マクロスコープ:国会本格論戦へ、立憲は消費減税で攻勢狙う 高支持率の高市氏に対抗

写真は国会議事堂の外観と日本国旗。10月21日、都内で撮影。REUTERS/Manami Yamada

[東京 4日 ロイター] - 臨時国会での与野党の論戦が本格化する。4日に始まる高市早苗首相の所信表明演説に対する衆院代表質問を皮切りに、野党側は予算委員会などでも高市氏の政策や政治姿勢をただす構えだ。特に消費税を巡っては野党第1党の立憲民主党が早々に減税法案を提出。他党に結束を呼び掛けており、野党の足並みが揃えば政権を攻め立てる好機となり得る。

ただ、政策ごとに与野党の協議体が設けられるなど野党が一丸となるにはハードルが残る現状で、立憲内からは政権との対立軸の設定に苦慮する声も聞かれ始めた。

<「『そうですね』で終わりそう」>

「かなり我々の主張が取り入れられている。攻め方が難しい」。立憲関係者は高市氏の所信表明を聞き、こう漏らした。

実際、高市氏による10月24日の所信表明演説は、物価高対策をはじめとする経済政策で立憲の主張と重なる部分が少なくなかった。ガソリン暫定税率廃止はもちろん、医療機関支援や介護福祉従事者の処遇改善、給付付き税額控除の制度設計なども、これまで野党側も時の政権に求めてきたものだ。国民民主党の玉木雄一郎代表は高市氏の演説後、「方向性はかなり重なるところがある」と評した。

防衛力整備や外国人問題への対策など注目を集める政策すらも、対立軸とできるかは不透明だ。いずれも国民民主や参政党は従来から強化を訴え、立憲内にも必要性を訴える声があるからだ。特に防衛費については高市氏が具体的な増額目標を数字で示していないこともあり、前出の立憲関係者は「本来なら高市氏とはまったく主張が違うはずだが、いざ国会でただすとなると『そうですね』で終わってしまいそうだ」と話す。

<消費減税は対立軸となるか>

こうした現状の下、立憲は消費減税を政権との対立軸に据えたい考えだ。10月31日、飲食料品の消費税を1年間ゼロにする法案を早々に衆院に提出した。主張が重なる政策が少なくない中、消費減税は高市氏が自民党総裁選に臨むにあたって旗を降ろした経緯もある。立憲の野田佳彦代表は3日、自身のSNSで「物価高の痛み、暮らしの苦しさに鈍感な政治であってはなりません」などと投稿。与野党を超えて法案への賛同を求め、高市政権との対決姿勢を強調する構えだ。

ただ、消費減税での結束呼びかけにはリスクも伴う。国民民主は今夏の参院選で一律5%への減税を主張。参政党は段階的廃止に踏み込んだ。多くの野党が「減税」の方向性では一致するものの、対象や減税率は大きく異なっている。象徴的な対立軸で野党間の足並みの乱れが続けば、予算案や法案の賛否での統一行動がより困難になるのは必至だ。

<自民「政権は安泰だ」>

加えて、高市首相への高い支持率も野党の戦略を難しくする。JNNが1ー2日に実施した世論調査で内閣支持率は82.0%に上った。発足時としては石破茂前内閣の51.6%を大きく上回り、2001年以降では小泉純一郎内閣の88.0%に次ぐ2番目に高い数字だ。

国会論戦は本来であれば政権の問題点をあらわにすることで野党側が有権者の支持を集める好機にもなる。相手が少数与党であればなおさらだ。しかし、現状では野党側の結束にこそ道筋が付けられているとは言えない。ある自民関係者はこうほくそ笑んだ。「トランプ米大統領との首脳会談も成功し、しばらくは高い支持率が続くだろう。野党がまとまらなければ政権は安泰だ」

(鬼原民幸 編集:橋本浩)

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2025年6月からロイターで記者をしています。それまでは朝日新聞で20年間、主に政治取材をしてきました。現在、マクロ経済の観点から日々の事象を読み解く「マクロスコープ」の取材チームに参加中。深い視点で読者のみなさまに有益な情報をお届けしながら、もちろんスクープも積極的に報じていきます。お互いをリスペクトするロイターの雰囲気が好き。趣味は子どもたち(男女の双子)と遊ぶことです。

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