「イラン攻撃の“真の狙い”は体制転覆ではなく…」エマニュエル・トッドが看破する「『脅迫の帝国』に変貌した」米国の“テロリスト的”外交政策(文春オンライン)|dメニューニュース
歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏が、文藝春秋PLUSの緊急配信インタビューで、米国によるイラン攻撃の深層を読み解いた。2024年にフランスで『 西洋の敗北 』(文藝春秋)を刊行し、世界27カ国で翻訳されているトッド氏はトランプ政権の「現実認識の喪失」を指摘する。通訳を務めたのは慶應義塾大学名誉教授の堀茂樹氏。(全2回の1回目/ 続きを読む )
(初出:「文藝春秋PLUS」2026年3月9日配信)
「本当に体制転覆を狙ったものかは疑問」
トッド氏は米国の外交政策がベネズエラのマドゥロ大統領やイランのハメネイ師など「個人を標的とする攻撃」へと変質していると分析する。
トッド氏によれば、ハメネイ師殺害の真の狙いは単なる体制転換ではないという。
「イラン攻撃が本当に体制転覆を狙ったものかは疑問です。なぜなら、仮に体制を変えても、次に生まれる政治体制は、宗教的かどうかにかかわらず、ナショナリスティックで愛国的なものになるに違いないからです」
本当の目的はイランに…
トッド氏が見抜くのは、より陰湿なアメリカの戦略である。
「本当の目的は体制転換ではなく、イランに内戦を誘発することにあるのではないでしょうか」
エマニュエル・トッド氏その意図について、トッド氏はこう続ける。
「もし内戦が起きて国内の混乱が数年続けば、イランは中東で大国としての地位を失うでしょう。それが究極の狙いなのだと思います」
さらにトッド氏は、敵国の指導者個人を標的とした攻撃が持つ別の意味にも言及する。
「個人を標的とした攻撃は、敵国だけでなく、同盟国や友好国の指導者に対する脅迫という側面も持っているのではないでしょうか」
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恐怖によって支配する「テロリスト的」手法
こうした戦術の変化について、トッド氏は強い警告を発する。
「このような手法を用いることで、アメリカは事実上『脅迫の帝国』へと変貌しつつある。その国際関係への関与の仕方は、脅しによって相手を支配するテロリスト的な手法です」
その象徴として、トッド氏はこう指摘する。
「米国内で国防総省よりもCIAの重要性が増しています。これは米国のあり方が変貌していることを示しており、非常に深刻な事態です」
トランプ自身が現実から乖離している
トッド氏は今回のイラン攻撃が米国の「第三の敗北」になるかという問いに対し、情報の混乱を指摘しつつ、次のように述べた。
「分析を困難にしている大きな要因の一つは、トランプ大統領自身が現実から乖離しているように見え、そうした発言を繰り返している点です。
まるで全能であるかのように語り、自ら米国の万能性を信じ込んでいるようです。彼自身が、実際に何が起きているのかを本当に理解しているのか、私には確信が持てません」
副大統領ヴァンスの沈黙は何を意味するか
そして、トッド氏が注目するのは、副大統領J.D.ヴァンスの沈黙である。「彼が何を考え、どのような立場にいるのかが全く不明であり、これが現状を読み解く一つの手がかりになると思います」
ヴァンス氏は「トランプの側近の中で間違いなく最も知的な人物」だとトッド氏は評価する。その彼が姿を消していることが、政権の混乱を物語っているというのだ。
〈 エマニュエル・トッドが洞察「米国はイランだけでなく欧州諸国も攻撃している」EU指導者は“米国の召使い”なのか 〉へ続く
(「文春オンライン」編集部)