「ユウキ、君がレッドブルのドライバーだ」角田裕毅が明かす“レッドブル緊急昇格”の胸中「壁を感じたことって、今まで1回もない」《独占インタビュー》(Number Web)
1000分の1秒を争うF1の世界では、すべてが一瞬で切り替わる。 期待が失望に、批判は称賛に──。 4月のレッドブル緊急昇格によるハネムーン期間は終わりを告げ、角田裕毅に向けられる視線はそろそろ現実的なものに変わりつつある。 マシンが低調で予選最下位となった第9戦のスペインGPに続き、第10戦のカナダGPもかみ合わないレースだった。 フリー走行での赤旗中の違反行為で10グリッド降格の裁定を受け、決勝は後方18番手からのスタートを強いられた。期待されていた新パーツ投入のタイミングの悪さやブレーキトラブルの発生など、チームのサポートにもちぐはぐな面が見受けられた。 それぞれに斟酌すべき点はあるが、これで3戦続けてポイントなし。ドライバーズランキングは15位。まだ周囲を唸らせるような走りを見せているとは言いがたい。
そんな角田に話を聞けたのは苦闘のさなかのスペインGP後だった。しかし、イタリアの自宅からリモート取材に応じた日本人ドライバーは案外、平気な顔をしていた。 そして、あっさりとこう言うのだった。 「今まで一回もないんです。壁を感じたことって。自分のキャリアを通じて考えてみても、まだないですね」 今まさに大きな壁にぶつかっているように見えるのに、その口調は強がりや虚勢を感じさせないものだった。何より思ったことをストレートに口にするのが角田のキャラクターだ。だとしたら、やはりそれは25歳の本心に違いない。 「壁にぶつかるって、もう少し行き詰まった状態、これ以上何をすればいいかわからないという状態だと思ってます。今はそうじゃない。まだいろいろなやり方で改善できる。そのアイデアがどんどん生まれてくる。だから壁というよりは、ただ単にシーズン中にいきなり新しい車に乗って、オフの練習走行もない中で走り始めたところ。だから大変なだけ。自分の中ではそう考えていて、そこまでプレッシャーをかける必要はないと思います」 予期せぬ形で角田の運命の歯車が動き始めたのは、3月の中国GP後のことだった。レッドブルのチーム代表、クリスチャン・ホーナーからの電話で、リアム・ローソンとの入れ替わりでレッドブルに昇格する可能性があると告げられた。 角田とローソンは昨季後半戦をレッドブルの姉妹チーム、レーシングブルズ(RB)でともに過ごした。同チームはレッドブルに乗るドライバーの育成も目的とした“セカンドチーム”。そこで角田はローソンを上回る成績を残しながら、なぜか選ばれたのはライバルの方だった。 「もちろんがっかりはしました。でも、それは自分にはコントロールできないこと。だからひとつひとつのレースで実力を証明していこうと。自信はあったし、RBでリーダーとなるのも初めての挑戦。いい走りを見せ続ければ、レッドブルだけじゃなくて他のチームからのオファーだってあるわけだから、そこは焦ってなかったですね」