連立キーマン、維新・遠藤氏もかつては高市氏の「愚痴聞く係」銭湯帰りのメールで交渉開始

日本維新の会の遠藤敬首相補佐官(左)と自民党総裁の高市早苗首相

日本維新の会の遠藤敬首相補佐官は28日配信の維新サブチャンネル「維新ゴリゴリハミダシCH.」に出演し、自民党と20日に連立合意に至った舞台裏を明かした。遠藤氏は連立協議を巡るキーパーソンと目されている。

公明離脱…「なんとなしに感じた」

「地元の銭湯から帰ってきて。なんとなしに高市総裁やばいんじゃないかと。明日から大変やろうなと思って」

遠藤氏は、9日夕に自民の高市早苗総裁に体調を気遣うショートメッセージを送ったときの心境をこう振り返った。

10日に公明党は自民との連立解消を表明する。遠藤氏は8日頃から連立離脱の雰囲気を「なんとなしに感じていた」という。

「維新ゴリゴリハミダシch.」で自民党との連立交渉の舞台裏を振り返る日本維新の会の遠藤敬首相補佐官

ショートメッセージの送信から30分後、高市氏から電話があった。高市氏は公明の連立解消の動きを具体的に把握していない様子だったといい、遠藤氏も具体的には触れなかった。

代わりに維新や国民民主党の雰囲気についてやり取りしたという。少数与党を運営する高市氏にとって政策的に近い両党との関係は重要で、遠藤氏はこう伝えた。

「12項目を1回見ていただいて、飲めるならば一回交渉したらどうですか」

「飲めるわね」

「12項目」は社会保障改革や「副首都」構想などを盛り込んだ維新の政策要望。1週間後の16日、維新が自民に正式提示することになるものだ。高市氏は、9日の電話で「見せてよ」と遠藤氏に語り、飲めるかどうか検討する意向を示したという。

実際、公明が連立を離脱した10日夜から東京・赤坂の議員宿舎で、維新の藤田文武共同代表と自民党の木原稔官房長官による事実上の政策協議が始まった。

初日は高市氏も同席した。12項目を見た高市氏は「できるんじゃないの。飲めるわね。詰めていけばできるんじゃないの」と話したといい、遠藤氏は「前向きだ」と感じたという。

「蹴り上げられる所まで」

維新の吉村洋文代表(大阪府知事)が15日に上京して高市氏との党首会談に臨み、政策協議を16日に正式に開始することで合意した。

ただ、15日の段階で政策協議は大筋で整っていたとの見方を遠藤氏は示す。

「キックオフしたものの整わずでは格好悪い。八分目、九分目くらいまで上げておかないと。なんとか蹴り上げられる所までいかないとだめだった」

高市氏「お昼ごはん食べない?」

遠藤氏は「国対族」として国会運営に詳しい。党派を超えたコミュニケーション能力の高さに定評がある。

高市氏との親交は民主党政権時代から、安倍晋三元首相を交えてあったという。平成30年に高市氏が衆院議院運営委員長に就任したことで仕事をする機会が増え、距離が縮まった。

日本維新の会の遠藤敬首相補佐官(維新ゴリゴリハミダシch.より)

高市氏は、議運理事経験が長い遠藤氏に「お昼ご飯食べに来ない?」と電話をかけるようになったという。遠藤氏は「相談相手というか、愚痴を聞く係だった」と冗談めかして話した。

「たこ焼きでつなぐ人脈」「水面下の男の美学」

遠藤氏は、議員宿舎の自室に与野党の政治家や役人らを呼んで主催する「たこ焼きパーティー」が人気なことでも知られる。番組でキャストを務める高木佳保里参院議員が「たこ焼きでつなぐ人脈」と水を向けると、遠藤氏は「予約券が500枚」と応じた。

水面下で始まった政策協議に、遠藤氏は関わらなかったという。交渉の舞台装置を整えた上で実務者に任せる姿勢を巡り、もう一人のキャスト、新実彰平参院議員は「水面下の男の美学」と持ち上げてみせた。

日本維新の会のサブチャンネル「維新ゴリゴリハミダシch.」でキャストを務める新実彰平(左)、高木佳保里両参院議員

「野党の顔を立てる」

維新から官邸入りした遠藤氏は野党時代の目線も忘れないと強調した。

ガソリン税暫定税率廃止など、今後の与野党協議について「自民党との違いは野党に長くいたこと。だから、野党の皆さんの気持ちもわかる。できるだけ野党の顔が立つように調整していくつもりだ」と強調した。

番組は24日収録。遠藤氏にとって補佐官就任後初のインタビューだという。(奥原慎平)

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