静岡大開発の超小型衛星「蓬莱」宇宙へ放出 ”宇宙ゴミ”の解決へ実証実験
19日、静岡大学工学部が開発した「超小型衛星」が宇宙空間に放出されました。そのミッションは、いま問題となっている“「宇宙ごみ」の解決”です。 8月、アメリカから国際宇宙ステーションに向け打ち上げられたロケット。そこに搭載されていたのが静岡大学工学部が開発した超小型衛星「蓬莱(ほうらい)」です。無事に、宇宙ステーションに届けられたあと、19日金曜日、ついに、その「蓬莱」が宇宙空間へ放出されることになったのです。その瞬間を見届けようと静岡大学・浜松キャンパスには開発に携わった学生や地域住民ら80人が集まりました。 静岡大学が初めて「超小型衛星」を打ち上げたのは9年前。「こうのとり6号機」に搭載され、種子島宇宙センターから飛び立ちました。 その2年後には10cm四方の2つの立方体からなる超小型衛星「てんりゅう」を開発。これらを通して静岡大学が目指したのは、地上と宇宙ステーションをロープで結び、人や物資を運ぶ「宇宙エレベーター」という構想。その第一歩としてテザーと呼ばれる金属のロープを伸ばす実験を行いました。 そして、5機目の打ち上げとなった「蓬莱」はわずか10cm四方の立方体で重さは約1kg。 今回のミッションは、現役の衛星と衝突する危険があるロケットや衛星の残骸いわゆる「宇宙ごみ」の除去に向けた技術の確立です。 (静岡大学工学部 能見公博 教授) 「今までのノウハウをすべて統合して生かして、ぜひ成功させて、次の衛星では本当の宇宙ごみを捕まえるというところにつなげていければと思っています。」 「蓬莱」は当初、2020年度中に打ち上げられる予定でしたが、コロナ禍などの影響でたびたび延期に。開発に携わった学生も卒業していきましたが、ノウハウを引き継ぎながら改良を重ねてきました。 そしてついに迎えた放出の日。国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士の油井亀美也さんもエールを送ります。 (宇宙飛行士 油井亀美也さん) 「苦労したこと、仲間と協力して達成した、問題を解決した。さまざまな思い出などを思い出しながら期待しながら待っていてください。」 学生たちもかたずをのんで見守ります。そして!! 「3、2、1…」 「蓬莱」は無事宇宙空間へ旅立ちました。 (高校生) 「宇宙に私たちの思いが届くといいなと思いながら」 (中学生) 「今までは宇宙に全然興味がなかったけれど、初めて見ることができてすごく宇宙に興味がわきました」 「蓬莱」は今後約10mのロープを伸ばす実験などを行います。 段階的にロープの長さを伸ばし、将来的には「宇宙ごみ」となった衛星を大気圏まで降下させ、燃やす技術の確立につなげたい考えです。 (静岡大学工学部 松﨑優作さん) 「数年にわたって放出自体が延期されていたので、ようやく放出されたなという安堵があります。行きつくところは宇宙エレベーターになると思います。実証できるかについては難しいところではありますが、研究が進んでいくことによって将来的に宇宙エレベーターが実現する可能性はあると考えている。」 開発を主導した能見教授は「宇宙ごみ対策に応用していけるよう蓬莱のミッションに期待してほしい」と話しています。