「曇り時々雨」の夜に豪雨 天気予報は外れたのか 命を守る気象情報との向き合い方 【千葉豪雨】

 13日朝、千葉市内の自宅周辺。曇っていたが雨は降っていなかった。スマートフォンで確認した天気予報の「お天気マーク」は曇り時々雨。時間ごとの予報を見ると、夜は曇りだ。「降っても帰宅の頃にはやむだろう」。そう思い、愛車のスクーターで市内の会社に向かった。ところが、その日の夜、県内を猛烈な雨が襲い、死者も出る「千葉豪雨」が発生。予期せず帰宅困難者になってしまった。天気予報が外れたのだろうか。気象台や専門家への取材を進めると、豪雨から命を守るためには、天気予報との向き合い方そのものを見直す必要性を感じることになった。(平口亜土)

 当日の天気予報はどうだったのか。改めて銚子地方気象台に確認した=図参照。

 13日午前5時に気象庁が発表した県内の当日の天気予報は「曇り時々雨」。降水確率は50~60%だった。「時々雨」とは、雨が降る時間が1日の半分未満であることを意味する。

 時間ごとの予報では、午前9時~午後3時と午後9時~午前0時が曇りで、それ以外の時間帯は雨。記者は当日、こうした予報を見て「夜9時過ぎに会社を出れば大丈夫だろう」と考えていた。 

千葉日報社に隣接する道路は冠水し、本社1階の一部も浸水被害に遭った=13日午後10時35分ごろ

 しかし、実際には午後6時ごろから翌14日午前2時過ぎにかけ、房総半島上空に線状降水帯が3度も発生。猛烈な雨が長時間にわたって降り、千葉日報社も1階の一部が浸水被害に遭った。少なくとも記者が体験した限り、予報から受ける印象と実際の天候との間に大きな隔たりがあった。

◆省かれる「所により」

 ただ、当時見落としていた予報があった。

 気象台によれば、予報文には「曇り時々雨」に加え、「所により夕方から夜のはじめ頃、雷を伴い非常に激しく降る」との文言も添えられていた。

 スマホアプリや新聞で見る天気予報は主に「お天気マーク」「降水確率」「気温」の情報が目立つように表示され、その他の要素は簡略化されるか、省かれていることが多い。それら3つの情報を基にその日の行動を決める人も多いだろう。記者が見たアプリにも「所により~」の記述はなく、気付きようがなかった。 

スマートフォンアプリの天気予報は主に「お天気マーク」「降水確率」「気温」の情報が目立つように表示されている(写真はイメージ)

 なお、8月1~26日各午前5時発表の県北西部の天気予報のうち、「所により」として雨の可能性が言及された日は計23日。天気マークに雨が表示されていなくても、予報本文では雨の可能性が示されているケースは少なくない。

◆集中豪雨の予報ではない

 では、この予報を見ていれば今回の豪雨を事前に察知できたのだろうか。

 気象台によると、「所により非常に激しく降る」との予報も、あの集中豪雨を予報したわけではないという。

 担当者は「『所により』は予報区域のもっと狭い範囲を示し、『非常に激しく降る』とは1時間に50~80ミリの降水量を指す」と説明する。局所的に短時間降る「夕立」や「ゲリラ豪雨」のような雨を想定しているのだという。半日で300ミリを超した千葉市をはじめ、記録的な雨が各市区町をまたぐ形で数時間続いた千葉豪雨とは、規模も時間も大きく異なる。

 それでは、日々の天気予報を見ても、今回のような集中豪雨を予測することはできないのだろうか。

◆天気予報にも限界がある 

天気予報について説明する村中氏

「日々の天気予報と集中豪雨は切り分けて考える必要がある」

 そう説明するのは、NPO法人環境防災総合政策研究機構理事の村中明氏。気象庁で長年予報業務に携わり、同庁予報課長も務めた気象予測・気象防災のエキスパートだ。

 気象庁が1日3回発表する天気予報は広い範囲で予測される天気の概況を示す。一方、集中豪雨は数十㌔程度の狭い範囲で起きる現象で、台風などに比べ規模が小さい。「現在の技術では事前の予測はかなり難しく、定時に発表される天気予報だけで捉えることはできない」という。

 それでも近年、技術の進歩で豪雨の原因となる線状降水帯の予測情報が発表されるようになった。ただ、予測の精度はまだ十分とは言えないという。村中氏によると、半日前に発表する線状降水帯予測の的中率は2~3割程度。千葉豪雨でも半日前予測は発表されず、全3回あったうち最初の線状降水帯は2~3時間前の「直前予測」も出なかった。そもそも集中豪雨は線状降水帯以外の原因でも起き、その予測も難しい。

 では、私たちは何を頼りにすればいいのか。

 村中氏は「自分の目で危険を察知することが重要」と指摘する。「地震と違って豪雨による被害は突然起きるわけではない。猛烈な雨が降り始めてからでも、浸水や河川の氾濫までにはある程度時間がある」

 激しい雨が降り始めたら、それ自体が危険のサインだ。

◆実践的な「タイムライン」で予防を

 千葉豪雨では、冠水した道路で車が水没し、車内に閉じ込められたまま死亡した人も確認された。

「これほど水があふれているのに、車で進んでいく光景に驚いた」と村中氏。無理に移動するのは禁物だといい、「大切なのは日頃から災害時にどう行動するかを考えておき、慌てないこと」と指摘する。

 その一つの手段として有効なのが「タイムライン」と呼ばれる防災計画だ。「雨が強くなったらどうするか」「どの段階でどこに避難するか」「身の回りにはどんな危険があるか」などをあらかじめ考えておく。県もホームページで「マイ・タイムライン」の作り方を案内している。こうした備えがあれば、危機が迫った際にどう行動すべきか判断しやすくなる。 

千葉県のホームページでダウンロードできるマイ・タイムラインの記入シート

 ただ、「タイムラインは作成して終わりではない」と村中氏は強調する。身の回りのリスクや避難の方法、経路などは人によって異なることから、自治体が案内する作り方を「なぞっただけ」のようなものでは役に立たない恐れがある。「我が身に置き換えたタイムラインを作成し、機会を作って実践的なものかどうかを検証して常にバージョンアップしていくことが重要だ」

 天気予報を参考にしつつ、その限界も理解し、「予報にないことも起こり得る」という前提で備えること。実際に激しい雨が降り始めたら、落ち着いて適切な行動を取ること。それが命を守ることにつながると村中氏は訴える。

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