとみられている。
米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。