自民・高市氏、奈良のシカを「日本人も外国人も大事に」 観光関係者は「叩く蹴るは日常」
自民党総裁選に立候補した高市早苗前経済安全保障担当相は28日、奈良公園(奈良市)のシカについて「角を引き回したり、蹴ったり、いろいろな行為が外国の方によって行われているのも事実で、目撃談もある」と述べた。その上で、日本人もシカに乱暴な行為を働いた事例が過去に問題視されたとして「日本人も外国人も同じ。外国に行けば、その国の方々が大事にしているものを大事に守らないといけないし、事前に勉強もしないといけない」と訴えた。
暴行動画拡散でDJポリス、条例施行規則改正
産経新聞のインタビューに応じる自民党の高市早苗前経済安全保障担当相=25日午前、国会内(春名中撮影)高市氏は22日の所見発表演説で外国人政策に関連して「奈良のシカを足で蹴り上げる、とんでもない人がいる。殴って怖がらせる人がいる」と言及。発言の根拠を問う声がメディアなどから相次いでいた。
奈良のシカは神の使いとして扱われ、昭和32年に国の天然記念物に指定された。危害を加えると文化財保護法違反に問われる。
近年、外国人観光客の急増に伴い、不用意に触ったりしてトラブルに発展するケースも相次ぐ。シカに与えていいとされているのはおやつの「鹿せんべい」だけ。写真撮影のため、じらされたシカから、外国人がかまれる事故も増えたという。
奈良公園周辺に生息する奈良のシカ昨年夏には白いTシャツ姿の男がシカを蹴ったりする動画がSNSで拡散した。そのため、奈良県警は同年7月に「DJポリス」を出動させ、マナー啓発のため日本語、英語、中国語の3カ国語で呼び掛ける。県も今年4月に県立都市公園条例施行規則に基づく運用の一部を改正し、シカに暴行を加えるなどの加害行為を禁止行為に追加した。
愛護会「見たことない」
ただ、保護団体「奈良の鹿愛護会」の担当者は産経新聞の取材に「公園を巡回する中で外国人による暴行は見たことがない」と強調する。「自衛の意味で『向こうに行け』というのはあると思う。当会に対して『シカがこんなに危険な動物だと思わなかった』という通報のほうが多い」と指摘する。
国内外の観光客がシカの首に手を回して写真を撮るとか、鹿せんべい以外の菓子を与える事例は確認されているという。
地元旅館関係者は「日常的にある」
一方、奈良公園内の東大寺門前に位置する老舗旅館の担当者は、外国人観光客がシカを乱暴に扱っている場面について「中国語を話す観光客が鹿せんべいをすぐにあげなかったために、突いてきたシカの頭を叩いたり、蹴ったりは日常的にある」と話す。
奈良のシカを巡っては、元迷惑系ユーチューバーで奈良市議のへずまりゅう氏が、シカに乱暴な扱いをする中国人とみられる観光客を注意する様子を撮影した動画をSNSにアップしている。
旅館の担当者は、怒号を飛ばしながら中国人観光客に迫るへずまりゅう氏について「そこまで切れて、怒らんでもよいと思うが…」と指摘した上で、外国人観光客がシカを乱暴に扱っている行為については「この辺で商売している者はみんな見ていると思う。日本人でもシカのことを怒る人はいると思うが、叩く蹴るまではいかない」と述べ、啓発の必要性を訴える。
高市氏「日本人も、外国人も」
奈良市などを地盤とする永田恒県議は「外国人観光客による暴行とされる動画がSNS上で拡散しており、地元の不安が広がっていると感じる」と述べ、高市氏の発言について「県民の不安に応えた現実的な問題提起だ」と理解を示す。
高市氏は28日、記者団に「ちょうど外国人観光客が非常に多く来られている時期なので、そういう事象が目立ってきたのだろう」と述べた上で、「昔から日本人もシカを乱暴に扱ったら、大変な批判を受けた。日本人だから、外国人だから、ではない」と強調し、奈良公園を訪れる観光客は国籍を問わずシカを大切に扱ってほしいと訴えた。(奥原慎平)