居酒屋で「ソフドリのみ」は“野暮な客”!?「飲み物はアルコールのみ」の店に賛否…SNSでは「飲めない客は迷惑」の声も 食事目的の「フード+ソフドリ」は儲からない? 飲料・食事メニューの原価率とは

ファイナンシャルフィールド

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値段の割に料理が美味しく、地元の客から愛されているような個人経営の居酒屋が、グルメ系インフルエンサーに紹介されて一気に人気が爆発することも多くなりました。   しかし、一部の店舗では「投稿を見て来店してくれるのは嬉しいが、店の経営が成り立たないような利用のされ方が増えて困っている」という意見もあるようです。SNSなどを通じて店の評判が一気に広まる現代、居酒屋の経営にはどのような影響が出ているのでしょうか。

つい先日、とあるユーザーによるSNSでの投稿が話題になりました。 『(投稿者が大好きな)ある居酒屋が「ソフトドリンク・ノンアルドリンク・水(お冷)」の提供を廃止し、「お連れ様を含め30分ごとに1杯制」という注文ルールを新たに設けざるを得なかった』 『グルメ系インフルエンサーがその居酒屋を紹介したことで新規客が殺到したが、その客が頼む飲み物はソフトドリンクか無料のお冷だけで、店舗が儲からなくなってしまったせいだ』 という趣旨の書き込みに対し、SNS上では以下のような意見が飛び交い、さらには居酒屋で酒を頼まないことについても、大きな話題となりました。 「居酒屋お酒を頼まないのはマナー違反だから、店の判断は妥当だ」 「体質でお酒は飲めないけれど、居酒屋の料理や雰囲気が好きなのに、来るなと言われているようで悲しい」 「客は料金を払っているのだから、注文ルールを店から強制されるのはおかしいのではないか」

無料提供のお冷だけでねばることは問題としても、「ソフトドリンク」は、お金を払って注文する立派なメニューです。それなのに、なぜ居酒屋側は「お酒」の注文にこだわるのでしょうか。

居酒屋経営者の立場で「原価率」を考えてみると

議論の前提として押さえておきたい知識に、「原価率」というものがあります。特に飲食店における原価率とは、ドリンクや料理を提供するために必要な原材料費(主に食材費)が売上金額に対してどれくらいの割合を占めているかを示す指標で、原価率が高ければ高いほど「店側のもうけ(利益率)」は少なくなります。 一般的に、飲食店において最も「原価率」が低い(店側のもうけが多い)メニューがソフトドリンク(原価率10%程度)、次いでアルコールメニュー(原価率15~25%程度)、最も「原価率」が高く店側のもうけが少ないとされるメニューがフードメニュー(原価率20~40%程度)です。

これを考えると、飲食店にとって最ももうけが多い「ソフトドリンク」を頼んでいるのであれば、居酒屋がそれを拒否することはおかしいと思えますが、アルコール飲料を注文する客と、ソフトドリンクのみで過ごす客では「注文数」に大きな差が出る傾向があります。

アルコール飲料を注文する客は、居酒屋での滞在中にビールやサワーを4~5杯飲むことも珍しくありません。一方で「ソフトドリンク派」の客はドリンクの注文数が少なく、最初にソフトドリンクを1杯頼んだあとは無料の水(お冷)だけを飲んで時間を過ごすこともありえます(特に話題となった居酒屋では、このような新規顧客が多かったのだと思われます)。 アルコール飲料を頼まない分、料理をたくさん頼んでいれば問題は少ないようにも思えますが、前述の通り「フードメニュー」は食品原価や調理にかかる人件費が高くなりがちで、居酒屋側としては「もうけが少ない」という事情があります。 加えて、適量のアルコール飲料には食欲を増進させる働きがあるとされており、自然に料理の注文数も増えることになります。結果として「ソフトドリンク派」の客よりも、アルコール飲料を注文する客の方が、居酒屋側にとっては「店をもうけさせてくれる、良い客」となるわけです。

コスパ至上主義の時代、「粋なお客様」が前提のビジネスモデルは限界?

筆者としては、居酒屋がこのような窮屈なルールを作らざるを得なかった背景には、最近の消費者に顕著な「コスパ至上主義」があるように思えます。 たしかに、消費者が飲食店での「コスパ」を最大化させたいならば、原価率の高いメニュー(店側の利益が少ないメニュー)ばかりを注文し、ドリンク類を控えることが最適です。 ただそのような行為は店側の経営を悪化させ、今回のようなルールの設定やフードメニューの値上げ、最悪の場合は店の廃業にもつながりかねないわけで、褒められたものではありません。端的に「野暮な客の振る舞い」に見えるので、筆者は大きな違和感を覚えています。

お酒を飲めない人が居酒屋に行くこと自体は決して悪いことではありませんが、居酒屋はドリンク類の売上を前提としたビジネスモデルであることを理解し、「無料のお冷ではなく有料のドリンクを多めにおかわりする」「長居をせずに退店する」といった少しの配慮が、客の側にも必要なのではないでしょうか。

ひと昔前であれば、店側の経営状況を理解した金払いの良い顧客は、店側から「粋なお客様」と呼ばれ、大事にされていたでしょう。特に個人経営の居酒屋などの場合は、店主や店員と客との人間関係までを含めての商売があったはずですし、現在もそのような店と客の関係が続いている店は多いですが、このような状況が続けば、いつまで続くかはわかりません。 客側の「コスパ至上主義」という「野暮な振る舞い」が一般的になってしまえば、店側も注文ルール設定などの「野暮な振る舞い」をせざるを得ません。やや大げさな表現になってしまいますが、今回の論争は、日本社会全体がコスパ主義のために窮屈になりつつあることの象徴であるように、筆者には思えました。

まとめ

ある居酒屋が「ソフトドリンク・ノンアルドリンク・水(お冷)」の提供を廃止したことがユーザーのSNS投稿で拡散し、大きな話題になりました。 このルール設定の背景には、グルメ系インフルエンサーの投稿で集まった新規顧客がアルコール飲料の注文をあまりせず、ソフトドリンクや無料の水(お冷)で過ごしていたため、店側の利益が少なくなったといった事情があったのかもしれません。

客側の「コスパ至上主義」が一般的になってしまうと、今回話題になったように、居酒屋側も注文ルール設定などの対策をせざるを得ません。消費者としては多少でも居酒屋側のビジネスモデルを理解し、注文や滞在時間などに配慮をするほうが良いのではないでしょうか。

執筆者 : 山田圭佑

FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

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