そりゃ世界は中国を「大人」日本を「子供」とみるわ…習近平が高市首相にドン引きした「台湾有事発言」以外の理由(プレジデントオンライン)
世界は中国をどう見ているのか。拓殖大学の富坂聰教授は「実は世界で反中感情が強いのは、日本、台湾、フィリピンくらいだ。各国は中国との関係を見直し始めている。日本は感情ではなく大局で外交を進めるべきだ」という。『おそるべき「中国一強」時代』(小学館新書)の刊行を機に、ノンフィクションライターの山川徹さんが聞いた――。 【写真をみる】中国が日本と距離を置いているのは「台湾有事発言」だけではないと富坂さんは話す。 ■習近平が高市首相に感じている“薄気味悪さ” ――先日、フランスで行われたG7で、中国によるレアアースの対日輸出規制に懸念を示した高市早苗首相に対して中国外務省が反発しました。日中関係が悪化していますが、中国は高市政権をどう見ているのでしょうか。 【富坂】習近平氏は、高市首相に“戸惑い”を感じているでしょうね。その戸惑いとは、言い換えれば、理解不能な薄気味悪さです。 中国政府は当初、高市首相に対し抑制的でした。就任に際して送られる祝電もあり、政権の意図を反映している新華社の報道も「パワーバランスに配慮し、保守的な色彩が強い内閣」と控えめに評していました。だからこそ、2025年10月には、韓国で両首脳は会談し、握手をしている。 ある種、中国からの歩み寄りとも取れる姿勢は、2025年11月7日の「存立危機事態」発言で吹き飛びました。 従来の台湾有事の明示を避けてきた日本政府の「戦略的曖昧性」を変更した、そして中国にとって「核心の中の核心」と言える台湾問題で、よりによって武力行使と絡めて踏み込んだのです。 それでいながら、高市首相は、当日の答弁で台湾を「国」ではなく、「地域」と言い直して中国に配慮を示したり、答弁が問題化したあとには「従来の政府の立場を超えて答弁したように受け止められたことを反省点としてとらえている」と火消しを試みたような発言をしました。
■「台湾有事発言」後の謎の行動 中国は、利益に忠実で合理的な国です。そんな国からすると、高市首相の言動には一貫性がなく、一体何をしたいのか、理解できないのではないかと思います。 国の要人の言動には利益の獲得がともないます。ですが、中国には高市首相の「存立危機事態」答弁で日本が何を得たのかがわからない。この発言で、中国人観光客は減り、レアアースの交渉も頓挫したわけです。にもかかわらず、「反中」の姿勢をとり続けている。 ましてや、高市首相が接近するトランプ大統領は、中間選挙に向けて中国との関係改善を図っている。そんなときに中国を怒らせ、一方でアメリカに助けを求めている。 中国政府は、非合理的でよくわからない高市政権は相手にしないほうがいいと、距離を置いているのではないでしょうか。 ――「存立危機事態」答弁は、高市首相を支持する人たちに支持されました。 そこも、中国が恐れる点です。日本だけではなく、アメリカや台湾もそうですが、政権を維持するためなら、利益に反することでもやってしまう西側諸国特有の社会の空気は、彼らには理解しがたいところでしょう。 現実に日本では「反中」が、支持率の追い風になっています。いま中国は、政権が代わったとしてもその状況は変わらないと受け止めています。要するに、「反中」は高市首相個人の問題を超えた日本社会の空気と考えている。だから、日本を無視して、アメリカとの関係構築だけに注力しているのです。 ■反中の感情は冷戦の残滓 ――なぜ、日本にここまで「反中」が広まっているのでしょうか。 冷戦の残滓ともいえる中国に対する「ゼロサム思考」が定着しているからです。一方がへこむと、もう一方が伸びる。政治も経済も、実態はそんなにシンプルではないですが、中国が落ち込むと日本が伸びると感じる意識が植えつけられている。 きっかけの一つは冷戦です。東西冷戦ではソ連の防波堤として西側諸国では日本の存在が重要視されました。実際に朝鮮戦争が起きると後方支援基地の役割を果たし、経済発展のきっかけになった。日本の深層心理には「陣営対立」への安心感があるのではないかと考えています。 日本にとって、中国はかつての東側に代わる敵陣営。その敵が失敗すれば日本は利を得る。そんな実態とは異なる、潜在的な「反中」があるのです。 潮目の変化が少しだけ見えたのが、第二次安倍政権下です。安倍首相は2020年に習近平を国賓として迎える計画を立てました。当時の政権は中国に反発しても得るものはないと判断したのではないでしょうか。ただ、コロナ禍でそれが中止となり、世界的に「感染症を引き起こした中国は迷惑な国」という機運が高まったことで日中関係改善の機運は潰え、国内で再び「反中」が燃え上がりました。 こうした潜在的な意識を醸成したのには、メディアの責任が大きいと思います。日本の主要メディアは、中国側の発する強いメッセージばかりを報じてきました。