防衛省、レーダーサイト防衛用に撃ち放し運用が可能な迎撃ドローンを要求

防衛省は沿岸防衛体制シールドに含まれるレーダーサイト防衛用UAVの情報・提案要求書を27日に公表、迎撃UAVを地上要員が操縦する仕様ではなく「地上装置から自動誘導される迎撃UAV」を要求し、装備化までのスケジュールについては「令和9年度又は遅くとも令和10年度とする」とした。

参考:新たな重要装備品等の選定結果について 参考:レーダーサイト防衛用UAVに関する情報・提案要求書 参考:Famed Merops Drone Interceptor to Be Made in Europe 参考:Японська Terra Drones шукає в Україні виробника для реактивних дронів 参考:テラドローン、固定翼型迎撃ドローン「Terra A2」がウクライナで実運用開始 ~WinnyLab LLCを通じ広域防空向け固定翼迎撃ドローンを実戦環境に納品~ 参考:テラドローン、東京で防衛事業の進捗に関する記者発表会を実施 ~固定翼型迎撃ドローン「Terra A2」発表および「Terra A1」攻撃型無人機の無効化成功~

時事通信は3月13日「防衛省はドローン数千機を活用した沿岸防衛体制シールドの構築を目指している」「シールドは敵艦艇の迎撃や情報収集、レーダーサイト防衛などを担う10種類以上のドローンを組み合わせ、侵攻を試みる敵を多層的に食い止める構想」「同省は2026年度予算案に約1,000億円を計上して27年度中の実現を目指す」と報じ、防衛省は5月12日「装備品等の選定に係る手続の明確化・透明化のため、取得実績のない新たな重要装備品等を選定した際は選定結果を公表することにした」と発表し、小型攻撃用UAV-I型の選定結果を公表。

出典:防衛省

“事業の概要:我が国への侵攻を阻止・排除するため空中から車両等を捜索・識別し、迅速に目標に対処するため小型攻撃用UAV-I型を取得する。選定結果:新たな重要装備品の選定にあたり、既に実施を完了した実証結果を踏まえ、今後導入する機種に求める具体的な要求性能の検討等を行い、令和7年度予算に量産取得にかかる経費を計上した。そのうえで一般競争入札を実施した結果として機種が決定された。なお、ライフサイクルコストは引き続き精査を行っていく”

選定結果を公表するのに「誰が落札したのか?」「落札金額がいくらだったの?」「小型攻撃用UAV-I型として何を調達することになったのか?」など最低限の情報すら記載がなく、西側諸国が公表する防衛装備品の選定結果にも「伏せられる情報」はあるが、それでも「誰が落札したのか?」「落札金額がいくらだったの?」「何を調達することになったのか?」すら記載がないものを「選定結果だ」と公表するのは日本ぐらいで、防衛省は予算を何に使うのか説明責任を果たす気がないらしい。

出典:防衛省・自衛隊

防衛省は27日、シールドに含まれるレーダーサイト防衛用UAVに関する情報・提案要求書を公開し、この中でレーダーサイト防衛用UAVについて「敵のUAVを探知・識別し、これを迎撃UAVにより対処することでレーダーサイト等を防護し得るシステム=迎撃UAVシステム」と定義し「製造・販売に関連する実績又は技術的な知見、能力等を有する企業等から情報・提案を広く募集し、今後、企業等から提出された情報・提案の内容を踏まえ、その早期装備化に向けて事業の具体化を行っていく」と説明。

迎撃UAVシステムの概要については「レーダーサイトやその付近に展開し、遠方から飛来する長射程自爆型UAVの同時多数攻撃に対し、発射した迎撃UAVにより有効に対処するために運用できるもの」と説明、そして「レーダー、指揮統制及び迎撃UAVが連接されたシステム」「迎撃UAVのカメラ映像を見ながら地上要員が迎撃UAVを操縦する仕様ではなく、地上装置から自動誘導される迎撃UAV」「システムの展開後は2名以下の要員で防空戦闘が実施できるもの」「維持整備について故障診断、部品交換、定期整備等を部外委託できるもの、それが困難な場合は専門的知見を有しない要員により維持整備し得る簡易性を有するもの」を要求。

出典:Wild Hornets

さらに「諸外国軍隊等で既に運用され、シャヘド136等の長射程自爆型UAVを撃墜している実績を有しているもの」「他社のレーダー、エフェクター等と短期間で連接運用し得る拡張性及び適応性を有するシステム」も要求し、装備化までの望ましいスケジュールについては「令和9年度又は遅くとも令和10年度とする」と記述しており、2027年度もしくは2028年度までに迎撃UAVシステムを装備化したいらしい。

ウクライナ製の迎撃ドローンも、テラドローンがウクライナ企業のアメイジング・ドローンと共同で開発を進めている迎撃ドローン=Terra A1も「兵士による手動操縦」と「目標の自動追尾・誘導」の組み合わせで運用されており、目標の自動追尾・誘導機能の採用意図も迎撃の自動化ではなく「電子戦環境下で通信が途絶した場合でも目標を追尾し続けるため」であり、ウクライナ人開発者らにとってドローンの自律性獲得は依然として「聖杯のようなものだ」と言われている。

出典:Terra Drone

“ロシア軍のShahed型無人機に対抗するため開発された迎撃ドローンもAI制御の自律性を獲得し、出来るだけ少ない運用要員で広大な国土をカバーする必要性があるものの、ウクライナ人開発者らは「依然として迎撃ドローンはFPV制御に依存している」「我々とエリック・シュミット氏が開発しているような迎撃ドローンの違いはAI技術が欠けている点だ」と述べたが、それでも現在のFPVドローンには「ラストマイル・ターゲティング(終末誘導)機能」という形でAI技術が採用されている”

“この機能はドローンとの制御リンクが維持されている環境で「画面に映る任意の物体(兵士、塹壕、S-300など)を選択するとドローンが自律的に選択された物体に向けて移動する」という機能で、目標に接近する過程で制御リンクが切断されてもドローンは目標への衝突コースを維持し続けることができる。ラストマイル・ターゲティングはロシア軍の電子妨害を回避する上で大きな一歩となったが、自律性獲得の試みは1年以上もマシンビジョンソフトウェア領域に留まっており、そもそもラストマイル・ターゲティング機能はデジタルカメラに搭載されている予測駆動のフォーカス技術に類似したものでブレークスルーと呼べるものではない”

出典:Сухопутні війська ЗС України

“それでもウクライナ人開発者らは完全な自律性の獲得を諦めたわけではなく、ニューラルネットワークを効率化した自律型ドローンのテストで目標への命中率を大幅に改善(従来型の20%から80%に向上)できると証明し、このプロトタイプは影や樹林帯を通過する目標の識別力が飛躍的に向上している。しかし、ウクライナ人開発者らは「完全な自律性をテスト環境で実演するのは何の問題もないが、これを実戦環境で大規模配備するのは全く別の課題で、これを実現する見通しは全く立っていない」と言う”

“さらにウクライナの視覚的なAI技術を支えるソフトウェアはオープンソースに依存し、You Only Look Onceのような無料ソフトは経済的でも世界最高水準の能力とは言い難く、ウクライナ人開発者らは「オープンソースベースのAI技術」を「アナログの安価なカメラで撮影されたデータ」で訓練する問題について「戦車と人間の区別が可能になるだけ」「それ以上のことは今のところ不可能」「つまりロシア軍兵士なのかウクライナ軍兵士なのか、敵兵士なのか民間人なのかを区別できない問題は未解決のままだ」と述べた”

出典:U.S. Army photo by Sgt. Luis Garcia

エリック・シュミット氏が開発しているような迎撃ドローンとは、元Google CEOのエリック・シュミット氏が設立したProject Eagle(現在はPerennial Autonomy)製のMerops(メロプス)と呼ばれる地上制御装置、発射機、そして敵のドローンを追跡して破壊するSurveyor Interceptor UAS=サーベイヤー迎撃ドローンで構成された対ドローンシステムのことで、こちらはウクライナ人開発者が手が出せないAIによる自律運用が可能で、サーベイヤー迎撃ドローンにはオンボードのAIが組み込まれているため目標の自動追尾・誘導もでき、Xboxコントローラーによる手動操作にも対応しているものの「撃ち放し運用」が出来てしまう。

米陸軍長官は議会の公聴会で「イラン紛争勃発から約8日以内に1.3万機のメロプスを調達することができた」「現在の単価は約1.5万ドルだが量産効果が高まれば1万ドルを切ると見込んでいる」「3万ドル~5万ドルもするShahedをこのコストで撃墜できるなら、何度でも取引に応じる」と述べ、ドイツのドローン新興企業=Twentyfour Industriesがサーベイヤー迎撃ドローンをライセンス生産する予定で、2026年中に生産ラインの稼働開始が予定されている。

出典:U.S. Army photo by Sgt. Luis Garcia, 52d ADA Bde

サーベイヤー迎撃ドローンはウクライナでロシア軍の無人機を4,000機以上も撃墜しており、ポーランド、ルーマニア、リトアニアが採用を決め、ドイツ軍に対してもサーベイヤー迎撃ドローンのデモンストレーションが行われているため、ドイツ国内でのライセンス生産まで加味するとサーベイヤー迎撃ドローン採用の可能性は非常に高いが、同じようなAI運用対応の迎撃ドローンはラインメタルを含む欧州企業からも多数発表されており、サーベイヤー迎撃ドローンが独走しているというわけでもない。

防衛省は迎撃UAVシステムに「迎撃UAVのカメラ映像を見ながら地上要員が迎撃UAVを操縦する仕様ではなく、地上装置から自動誘導される迎撃UAV」「システムの展開後は2名以下の要員で防空戦闘が実施できるもの」を要求し、Terra A1のAI運用能力=撃ち放し運用が未知数なので「現時点では情報提案を求める迎撃UAVシステムに該当しない」となる。

出典:Terra Drone

ちなみに、テラドローンは今月19日「固定翼型迎撃ドローンのTerra A2をウクライナの実戦環境下で運用を開始した」と発表し、同社の最高経営責任者を務める徳重徹氏も「自律システムの開発が極めて重要だ」と述べ、将来的にはTerra A1やTerra A2にAIを統合して1オペレーターで最大100機規模の制御を目指しているらしいが、現時点ではTerra A2も「兵士による手動操縦」と「目標の自動追尾・誘導」の組み合わせで運用されている可能性が高い。

テラドローンは迎撃ドローンによる防空レイヤーの階層化を目指しており、最大32kmまでの近距離をTerra A1、最大75kmまでの中距離をTerra A2でカバーし、同社の防衛事業責任者を務める森田雄志氏はウクライナのディフェンスメディア=Militarnyiの取材に「ジェットドローンを製造できるウクライナ企業を探している」と述べており、最大140kmまでの長距離をカバーできるジェットドローンで迎撃ドローンによる防空レイヤーを3層化するつもりだ。

防衛省が求める装備化までの望ましいスケジュール=令和9年度又は遅くとも令和10年度までに、Terra A1やTerra A2に組み込める自律システムを開発し、AI運用能力=撃ち放し運用が可能になるのか、そしてウクライナとロシアの戦争も永遠に続く訳では無いので「諸外国軍隊等で既に運用され、シャヘド136等の長射程自爆型UAVを撃墜している実績を有しているもの」という要件を満たしたいなら、相当急がないと間に合わないかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:Денис Шмигаль

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