トルコビザ免除停止求めた埼玉大野知事「豹変ではない」感謝状問題「どの方かわからない」 「移民」と日本人

インタビューに応じる大野元裕知事=27日、埼玉県庁(成田隼撮影)

埼玉県の大野元裕知事は27日、産経新聞のインタビューに応じ、トルコ国籍者の短期滞在の査証(ビザ)免除の一時停止を外務省へ要望した背景について「自治体にしわ寄せがきている」「住民の不安を改善したい」などと語った。この問題で大野氏が取材に応じるのは初めて。ビザ免除については、同県川口市に集住するトルコ国籍のクルド人らが、就労目的でビザ免除の趣旨を逸脱した目的外利用を行っていると指摘されている。主なやり取りは次の通り。

外務省へ「我慢強く」訴え

――8月4日、トルコ国籍者の短期滞在ビザ免除の一時停止を求める岩屋毅外相宛ての要望書を出した

「令和5年ごろから、難民認定申請を繰り返す外国人らにより治安が悪化していると、県民から不安の声が寄せられるようになった。難民申請を繰り返すのはトルコ国籍者が多いとの法務省のデータがある。国の政策の結果として特定の自治体に負担が押しつけられ、住民の不安が高まっている以上、入国時の対応が必要だ」

――要望から3週間、外務省からの反応は

「現時点ではない。われわれとしても我慢強く伝えている。6月には関東知事会からも要望している。複数の自治体が求めているわけであり、前向きに検討してほしい」

記者に「こうあるべき」ない

――SNS上では「大野知事が豹変した」と言われている

「特段のコメントはない。不安があることに行政として応えていくことが大前提だ。令和5年6月に私から県警に対し、県南部の治安措置を強化するよう強く求め、その年の秋からトルコ国籍者の摘発数が急増した。川口市北部に県内で22年ぶりの新設となる警察署を建設中だし、警察官の増員も国に働きかけている。県内の自主防犯活動団体の数も全国一だ」

「国籍や民族にかかわらず、犯罪などに厳しく対処すると述べてきた私の立場はまったく変わらず一貫して同じであり、そういった感想は私はほとんど見たことがないが、あったとしても当たっていない」

――大手メディアの記者は知事に「住民の不安」の根拠を求めた

「われわれが記者に対して何か『こうあるべき』との論を振りかざすようなものはない。ただ、県に不安が寄せられており、令和5年から継続的に対応してきたことを行政としてしっかり伝えることが、われわれの仕事だと考えている」

「一切写真を撮るな」との話になる

――7月8日にトルコへ強制送還されたクルド人男性に対し、県の基金へ寄付した感謝状を手渡したことの是非は

「シラコバト長寿社会福祉基金に寄付をいただき、県の要綱に従って適切に行われたものだ。当該企業の贈呈式の際、必ずしも企業の代表者がくる必要はないので、ご指摘の方はおそらく同席されて代わりに受け取った方だろう。あの場所には何人かいたので、どの方が受け取られるかはわからない」

――知事と男性のツーショット写真がネット上で拡散され、男性の事務所にも飾られていた。県が公表した贈呈式の写真もだが、不法滞在者の活動に利用され、結果的に知事がお墨つきを与えたのではないか

「法律違反には然るべき措置を行うべきだと考えている。一方で、どこで写真を撮られたのかわからないが、写真は各所で撮られており、その方々が活用するなということであれば、私は一切写真を撮るなという話になる気がする」

「いずれにしても、要綱に従ってもちろん不適切な、たとえば反社会的勢力などとの写真は言うまでもないが、写真を撮られてしまうことについては、なかなか難しい」

議論なき受け入れ、地方にしわ寄せ

――埼玉県は「多文化共生社会の実現」を掲げている。一般論として多文化共生のメリット、デメリットについて

「経済的な要請で外国人を受け入れるべきとの議論がある一方、受け入れに伴う社会的コストや弊害もある。どちらが正しいということではなく、グローバルな視点や共生への国民的議論が必要だ」

――鈴木馨祐法相の私的勉強会が外国人受け入れのあり方について、近く中間取りまとめを公表する

「いまは議論がないまま受け入れが進んでおり、地域の住民が不安に感じるなど自治体にしわ寄せがきている。本来は国会が優先して議論すべきことだ」

次の川口市長は人口減など対応を

――先の参院選で参政党が川口市で最多得票だった

「参政党は選挙技術的に非常に上手だったと考えている。埼玉選挙区で当選した大津力氏の地元や川口市で得票が多かった。参政党がどういう力の入れ方をしたのかなど、分析していないのでよくわからないが、一定程度、選挙技術が効いたのかなと考えている」

――来年には川口市長選が行われる(1月25日告示、2月1日投開票)

「われわれ政治家として、川口については今後、少子高齢化や人口減少、さらには激甚・頻発化する災害の中で、本当に曲がり角にきている。首長には未来への指針をしっかりと示せる人が選ばれるべきだ」

――それは外国人問題についてもか

「いまは大きな曲がり角にきている。いまやらないといけないことは、おそらく少子高齢化、人口減少、労働生産年齢人口の減少、激甚・頻発化する災害への対応だ。こうしたことに正面から応えていかねばならないと考えている」

岩屋外相あて大野知事が要望書 トルコビザ免除停止求め「国の対応を注視」

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