算数オリンピック「最も差がついた問題」大人のあなたは解けますか?…図形問題の類題、豊島岡が出題(みんかぶマガジン)
世界でもっとも優秀な高校生たちが鎬を削る「国際数学オリンピック」。毎年、各国から集まった天才たちがメダルを目指して競い合う。 この数学オリンピックに対して「日本独自の小学生版」として作られたのが「算数オリンピック」だ。算数オリンピック大会顧問を務め、「みんなの算数オンライン」主宰として中学受験の個別指導も行っている竹内洋人氏は次のように語る。 「算数オリンピックは、国際数学オリンピックの登竜門的な位置づけの大会です。毎年約5000人が参加し、ファイナリストやメダリストの多くは、中学受験でトップ校に楽々と合格していきます。チャレンジして歯が立たなかったという子でも、御三家に受かる子が普通にいます。算数オリンピックで活躍した子の中には、中学・高校で国際数学オリンピックや国際物理オリンピックなどで活躍する子も多いですね」 算数オリンピックを通じて身に付く考え方や思考法は、中学受験にも役立つと竹内氏はいう。天才たちが競う算数オリンピックとその学習法について迫るーー。全3回の第1回。
算数オリンピックは、子供たちの思考力や独創性を問う大会です。問題は特別な訓練や予備知識なしで解くことができるように作られているため、公立小学校の履修範囲である基礎的な算数の知識と、数の性質(素数、倍数、約数、偶数、奇数など)や図形の性質(角度の性質、合同、相似)さえあれば、問題を解くスタートラインに立つことができます。 中学受験で使う解法パターンなどの知識は不要なので、塾に通っていなくても十分チャレンジできます。 必要なのは事前にインプットした知識ではなく、どのように問題に取り組むかをじっくりと考え試行錯誤する力と、それを積み重ねていく論理的思考力です。 次の問題は2024年の6年生トライアル大会(予選)でもっとも差がついた問題です。隣り合う4マスの数字の和が◯で囲まれた数字になるように、9マスの枠に素数を入れていくというシンプルな問題です。こうした解いてみたくなるパズルっぽい問題が多いのが、算数オリンピックの特徴です。 この問題は下記の点に気づくことができれば、簡単に解くことができます。 ・ 251と271は奇数である ・ 奇数4つの和は偶数になるので、251と271を作るには共通するマスに偶数が必要 ・ 素数はほとんど奇数だが、2だけは偶数である これがわかると下記の図のHの位置が「2」とわかります。その後は当てはめても、計算でも順番に埋めていくことが容易になります。 次の問題は数字を粘り強く当てはめて解くこともできますが、大事なのは問題を解く前に一呼吸置いて、与えられた条件を別の角度から捉え直すことです。 次の図形問題は5年生向けに出題された問題です。図の特徴と一箇所の長さしか与えられていません。 これしか条件が与えられていませんが、逆に言えば「これしか条件がないにも関わらず、解くことができる問題」というのがヒントであるとも言えます。 この問題は図を下記のように折り返すと、一瞬で解けてしまいます。 どちらの問題も、知っている解法、見たことのある解き方といった「経験則」に沿って考えると、かえって思考の幅が狭まり解きづらくなってしまいます。 ここで紹介した解き方はあくまで例に過ぎません。実際には問題の前提条件が少ない分、子供によって解答へのアプローチがさまざまです。そして、その問題を解くための創意工夫や試行錯誤が生まれることが、子供の思考力や創造力を鍛える意味で重要なのです。