突如現れた「巨大な火の玉」これって隕石?西日本の夜空が白昼に変わったワケ【天文学者が解説】(よろず~ニュース)
2025年8月19日の夜、西日本の広い範囲で「夜空が一瞬、昼間のように明るくなった」という驚きの声が相次いだ。九州や近畿各地では辺り一帯が照らされ、まるで朝が訪れたような光景が広がったという。 【写真】静岡と茨城の上空に〝謎の発光体〟 監視カメラやドライブレコーダーには、強烈な閃光を放ちながら落下してくる巨大な火球の姿が映し出され、その映像は瞬く間にSNSで拡散された。日常の中に突如現れた異常な光景に、多くの人が衝撃を受けたのである。 火球は幸いにも大気中でほぼ燃え尽きたとみられるが、もし都市部に落下していたなら甚大な被害を被った恐れがある。この火球の正体は何だったのか。今後も同様の現象は起こり得るのか、天文学者の松岡健太さんに話を聞いた。 ー8月19日に西日本で観測された火の球の正体はどう分析されていますか? 「火球(かきゅう)」と呼ばれる現象で間違いないかと。流星の中でも特に明るいものを火球と呼びます。決まった定義はありませんが、マイナス4等程度より明るいものを火球と呼ぶことが多いようです。 流星とは宇宙空間の塵や小石のような流星物質が地球の大気に衝突、突入して発光したものです。 ーもし今回の火球が都市部に落下していた場合、どの程度の被害が想定されますか? 2013年02月にロシアのチェリャビンスク州付近に落下した隕石では、流星物質の通過と分裂によって発生した衝撃波によって、約1500人が負傷、建物の窓ガラスが割れるなどの被害がありました。 今回観測された火球は、その明るさから宇宙にいたときのサイズは10メートル級と言われています。これが正しければチェリャビンスク隕石に匹敵する大きさになります。(実際はもう少し小さいとの意見もあります) ーこのように「夜が昼になるほど明るい火球」は、どれくらいの頻度で起こる現象でしょうか? 火球自体は日本では平均すると1ヶ月に数個程度の頻度で目撃されるものですが、今回のような明るさ(大きさ)の火球は比較的珍しいです。 例えば、チェリャビンスク級の隕石が地球上の"陸地"に落下する頻度は100年に9回ほど(すなわち11年に1回程度)、人が住んでいるエリアに限定すると100年に1回ほどであるとの報告があります。 今回の火球は種子島の北東沖を流れて海上に隕石として落下した可能性が示唆されていますが、海洋を含めた地球全体での落下頻度で考えると100年に30回程度(3年に1回程度)の現象を捉えたことになります。 陸地への隕石落下ではないですが、我々の生活圏から近い位置に落ちたことで観測できたレアケースだと言えそうです。 ー今後も同様の火球が観測される可能性は高いのでしょうか?また、一般市民として何か注意すべき点はありますか? 火球現象自体は珍しい現象ではないですが、1913年以降の100年間でチェリャビンスク隕石と同程度かそれより大きな隕石落下は9回起きています。しかしながら、我々の生活圏内への落下は1回/100年と非常に稀な現象です。 隕石落下に伴う大規模な自然災害の被害を避けるためにも、今後の研究に期待したいところですね。 ◆松岡健太(まつおか・けんた) 天文学者。2012年に愛媛大学大学院を修了後、京都大学やフィレンツェ大学での特別研究員を経て、'19年に株式会社ウテナ銘酒を設立。 (よろず〜ニュース特約ライター・夢書房)
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