「真水は取れない」「日の出と夕日が」気象庁職員が明かす“南鳥島”での生活 核のゴミ「文献調査受け入れ」地元住民の本音
1
東京都小笠原村は南鳥島について「高レベル放射性廃棄物」、いわゆる「核のゴミ」の最終処分場の候補地として、確定への第一段階となる文献調査を受け入れることを正式に決めた。国が主導して自治体に申し入れ、これを受諾した初の事例となる。
小笠原村の渋谷正昭村長は「地域任せにすることなく国としてしっかりと責任をもって考えていく」とコメントしている。
処分地の選定は「文献調査」→「概要調査」→「精密調査」の3段階を経て決まる 。現在、北海道の二つの自治体、寿都町と神恵内村が文献調査を終えた段階だ。また、佐賀の玄海町は現在、文献調査が行われており、原発立地自治体として初めて調査を受け入れた。
「核のゴミ」は現在の法律では地中300m以上の地下に埋めると定められているが、環境や人体に影響を及ぼさない程度になるまで数万年から10万年を要すると言われている。南鳥島は過去2回、核のゴミ最終処分場の候補地の打診を断っていた。
文献調査に応じると、自治体には最大20億円が国から交付される。年間予算67億円の小笠原村にとっては大きな金額だ 。
日本最東端「南鳥島」とはどんな島なのか
南鳥島は東京都小笠原村に属し、都心からおよそ2000km離れた日本最東端の島だ。民間人の立ち入りは禁止されている。父島で行われた村民説明会では、自然環境への影響や風評被害を懸念する声が出ていたという。
ABEMA的ニュースショーは、南鳥島への視察経験もある小笠原村議会の宮城雅司議員に話を聞いた。宮城氏は「こんな形で有名になるのは正直ちょっと不本意な部分もないわけではないんですけど…」と心境を明かす。
「自分たちの小笠原には原発はないですけど、間接的には恩恵を受けて暮らしているので、私たちがしっかりとエネルギーっていうのはどうやってできて、どういう風になって、そしてどういうゴミができるのかを知るにはいい機会ではないか」(宮城氏)
核のゴミ問題以外で南鳥島が話題となったのは今年2月。島の周辺海域である日本海溝からレアアース泥の採掘に成功し、資源国家としての期待が高まった。
一体どんな島なのか。宮城氏は「一言でいうとココヤシと海鳥の島って感じ。海の音、風の音、海鳥の声が聞こえているので、静かではないんですけど、すごく不思議な世界」と語る。
南鳥島は1辺が約2kmの三角形の平坦な島で、広さは皇居と同じぐらいだ。島の発見は諸説あるが、記録に残っているのは1864年で、アメリカ船籍が島の存在を確認し、アメリカ人宣教師により「マーカス島」と名付けられた。
その後、日本人の水谷新六が1896年に上陸し、アホウドリの捕獲事業を開始。2年後の1898年に「南鳥島」と命名し、日本の領土に編入された。1900年に入ると肥料資源となる「鳥糞石(グアノ)」が取れたことから、採掘に従事する労働者が数十人いたと言われている。昭和初期になると、漁業を営む30人が定住。その後、住人全員が島を離れたが、1935年に気象観測の島として重要な拠点となった。第二次世界大戦では要塞として機能し、アメリカ軍の空襲などで191人が戦死している。現在は自衛官や国土交通省、気象庁の職員ら約30人が駐在しており、1370mの滑走路を利用した航空輸送が交通手段となっている 。
3カ月スパンで駐在する気象庁職員たちの生活
南鳥島に駐在経験のある気象庁職員の鈴木博樹氏と坂本親仁氏に話を聞くことができた。鈴木氏は今まで3回、坂本氏は18回も島に駐在し、気象観測に従事している大ベテランだ。
「朝は7時半から仕事を開始して、高層気象観測を行う。気球観測が朝の8時半と夜の8時半にあるので、その時間帯は勤務している。高層気象観測が終わったら、地上気象観測のメンテナンスをして、日中を過ごして、ちょっとその間休みがあって、終わった後にまた高層気象観測をする。終わるのが夜」(坂本氏)
南鳥島で行われている気象観測は主に2つ。ゴム気球で上空およそ30kmまでの風向風速や気温などを観測する「高層気象観測」と、地球温暖化に影響がある温室効果ガスなどを観測する「大気環境観測」だ。観測データは瞬時に気象庁に送られるが、気球を使った観測のため、今でも人の手を使って行わなければならないそうだ。また、津波の観測なども行っており、2010年チリ中部沿岸地震の際には、日本に到達する津波をいち早く観測した。
滞在は常時10名で、観測と施設維持の2班が合同で行っている。それを1人3カ月滞在のスパンで交代し行っているのだという。
では、島での生活はどんなものなのか。「地上波のテレビとかは映らない。今はインターネットが接続できる。容量制限があって内地のように無制限に使えるわけではないが、インターネットを使ってニュースとか動画は見ることはできる。以前はテレビ番組を録画したビデオをまとめて持って行ってそれを見たり、新聞なんかも1週間に一回運ばれてくるので、それを見るぐらい」(坂本氏)
他にも島内では真水が取れないため、雨水や海水をろ過して使用。そのため常時節水を心がけているという。
「1日休みの時もある。その時は海岸を散歩したり、島内道路をジョギングしたり、あとは釣りをしたりとか。海水浴は危険なので、一人では禁止です。周りが流れが早い。あまりリーフもない。流されることがあるので一人で泳がない」(坂本氏)
南鳥島を横から見るとまさに山。日本海溝の底からは高さ約5500mと富士山よりもはるかに高い。南鳥島はその山頂部分が海面から少しだけ見えているにすぎない。
3カ月目に入ると駐在も精神的に限界を迎えるそうだが、それでも島の風景は忘れることのできない貴重な思い出なのだそう。
「日の出と夕日は毎日見ても飽きない」(鈴木氏)
「星空も綺麗です。手で届くんじゃないかなっていうくらい明るい」(坂本氏)
「1000kmは遠い場所ではない」
核のゴミ問題に翻弄される南鳥島。人が住む島で最も近い父島からでも約1200kmも離れている。しかし、小笠原に住む村議会議員の宮城氏は「決して遠い場所ではない」と言う。
「小笠原に住んでいる人たちの距離を測る物差しと、本土に暮らしている人たちの物差しって多分全然違う。小笠原の人にとって1000kmは、いつも東京に行く船の距離。なので1000kmは僕たちにはそんなに想像できない距離ではない。鳥で言うなら一晩もかからないで飛べる距離」
「なので皆さんが思っている1000kmは途方もない距離だなというわけでもなく、みんなが行ったことないから遠いだけであって、実際の距離はそんなに遠くはない。やっぱり(南鳥島は)すごく重要な島だと思っています」
(『ABEMA的ニュースショー』より)