【独自】伝説の投資家・清原達郎に緊急インタビュー 高市政権下での「株価上昇のピークと暴落」私はこう考える

7:03 配信

日本株の「進撃」が止まらない。10月8日水曜日の日経平均は5営業日ぶりに反落したが、9日木曜日には反発して前日比845円45銭高の4万8580円44銭で引けた。4万8000円台は史上初。強気相場に引きずられるように大手証券各社は軒並み年末目標を引き上げた。

一方、個人投資家のなかには急すぎる上昇ペースについていけず、新たな投資をためらう人も少なくない。バブルか否か──。カリスマ投資家として知られ25万部を超えるベストセラーとなった『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)の著者である清原達郎氏に聞いた。

無視できないリスクがある

──急伸する今の相場をどう受け止めていますか。「私は2020年3月にコロナ禍で日本株がボトムを付けて以来、強弱の違いこそあれ一貫して強気でした。その理由は自社株買いが高水準で維持されていたからです。高水準の自社株買いが続く限り企業収益が伸びなくても株価は上昇します。だからその他のファクターについてあれこれ気を揉まなくてもよかったのです。

しかし昨今の日本株について、さすがに無視できないリスクが生じており私は『いま日本株は危険な状態にある』と結論づけました」

「お祭り騒ぎ」の反動は

──そう判断する理由は何でしょうか。「一つは私が唯一頼りにしているテクニカル指標である「裁定取引の買い残(ネット)」が10億株レベルになってきたことです。2020年コロナ禍で相場が底値だったころは「売り残」が10億株を超えていましたので真逆な状態になっているわけです。『買い残が多い』ことは『短期筋がモーメンタムで株価指数先物を買い上がっている割には現物株に投資する長期投資家は腰が重い』ことを示唆しており、ネガティブなサインです」裁定取引は大手証券会社が自己勘定で行うもの。「裁定取引の買い残」が多いと、その後、必ず反対売買が起きて現物株が売られるので「弱気のサイン」。逆に「裁定取引の売り残」が多いと空売った現物株が買い戻されるので「強気のサイン」となる。──その他のネガティブサインは何でしょうか。「ここ数ヵ月の日本株の急上昇によって日本株の割安さが大きく減少してきたこともリスクの高まりに寄与しています。

総裁選後もすでに高値圏にある日本株はさらに急伸しました。市場では『高市(早苗新総裁)銘柄』などというナンセンスなプロパガンダが流れていてまるでお祭り騒ぎです。今後は『お祭り騒ぎ』の反動の『どっちらけ』が市場に影を落とすのではないでしょうか」

暴落はパニックによって起こる

──高市氏の経済政策を安倍晋三元首相の「アベノミクス」になぞらえて、「サナエノミクス」と命名してはやす向きもあります。「アベノミクスの再来を期待しているのでしょうが、当時と今とでは状況が全く違います。当時は金利をゼロにまで下げ日銀は突如として株を買い始めました。今後日銀は僅かとはいえ毎年株を売っていくのです。金利は今後上がらない可能性はありますが、下がっていく情勢ではありません。もちろん相場のレベル、日本株の割安さも今と当時では天と地ほど違います。高市氏からいろいろな政策提言が出ていますが、しょせん予算の制限がある話なので株式相場に大きな影響を与えることはないと思っています。私は、こと日本の株式相場については『政治に期待するのは楽観的過ぎる』と考えています」──それでは相場は今がピークなのでしょうか。「それはわかりません。私はヘッジファンドを25年間運用してきましたが相場のピークを当てたことは一回もありません。ピークより早くカラ売りを仕掛け、その結果合計700億円の損害を出しました。逆に相場のボトムを当てて儲けたことはあります。ファンドでも底値買いで儲けましたが2023年に引退した後も私は個人で2回、ボトムの時に株を買いました。2024年8月4日と2025年4月7日の暴落時、チャートで言うと『ひげ』のところで合計100数十億円分の日本株(メガバンク中心)を買ったのです。ボトムを当てるのはピークを当てるよりはるかに容易です。何故かといえば相場がピークをつける時、暴騰してピークをつけるわけではなく、通常徐々にピークに向かって切り上がっていきます(これはあくまでも相場全体の話です。個別株では『暴騰してピークをつける』のは珍しくありません)。もうこの辺りがピークだろうと思ってもさらに上がっていく確率が高いのです。

それに対し暴落はパニックによって起こります。一気に下がるので大体はそこが底値です」

ボトムとピークはこうやって判断する

──ボトムとピークをどう判断すればいいか。具体的に教えて頂けますか。「当てるのが簡単な順番に並べていくとこうなります。1.  日経225(相場全体)のボトム2.  個別株のボトム(1より難しいがチャンスの数が多い)3.  個別株のピーク4.  日経225(相場全体)のピークただ、私自身がピークを当てられない以上、皆さんにカラ売り(株価指数先物の売り建てを含めて)を勧めたくありません。持っている株をある程度売って現金比率を高めることで良しとすべきでしょう。株が趣味だという人以外の70歳以上の投資家は、全部現金でいいと思います。私は日本株が暴落しても『高水準の自社株買い』が続いている限り、相場は徐々に戻ると思っています。しかし今の相場のレベルが高いので、株価を戻して新値をとってくるのに最悪5年以上かかるかもしれません。お年寄りは待っているうちにお亡くなりになるかもしれませんよ。

つまり今の日本株は、老人が新たに株を買うような水準では決してありません。逆に20代から40代の方で、NISAで積み立て投資をされている方は相場のレベルなど気にせずそのまま続けていればいいのでしょう」

マネー現代

最終更新:10/10(金) 7:03

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