すべては「推し」のため 「パパ活」女子は赤ちゃんをゴミ箱に捨てた

赤ちゃんが遺棄された現場。ゴミ箱は事件当時とは違うものが置かれていた=東京都内で2025年9月30日午後0時15分、安達恒太郎撮影

 東京都内のアパートで1年3カ月前、外に置かれたゴミ箱の中から新生児が見つかった。

 生まれたのは発見のおよそ12時間前。ずっとゴミ箱に入れられていた。「生きていたことは奇跡」。後に産婦人科医はこう評した。

 殺人未遂容疑で逮捕・起訴されたのは23歳の母親だった。なぜ生まれたばかりの我が子を捨てたのか。

 「すべて終わったら自首するつもりだった」。法廷で明らかになったのは、身勝手な動機と被告の特性だった。

「赤ちゃんの腕だ」

 「オギャー」

 2024年6月20日午後6時半ごろ、このアパートに住むフォトグラファーの清瀬宏光さん(55)は、外階段の近くにあるゴミ箱のほうから泣き声を聞いた。

 「猫の声だろうか」

 気になってゴミ箱の蓋(ふた)を開けた。中にはビニール袋があり、袋の開口部からタオルがはみ出ていた。

 何かが入っているようだが、声はしなかった。不思議に思い半透明の部分を凝視した。すると赤みがかったものが見えた。

 「赤ちゃんの腕だ」

 とっさにゴミ箱の蓋を閉めた。

 「オギャー」

 中からもう一度、泣き声が漏れた。急いでスマートフォンを取り出し110番した。

 駆けつけた警察官らは赤ちゃんを救急搬送し、鑑識活動を始めた。事件の捜査が始まった。

 「体は真っ赤で汗だくだった。なぜ新生児を捨てるようなことをするのか。許せない」

 清瀬さんは記者の取材に当時を振り返った。

心の支えだった「メン地下」

 発見から13日後、警視庁はアパート近くに住む北川望歩(のあ)被告(23)=殺人未遂罪で起訴=を逮捕した。

 「赤ちゃんにひどいことをして本当に申し訳ない」

 北川被告は25年9月、東京地裁422号法廷で始まった裁判員裁判に黒のスーツ姿で出廷し、起訴内容を認めた。

 そして、心の支えにしていた存在を語り始めた。

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