突然の「スーパーコア」誕生と消えたEコア――Apple M5 Pro/Maxが断行した「CPU大再編」を読み解く

 Appleは3月3日(米国太平洋時間)、「M5 Proチップ」「M5 Maxチップ」を搭載した新型MacBook Proを発表した。同時に、MacBook AirもM5チップを搭載するモデルに刷新されている。

 新製品については今後レビューを進めたいが、実は今回の発表に合わせて、Apple SiliconにおけるCPUコアの呼び方が変化している。従来は「高性能コア(パフォーマンス/Pコア)」と呼んでいたピーク性能重視のコアが、突如「スーパーコア」に改称されたのだ。一方、Pコアはなくなったわけではなく、M5 Pro/Maxチップには“新設計”の「Pコア」が搭載されている。

 要するに、M5チップファミリーでは高効率コア(Eコア)を含めてCPUコアが3種類になったということなのだが、このことを即座に整理できた人はどのくらいいただろうか?

 2025年10月にM5チップが発表された時点では、CPUコアはM1チップ以来の慣例通り「Pコア」「Eコア」の2種類だった。それが5カ月後の今、CPUコアは3種類に増え、Pコアは従来とは別設計のものとなった。その背景を探っていきたい。

M5チップファミリーにようやく「Pro」と「Max」が加わった

 混乱を避けるために、まず事実関係を整理しておこう。

 M1チップファミリーからM4チップファミリーまで、Apple SiliconのCPUコアは一貫して「Pコア」と「Eコア」の“2種類”で構成されてきた。Pコアは高いシングルスレッド性能を持つ大型コアで、Eコアは省電力動作に最適化された小型コアとなる。

 Armアーキテクチャにおける「big.LITTLE」構造、いわゆる「ヘテロジニアス」構成を踏襲したCPUコアとして設計されてきた。

初代の「M1チップ」以来、CPUコアは「Pコア」と「Eコア」の2種類で構成されてきた。このことは、ベースチップから拡張を行った「Pro」「Max」「Ultra」チップでも同様だった

 このコア名の法則は、2025年10月にベースチップとしてのM5チップが登場した際も適用された。M5チップのPコアは3基または4基、Eコアは6基という構成で、Pコアは「Geekbench 6」のシングルコアスコアでMac/PC向けCPUとしては最高値の「4263」を記録した。動作クロックは最大で4.61GHzだ。

 ところが、今回のM5 Pro/Maxチップの発表に伴い、AppleはCPUコアの呼称を“遡及的に”変更し、従来のPコアを「スーパーコア」に改めた。「MacBook Pro」の製品情報サイトを見てみると、既に発売済みのM5チップモデルのスペックにおいて、従来は「高性能コア」と書かれていた部分が「スーパーコア」に置き換わっている。

 M5チップ搭載のiPad ProやApple Vision Proの製品情報サイトには「高性能コア」の表記が残っているが、そのうち「スーパーコア」に改められるだろう。

M5チップのMacBook Proは、2025年10月に発表したモデルが継続販売される。しかし、スペック表で「高性能コア」だった部分を「スーパーコア」に置き換えている

 一方で、M5 Pro/Maxチップには、従来のPコアの代わりに新しい「Pコア」が搭載された。要するに、M5チップとM5 Pro/Maxチップで同じ名前なのに位置付けの異なるPコアが搭載されたということになる。

 整理すると、新しいM5チップファミリーのラインアップとCPUコアの組成は以下の通りとなる。

  • M5チップ
    • 9コア構成:スーパーコア(旧Pコア)3基+Eコア6基
    • 10コア構成:スーパーコア4基+Eコア6基
  • M5 Proチップ
    • 15コア構成:スーパーコア5基+新Pコア10基
    • 18コア構成:スーパーコア6基+新Pコア12基
  • M5 Maxチップ
    • 18コア構成:スーパーコア6基+新Pコア12基
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 話は元に戻るが、Appleはなぜ、混乱を招くことを承知で“わざわざ”CPUコアの名称変更に踏み切ったのか。

 実は、Apple Siliconの世代が更新されるたびにCPUコアに関してAppleの担当者に質問すると「実はEコアは効率が良い一方で、性能も十分に高いのになぁ」と、やや不満を感じさせるニュアンスを含む答えが返ってきていた。

 Eコアは“高効率”なCPUコアであって、それは「省電力」のみを意味するわけではない。高い効率で相当な処理性能を持っている。M5 Pro/MaxチップでEコアを廃止し、その後継に相当する新設計コアを「Pコア」としたのは、そんな想いが反映されたものなのかもしれない。

 もっとも、新しいPコアはEコアのリブランドや進化系ではない。むしろ、従来のPコアから“分岐”した新設計のCPUコアである。マルチスレッド性能ではM4 Proチップ比で最大30%、M1 Proチップ比では最大2.5倍とAppleが主張している数字は、スーパーコアの高性能化と、最大6基への増加だけでは説明が付かない。12基の新Pコアが実質的な戦力として、スコアを押し上げていると見た方がよい。

 新しいPコアを搭載し、Eコアが存在しないM5 Pro/Maxチップ搭載のMacBook Proのバッテリー駆動時間だが、引き続き「最大24時間」が維持されている。

 このように、詳細にみるとM5 Pro/Maxチップの中身は、Apple Silicon史上最も大きな構造変化を遂げている。スーパーコアという名前の派手さに目を奪われるより、どのような意図がそうした構造の変化をもたらしたのか。その意味を読み解くことの方が、はるかに有意義だろう。

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