高校時代の「性被害」訴えた女性、元交際相手や学校・支援センター側を提訴…警察対応めぐり県にも賠償請求(弁護士ドットコムニュース)
三重県四日市市の私立暁高校で2022年、当時高校3年生だった女性(21)が、交際していた同級生から繰り返し性的被害を受けたとして、元交際相手や学校関係者、犯罪被害者支援センターの相談担当者らを相手取り、計2990万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。 【写真】ネット中傷で自殺未遂した元女性アナ 女性側は、元交際相手による性加害だけでなく、被害を相談した学校や支援団体が適切な対応を取らなかったことについても責任を問うている。 さらに、被害届を受理せず、適切な捜査や安全確保をしなかったとして、県に2400万円の国家賠償を求める訴訟も起こしている。 女性が通っていた暁高校での対応をめぐっては、県が「いじめ重大事態」の再調査を始めている。(ライター・渋井哲也)
訴状などによると、マユさん(仮名)側が損害賠償を求めているのは、元交際相手のユタカさん(当時同級生)のほか、2人が通っていた学校法人暁学園、当時の校長、教頭、学年主任、性被害について相談した公益社団法人みえ犯罪被害者総合支援センターの相談担当者だ。 マユさん側は、ユタカさんによる性加害に加え、学校側には安全配慮義務違反や使用者責任があると主張。センターの相談対応についても、実効的な助言がなく、マユさんに強い無力感や絶望感、孤立感を与えたとしている。 また、県警四日市北署の職員らについては、被害を訴えたマユさんに攻撃的な言動をしたうえ、被害届を受理せず、安全確保や適切な警察権の行使を怠ったとして、県の責任も問うている。
訴状などによると、マユさんは2022年8月17日から11月23日にかけて、当時交際していたユタカさんから、学校の教室をはじめ、公衆トイレ、通学路、駐車場、空き地、公園、グラウンドなどで20回以上の性被害を受けたと訴えている。 ユタカさんは「交際1カ月記念の写真を撮ろう」などと言ってマユさんを花火に誘い、グラウンドに連れ出した後、性加害に及んだとされる。その後も同様の行為が繰り返されたという。 また、現場に見学にきた同級生らがマユさんにカメラを向けることもあり、マユさんは精神的に大きな衝撃を受け、不安定な状態になったとしている。 マユさんが別れを切り出した後には、ユタカさんが「死ぬ」と泣いて引き留めたり、時間を問わず連絡してきたりしたという。さらに、2人のLINEのやりとりを自身の友人らに見せたり、グループLINEに投稿したりしたとも主張している。 母親は当時のマユさんの様子について、こう振り返る。 「娘は『私、頭がおかしくなった。何もできなくなった』と言っていました。部屋にこもるようになりました。おどおどしていて、目を見て話さなくなりました」
Page 2
マユさんと母親はその後、四日市南署管轄の「少年サポートセンター」に電話で相談し、それまでの経緯を説明した。 このときの相談記録については、開示請求によって確認できたという。しかし、マユさん側は、その内容にも疑問があるとしている。 「『北署が被害届を受理してくれないので、どうしたらいいでしょうか』と相談したんです。そのときの記録は唯一、開示請求で出てきました。しかし、その段階では知り得ないことが書いてありました。 それは、学校と話し合いをする上での助言です。『学校にも相談して、明日(11月29日)両方の親を交えて話し合いをしてもらう予定』とあります。たしかに、翌日にこちらから学校へ電話をし、行くことになりました。しかし、この時点で学校に行く予定はありませんでした。加害者側と話す約束もしていません。記録を後から作成したのか、書き換えたのか……」 マユさん側は、警察が被害申告を受けた際の対応についても、次のように疑問を呈している。 「警察は被害状況をメモすると思うのですが、被害の内容ではなく、被害のあった場所の住所だけをメモしていました。後になって思うのですが、防犯カメラの位置を気にしていたのではないかと思うんです。証拠が残りそうな場所をチェックしていたのではないでしょうか。被害者側の話を聞いたり、寄り添ったりするのではなく、加害者側に配慮したとしか思えません。いまだに受理されていません」
マユさんは性被害が発覚した後、暁高校にも対応を求めた。 2022年11月27日、所属する部活動の顧問に相談したところ、顧問は「自分も子どもが生まれたばかりで大変なので……」などと述べ、対応しなかったという。そのため、マユさんは高校2年生の担任にも相談した。 担任は「あらためて聞き取りをしたい」などと話したものの、その後、連絡はなかったとしている。一方、学年主任から電話があり、「今後は、今の担任に連絡するように」「可能な範囲で協力する」と伝えられたという。 訴状では、その後の学校側の説明についても問題視している。 四日市北署の署員が学校を訪れ、校長に「白紙」と伝えたとされる一方、校長は「この1週間、職員と協議して全力で対応している」などと説明したという。 マユさん側は、学校が警察と十分に連携していた事実はなく、こうした説明は虚偽だったと主張している。 さらに、母親が12月2日に学年主任と面談し、「女性として、このような件に同意すると思うか」と尋ねたところ、学年主任は「私の性癖に触れないでいただいていいですか!今そういう話をしてない。いろんな人がいますので」と発言したとされる。 マユさん側は、この発言について「極めて不適切かつ侮辱的な発言」であり、マユさんの人格や被害申告の信用性を傷つけたと主張している。 このほか、教頭についても、具体的な措置を取らず、マユさんを保護する責務を果たさなかったとしている。 学校側は、取材に対して「裁判になっているため、特にコメントすることはありません」と回答した。
一方、国家賠償請求訴訟で県は答弁書を提出し、マユさん側の請求を棄却するよう求めている。 県側は、警察の捜査権について「国家、社会の秩序維持を目的とする国の刑罰権の実現のため」のものであり、「その行使は公益のためになされるべきであり、犯罪被害者の私的利益保護のために行使されるべきではない」などと主張している。
弁護士ドットコムニュース編集部
Page 3
今回の訴訟では、性被害について相談した犯罪被害者支援センターの担当者も被告となっている。 マユさんと母親は2023年6月、支援者の同席のもと、センターの担当者と面談した。 訴状などによると、担当者は「このセンターは他県と違い、警察の出入りがあり、連携していて情報共有している。警察の書類を見られる立場」「内部資料を見ましたが、警察が受理しないと決めたものを覆すのは難しい」などと説明したという。 一方で、「カウンセラーとしてなら話を聞きます」と話したとされる。 マユさん側は、担当者が他の警察署への相談や告訴に向けた具体的な対応、被害者支援に取り組む弁護士との連携方法などについて、適切な案内をしなかったと主張している。
母親は、相談時の記録が残されていないことについても疑問を抱いている。 「高校が設置した調査委員会の聞き取りのとき、記録がないと言っていました。相談員は『このとき、組織としてではなく、個人的に会った』というのです。組織として相談に応じていないので記録がない、という説明でした。開示請求もしましたが、記録はありませんでした。 センターは三重県庁の合同庁舎に入っていて、そこに『来てください』と言われ、支援者と行きました。名刺ももらいました。ほかの職員2人も同席していました。有資格者であり、当時は責任のある立場でした。何かしら動かないといけないと思うのですが……」 マユさんの性被害が家族に発覚したのは、2022年11月23日だった。 大学受験を終えた同月26日夜、マユさんは両親らと四日市北署を訪れ、強制性交等致傷や準強制性交等の被害届を出そうとしたという。 訴状などによると、対応した女性警察官は「デートDV?そんなものはない。婚姻関係にない人にDVは適用されない」「交際関係にある中でのことなので同意」などと述べたとされる。 さらに「大きな声で明確に『い・や・だ』と相手にわかるように言ったのか?」などと繰り返し尋ねられ、被害届を受理してもらえなかったと主張している。マユさん側によると、現在も被害届は受理されていないという。 こうした警察の対応が、県に国家賠償を求める理由となっている。 「当初から『被害届を出したい』と言いに行っています。なぜ初動で受理せず、捜査をしなかったのでしょうか。このときのやりとりについて、警察に保有個人情報の開示請求をしましたが、『不存在』で何も残っていないのです。 110番通報の記録の開示も求めましたが、保存期間が満了しているため、破棄されていました。そのほかの電話記録も、『公文書が作成されていない』とのことで、一切残っていないのです」