自民党三役派遣の「前進」…竹島式典 閣僚見送り批判も有村氏「より大きな国益での判断」
韓国の不法占拠が続く竹島(島根県隠岐の島町)の早期返還を求め、22日の「竹島の日」に松江市で開かれた記念式典を巡って、政府出席者は内閣府政務官にとどまった。保守層が抱く高市早苗首相への期待が裏切られた形で、例年以上にヤジがフォーカスされる結果となった。領土問題は後退が許されない一方、東アジア情勢の変化で韓国と連携する必要性は増している。自民は初めて党三役として有村治子総務会長の派遣に踏み切った。
「領土喪失に黙る国はすべて失う」
「より大きな国益を考え、自民党としての判断の一環だと理解している。前進していく決意を新たにした」
有村氏は24日の記者会見で、式典参加をこう振り返り、出席を指示したのは鈴木俊一幹事長と説明した。「参画することが最終目的ではない」とも念押しした。
従来、自民幹部の派遣に関しては、竹島問題の啓発を所管する組織運動本部長にとどまっていたが、今回初めて最高幹部の一人として総務会長が派遣されることとなった。
有村氏は国会審議などで領土問題に取り組んでいる。式典では19世紀のドイツの法学者イェーリングの言葉として「領土の一部を失って黙っている国民は、領土のすべてを失う危険を負う」と訴え、意識啓発の必要性を強調した。
「この場に総理が来ることだ」
22日の式典には県が招待状を送った首相や閣僚の姿はなく、落胆と批判が入り交じったヤジが飛び交った。有村氏に対しても「高市さんや大臣が来たらいいんじゃないですか。頼みますよ」とヤジが飛ぶ。
「竹島の日」記念式典で、内閣府の古川直季政務官によるあいさつの際に抗議の声があがり、静粛を求める言葉が掲げられた=2月22日午後、松江市(安元雄太撮影)式典で日本保守党の百田尚樹代表が「自民党議員は『世論喚起が大事だ』と。最も効果があるのは、この場に高市総理が来ることだ」と述べると、「そうだ」と呼応する声があがった。
ヤジは例年通りだというが、高市首相を巡っては、党総裁選期間中の昨年9月、党のユーチューブ番組で「本来だったら閣僚が堂々と(式典に)出ていったらいい。顔色をうかがう必要はない」と領土問題への基本姿勢を述べている。首相批判の声はSNSやメディアで注目される形となった。
地元は冷静に受け止め
一方、地元では首相や閣僚の出席見送りについて、式典での喧噪に比べ、若干冷静に受け止めているという。
島根県議の原拓也氏は産経新聞の取材に「閣僚級の出席を望んでいた人は多く、今回は残念だ。ただ、韓国との関係も分かる。ヤジで言われるほど県民、少なくとも県議会で『なんだ』と思っている人は少ない」と一定の理解を示した。有村氏の派遣についても「歓迎している。前に進んだ感はある」と語った。
昨年10月の高市首相就任後の変化に挙げられるのが、トランプ米大統領が昨年12月以降、南北米大陸を中心とした「西半球」重視を打ち出していることだ。中国やロシア、北朝鮮の脅威に直面する日本にとって、米国を東アジアに関与させ続けるためには、韓国との連携は必要条件といえる。
北朝鮮の拉致問題解決に当たっても、韓国との連携協力は欠かせない。親世代で存命なのは、横田早紀江さん(90)のみで時間的猶予はない。
総務会長派遣を巡っては、政府と切り離したことで韓国との関係に決定的な亀裂を生じさせない一方、竹島問題に対する与党の対応として一歩前進となる。次回以降、出席幹部が格下げされれば、自民は「岩盤保守層」から批判を浴びるのは必至となる。
党幹部の一人は、式典について「副大臣を出すか大臣を出すかは『局地戦』といっていい。大きな実、国益を取らねばならない」と述べ、鈴木幹事長の判断を是とする。
式典では百田氏が「口ばっかりだ」と高市内閣への苦言を呈する中、古川直季・内閣府政務官は顔をそむけることなく、黙って聞いていた。(奥原慎平)