価格は据え置き、では品質は? 楽天・三木谷氏の発言から読み解く「最強ネットワーク宣言」の今後

 2025年9月30日、楽天モバイルはプレスカンファレンスを開催した。既存3キャリア同様に、楽天モバイルもついに値上げするかと思いきや、三木谷浩史会長は「値上げします。ではなく、楽天モバイルは低価格と無制限を継続します」と宣言。既存の料金プランを維持していくことを明らかにした。

 楽天モバイルとしては既存3社が値上げに動くなか「Rakuten 最強プラン」を継続することで1000万契約超えに弾みをつけたいのだろう。

 実際、プレスカンファレンスは「値上げしない宣言」が注目を浴びたものの、あとは「Rakuten 最強U-NEXT」のキャンペーンぐらいしか新しい話はなく、内容は薄めな印象であった。

 ただ、個人的に気になったのが「楽天モバイルはネットワークでも最強をめざします」宣言が飛び出したことだった。

 楽天モバイルは新規参入に割り当てられた1.7GHz帯をメインに、新たに割り当てられたプラチナバンド、さらに5GのSub6、ミリ波などを所有する。

 楽天モバイルではSub6の基地局を増やすようにしているようだが、やはりつながりやすさでいえば、ミッドバンドがもっと欲しいところだろう。

 KDDIやソフトバンクは2.5GHz帯でTD-LTEを展開してトラフィックをさばいていることを考えると、本来、楽天モバイルにもそのあたりの周波数帯があるのが理想なはずだ。

 楽天モバイルは年内にも1000万契約を超えようとしている。しかも、一人あたりのデータ利用量は31.2GBと4キャリア平均の倍となるトラフィックを叩きだしている。

 他キャリアに比べて持っている周波数帯が少ないなか、トラフィックを吸収するには、他キャリアに負けない基地局数が必要になってくるのではないだろうか。

 「楽天モバイルはネットワークでも最強をめざします」宣言をしたこともあって、気になったのがKDDIとのローミング契約だ。

 楽天モバイルは新規参入時に基地局が圧倒的に足りないということで、ルーラルエリアや都心部などで、KDDIのローミングに依存してきた。サービス開始当初に比べれば、かなりローミングエリアは縮小されているようだが、それでもKDDIのローミングがなければ、楽天モバイルのネットワーク品質はかなり落ちるはずだ。

 そんなローミングも、契約上は2026年9月30日までとなっている。

 果たして、延長する予定はあるのだろうか。そんな疑問を三木谷会長に聞いたところ「守秘義務契約があって答えられない。しかし、継続性は大事にしないといけないと思っている」という回答であった。

 両社の契約としては「ローミング提供期間のさらなる延長については両社協議の上決定」とある。

 KDDIとしても、一時期はローミング収入でかなり稼いでいたが、最近はその額も減少が続いている。とはいうものの、年間で数百億円レベルの収入は維持されており、KDDIとしてもできれば延長しておきたいのではないだろうか。

 また「楽天モバイルはネットワークでも最強をめざします」宣言で、もうひとつ気になったのが5G SAの展開だ。

 オープンシグナル社の5G SA調査ではKDDIとソフトバンクのみが対象となっており、NTTドコモは5G SAのエリアが狭すぎるということで対象外、楽天モバイルも本格的に5G SAが始まっていないということで調査されていなかった。

アップルの発表会で示された、Apple Watchの5G通信に対応する携帯電話キャリア

 先日、発売されたApple Watchの新製品は5G通信に対応している。アップルの発表会では5G通信に対応するキャリアとしてNTTドコモとKDDI、ソフトバンクのロゴが出ていたが、残念ながら楽天モバイルのロゴを見つけることはできなかった。

 実はApple Watchは5G SAに接続するため、本格的なサービスを提供していない楽天モバイルは「非対応」ということらしい。

 最強のネットワークを目指すには5G SAの展開は不可避のような気もするが、そのあたりを三木谷会長にぶつけたところ「ソフトウェアアップデートで対応できるので、来年中には実現できる」という。

 現在の5GはNSAであるため、4Gのアンカーバンドを利用している。これが5G SAになれば、アンカーバンドが不要になる。三木谷会長は「アンカーバンドが要らなくなるのは、キャパシティを上げるうえで重要になってくる。5G SAに対して、プライオリティ高くソフトウェアの開発を行っている」とした。

 もうひとつ、三木谷会長の発言で聞き捨てならなかったのが、スマホと衛星との直接通信に関する質問が飛んだときだ。すでにKDDIはスターリンクとタッグを組み、スマホと衛星のデータ通信サービスを提供するまでに至った。

 一方、楽天モバイルはASTと組んで、2026年第4四半期にサービスを開始する予定だ。その進捗を聞かれた三木谷会長は「最初から24時間、フルサービスというわけにはいきませんけど」とコメントしていたのだった。

 おそらく、サービス開始当初は飛行する衛星の数も少なく、通信サービスを提供できる時間が1日のなかでも限られるようだ。衛星が上空にやってくるのを待って、スマホからつなぎにいくという使い勝手になるのだろう。

 現状、最強のネットワークとは言えないが、2026年には少しずつ他社に追いつくつもりのようだ。

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