FOMCが金利据え置き、理事2人が反対-景気判断は下方修正

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、関税やインフレを巡る不確実性に対応する上で政策金利は適切な水準にあるとの見解を示した。これを受け、市場では9月の利下げ期待が後退した。

  米連邦公開市場委員会(FOMC)は29、30両日に開催した定例会合で、主要政策金利を据え置くことを決定した。一方で米経済に対する認識を下方修正し、利下げにやや近づいている可能性が示唆された。

  パウエル氏は会合後の記者会見で「解決すべき不確実性は非常に多い」とし、「そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」と述べた。

  フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は4.25-4.5%。ウォラーFRB理事とボウマンFRB副議長が0.25ポイントの利下げを主張し、決定に反対票を投じた。

  パウエル氏の会見中、トレーダーの利下げ期待は後退。金利先物市場では、次回9月会合での利下げ確率はほぼ五分五分。この日の早い段階では約60%となっていた。金融市場では米国債が下落。S&P500種株価指数は政策決定の発表後しばらくは堅調を維持していたが、パウエル氏の会見中に下落に転じた。ドルは大幅高となり、円は149円台半ばに下落した。

  会合後に公表された声明では、「純輸出の変動が引き続きデータに影響を及ぼしているものの、最近の複数の指標は経済活動の伸びが今年上期に緩やかになったことを示唆する」と指摘。前回の声明では経済活動について、「堅調なペースで拡大を続けている」としていた。

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  パウエルFRB議長は政策決定後の記者会見で、声明で触れられた経済活動の伸び鈍化について、「主に個人消費の減速を反映している」と説明した。

  ただ9月会合で金利を引き下げるとのシグナルを送ることは避けた。

  パウエル氏は、「私を含め委員会のほぼ全員にとって、現在の経済活動は、抑制的な政策によって不適切に妨げられているようには見えない」とし、「9月については何の決定もしていない」と付け加えた。

  大半の政策当局者は、関税によるインフレへの影響を見極めるため利下げを急ぐべきではないと主張している。また幾人かは、労働市場の強さから辛抱強い姿勢を維持できるとの見解だ。

  トランプ米大統領からの強い利下げ圧力をよそに、FOMCは今回の会合でも据え置きを決定した。政策決定の発表直前、トランプ氏はFOMCが9月に利下げすると予想した上で、迅速に動いていないと改めて批判した。

  FOMCの声明は労働市場が「堅調」で、インフレは「幾分高止まりしている」との文言を維持した。

  一方で、景気見通しに関する「不確実性は低下した」との文言は削除された。

2人が反対

  FOMC会合での政策決定にFRB理事会メンバー2人が反対票を投じたのは1993年以来。

  ウォラー氏は3月、FRBのバランスシート縮小ペースを減速させる決定に反対。またボウマン副議長は2024年9月会合で0.25ポイント利下げを主張し、0.5ポイント利下げの決定に反対票を投じた。

  今回の会合ではウォラー、ボウマン両氏が反対票を投じたが、他の当局者らも両氏のスタンスとそう大きく違わない可能性がある。6月時点の金利見通しでは、2人の当局者が年内3回の利下げを予想、8人は2回を見込んでいた。

  FRBの報道官によれば、今回のFOMC会合ではクーグラー理事が個人的な事情により欠席した。

原題:Powell Cites Inflation Risk as Fed Holds Interest Rates Steady(抜粋)

(パウエル議長の発言や相場の動きを追加し、更新します)

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