旧日銀金沢支店巡り「知事VS市長」 市長「口を出すなら金も…」 知事「根回しない」バッサリ
●知事また苦言、連日の応酬
●「県市連携」どう影響?
金沢市が取得予定の旧日銀金沢支店の利活用を巡り、馳浩知事と村山卓市長が火花を散らしている。地下金庫を「非公開」とした市長の方針に対し、知事が異例の注文をつけたのが始まり。市長が17日の会見で「口を出すなら金も」と言えば、馳知事は18日、待ってましたとばかりに「調整が一切なかった」と反論し、根回しが不足していたと再び苦言を呈した。連日繰り広げられる「公開バトル」は、来春の再選を目指す両氏が掲げる「県市連携」にどう影響するのか。
やはり、売られたケンカは買う人だった。
「そこを調整するのが県市連携ですよね」。北國新聞社の取材に対し、馳知事は18日、不敵な笑みを浮かべながら、こう答えた。旧支店活用の「目玉」とされる地下金庫の非公開方針について、事前の説明が足りなかったと指摘。市側の姿勢に疑問を投げ掛けた。
このテーマを振ると、止まらない。馳知事は、長期休館する金沢21世紀美術館の収蔵品を旧支店で展示する自説を念頭に、「まちなかを美術館にする大きなチャンス。そのターゲットが旧支店になるのは目に見えていた」と語った。その上で「そもそも事前の打ち合わせを必要とする大きな課題だ」と重ねて強調した。
村山市長が馳知事に食ってかかるような発言をしたのは前日の17日だった。「改修で県が金銭的負担をできるのか相談に乗ってもらえればと思う。口を出すんだったら金も出すんだろう」。市が取得を目指す旧支店の利活用に関する一連の知事発言について、ムッとした表情でこう話した。
普段は淡々と受け答える市長だが、知事の度重なる「攻撃」に我慢がならなかったのか。市関係者からは「向こうのリングに乗る必要はなかった。相手の思うつぼだ」との声も漏れた。
「公開バトル」の発端は今月10日の市長発言だった。村山市長が、消防法の観点から旧支店の地下金庫を公開しない意向を表明。北國新聞が報じた翌11日、市長は一転して公開に前向きな姿勢を示した。同じ日、馳知事は「なぜ公開しないのか疑問だ」と、ゴングを鳴らした。
村山市長は18日、取材に対し、地下金庫の公開に向けて改修が必要になれば、現状の想定より費用と時間がかかると改めて主張した。「旧支店を幅広く活用していくため、県市連携ができればより良くなると思う」と、馳知事との協議に前向きな考えを示してみせた。
●「ぜひ提案を」
21美休館中のにぎわい創出に向け、11月に次回会合が開かれる市の検討会には馳知事の「全権委任」を受けた徳田博副知事が県代表として出席する。村山市長は旧支店の活用について「具体的なアイデアがあるのなら、ぜひ提案していただきたい」と求めた。
金沢の県市議も両者の「バトル」に関心を寄せる。紐野義昭県議は17日の県議会一般質問で、この話題を取り上げ、わざわざ再質問で知事の見解をただした。紐野氏は取材に「県との間でしっかり話をしたのかどうかに問題があったのではないか」と知事に加勢した。
一方、10日の市議会一般質問で旧支店の改修計画を尋ねた福田太郎市議は「県都のど真ん中の案件であり、県市が予算の面でも協力すれば良いのではないか」と市長の肩を持った。
都心軸発展の要となる旧日銀支店の利活用はどのような形で決着するのか。双方が2期目の挑戦を表明する中、自民関係者は「対立する姿は県民、市民にマイナスに映るだけだろう」と冷ややかに語った。
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