ロシア「影の艦隊」のタンカーが地中海を漂流、環境汚染のリスクと伊当局
画像提供, Miguela XUEREB/Newsbook Malta/AFP
西側諸国の制裁対象となっているロシアのタンカーが、液化天然ガス(LNG)を積んだまま地中海で制御不能となっていることが明らかになった。
このタンカーは現在、乗組員がいない状態だが、片側に大きな穴が空いた状態で漂流しており、「重大な生態災害を招く深刻な危険」があると警告されている。
EU加盟の9カ国はこのほど、LNGタンカー「アークティック・メタガス」号への対応を求め、欧州委員会に共同書簡を送った。そのうちの一カ国であるイタリアの当局者は、このタンカーは爆発寸前の「環境爆弾」だと述べた。
このタンカーは、ロシアの油ガス輸出に対する制裁措置を回避するための、秘密のタンカー・ネットワーク「影の艦隊」の一部。今月初めにマルタ周辺海域で起きたものと疑われる海上ドローン攻撃で、深刻な損傷を受けた。
ウクライナは、同国がこのタンカーを制御不能にしたとする報道についてコメントしていない。
「アークティック・メタガス」は現在、イタリア領海と同国最南端のランペドゥーサ島からさらに南へ離れ、リビア方面に向かって漂流しており、イタリアとマルタの両当局が、引き続きその動きを監視している。
イタリアのアルフレード・マントヴァーノ内閣官房長官は、同国のラジオ番組に出演した際、このタンカーがもたらす危険は「甚大」だと述べ、「いつ爆発してもおかしくない」と警告した。
タンカーには、LNGが「相当量」積まれているとみられている。イタリア当局者はBBCに対し、船内には重油450トンとディーゼル250トンも積まれていると述べた。
タンカーは17日午後の時点で、イタリア領海から約45カイリ(83キロ)、リビアが管轄する捜索・救助区域から25カイリの地点にあった。
「アークティック・メタガス」は、今年2月にロシアのムルマンスク港を出港した。3月初めにタンカーが炎上した際、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナによる「テロ攻撃」だと非難した。
ウクライナは、ロシアの「影の艦隊」を正当な攻撃対象と見なしている。「影の艦隊」のタンカーが運ぶ原油や天然ガスから得る資金が、ロシアのウクライナ侵攻を継続的に支えているからだ。タンカーは、西側の制裁を回避するため、送信機を常に切った状態で航行しているという。
ロシアはまた、全面侵攻の開始以来、ウクライナの民間向けエネルギーインフラを攻撃しており、真冬には多くの市民が、熱湯や暖房を利用できない状況に置かれてきた。
こうしたなか、ロシアのタンカーに対するドローン攻撃の回数と規模は拡大している。
ウクライナ保安庁(SBU)は昨年12月、黒海で2週間のうちに3隻を行動不能にしたと発表。その中には「致命的な損傷」を受けたとされる石油タンカー「ダシャン」が含まれていた。
そのわずか1週間後には、地中海で別の石油タンカー「ケンディル」が攻撃を受けた。当時、このタンカーは空だったとされている。
「アークティック・メタガス」が一連の爆発と火災で深刻な損傷を受けてから、すでに2週間が経過している。乗組員はリビア沿岸警備隊に救助された。
リビアの港湾当局は当初、このタンカーが沈没したと述べていたが、同船は現在、無人のまま危険な状態で漂っている。
世界自然保護基金(WWF)は「最大限の警戒態勢」にあると述べたうえで、積載物の潜在的な流出が、数多くの保護種が生息する「並外れた生態学的価値」を持つこの海域で、火災や長期的な汚染を引き起こすおそれがあると警告している。