大手商社5社の26年3月期、3社最終増益 伊藤忠商事は2期連続最高益

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大手商社5社の2026年3月期の業績予想が2日、出そろった。連結純利益は非資源事業に強い伊藤忠商事など3社が前期比で増えると見込む。資源価格の下落や円高、トランプ米政権の関税政策による世界景気の下振れなどが減益要因となるが、資源以外の事業の伸びでカバーする。環境変化のなかに事業機会を見いだす声も目立った。

伊藤忠は2日、26年3月期の純利益(国際会計基準)が前期比2%増の9000億円になる見通しだと発表した。2期連続で過去最高益を更新する。北米電力事業の増益や青果物大手ドールの黒字転換などを見込む。タイ財閥チャロン・ポカパン(CP)グループとの持ち合い解消に伴う株式売却益約880億円も寄与する。

トランプ関税が世界景気の後退をもたらすリスクとして、400億円分を減益要因に織り込んだ。新型コロナウイルスの影響で世界の経済活動が停滞した時期の収益低下幅を参考に見積もった。

伊藤忠の石井敬太社長は「自分たちが目指している投資を着実に実行して収益をあげる」と2期連続の最高益更新に意欲を示した。

丸紅は同日、26年3月期の純利益が1%増の5100億円になりそうだと発表した。食料や農業資材関連の事業などで増益を見込む。全体の純利益予想には世界経済の不透明さや資源市況悪化などによる不測の損失に備えた「バッファー」を300億円含めた。

大本晶之社長は同日の決算記者会見で「4月に米関税政策が公表された後で通常はやらない予算の作り直しをした。資源市況と為替は足元の水準でしっかり織り込んだ」と語った。

2日出そろった大手商社5社の今期純利益予想は、利益の創出源として非資源事業の比率が高い企業3社が増益見通しだ。前期に事業売却益などが膨らんでいた三菱商事は反動で26%減益、資源価格下落や円高による利益下押し影響を大きくみた三井物産は14%減益を予想する。

トランプ関税のリスクついて、各社は関税負担が増える直接的影響とそれ以外の間接的な影響に整理する。直接的影響については各社とも限定的とみている。米国内で完結する地産地消型ビジネスが多いというのが理由だ。

各社が警戒するのが世界景気の下押しリスクだ。三菱商事の中西勝也社長は2日の決算会見で「世界経済が冷え込むと全体的に影響が出る。どれくらいかは読み切れない」と語った。景気下押しや資源市況、為替などの変動可能性を想定し、利益予想に数百億円の損益悪化リスクを織り込む企業が目立った。

一方、トランプ関税がもたらすビジネスの好機に関する言及もあった。住友商事の上野真吾社長は「米国では関税影響を見越して石油ガスの掘削に使う油井管の市況が上がっており、業績の追い風になる」とみる。

企業のサプライチェーンの見直しも世界にトレーディングのネットワークを持つ商社にとって事業機会になる。三井物産の堀健一社長は「企業が原材料などの代替を検討する状況ではチャンスがある」と語る。

株安や円高は投資の好機になる。三菱商事の中西社長は「プライベートエクイティ(PE=未公開株)ファンドが投資を控える案件がポツポツ出ている。不安の裏返しで(投資の)機会が増える可能性はある」と話す。

自己資本利益率(ROE)の維持向上のため、決算と同時に自社株買いを公表する企業もあった。伊藤忠は今期に1700億円の自社株買いを予定し、うち1500億円分を5月7日から12月31日にかけて実施する。丸紅は2月に公表した最大300億円の自社株買いについて400億円を追加した。

伊藤忠の石井社長は「今期は純利益、時価総額、ROEで商社3冠達成を目指す」と強調した。

(森国司)

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