データセンター増設ラッシュで「東京1つ分の電力」が必要に 間に合わぬインフラ整備、東電の“奇策”は
データセンターの電力を賄う方法として、岡本氏が解の一つに挙げたのが熱だ。データセンターに注ぎ込まれた電力エネルギーは、その大半が「熱エネルギー」に替わる。最新のGPU(画像処理半導体)の発熱密度は、原子炉にある燃料棒の表面に近づいているという。 「半導体を冷やすのではなく、発熱体として活用すればよい。社会は熱エネルギーを必要としているのだから、その一部を半導体で賄えばよい」(岡本氏) 東京電力ホールディングスが開発した冷却技術「WaBiCo」(Watt Bit Cogeneration)は、ポンプを使わずに「熱が熱を運ぶ」技術だ。0.5気圧まで下げた水をGPU表面で沸騰させ、80度近い熱エネルギーとして回収する。2026年7月には東京都の「データセンター廃熱利用実装促進事業」として実証が始まった。
岡本氏は「人体」に着想を得たと述べる。脳の重量は体重の2%ほどだが、体全体が消費するエネルギーの約20%を使い、最も発熱する器官だ。人体になぞらえば、AIは社会全体の20%くらいのエネルギーを使うかもしれない。「だが、AIの電力消費はフレキシブルで、処理は時間も場所もずらせる。この柔軟性でグリッドを安定化できる」と岡本氏は語る。電力(ワット)と情報(ビット)を熱エネルギーでつなぎ、地域社会で循環・消費する「ワット・ビット連携」の構想だ。
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社会インフラ領域に強みを持つ日立製作所は、AIやデータセンターを巡る電力問題をどうみているのか。同社のアンドレアス・シーレンベック氏(執行役専務 エナジーセクターCEO兼パワーグリッドビジネスユニットCEO)は、日本の電力需要が減少から増加へ転じた「16年ぶりの転換点」について触れた。 「日本の電力需要は2020年まで下がり続けていたが、2021年から急に増え始めた。誰も予期していなかった」(シーレンベック氏) 需要をけん引するのは電化とAIだ。かつて50メガワットで「大規模」とされたデータセンターは、いまや3ギガワット級が現れた。これは、原子力発電所3基分に匹敵するという。 同氏が挙げた課題は3つ――「AIとデータセンター、電化の進展が押し上げる電力需要の急増」「必須要件になった脱炭素化」「インフラの老朽化と人材不足」だ。 「電力の供給を、より早く、よりクリーンにしたい。しかし、それには時間もコストもかかる。ここに矛盾がある」と同氏は語る。
この矛盾に対して、日立製作所は発電から需要者までをグループ全体で支える「One Hitachi」で応じる。AIで社会インフラを革新するサービス群「HMAX」のうち、エネルギー業向けに展開する「HMAX Energy」では、設備データをAIで分析し、変圧器や変電所の故障の兆候を検知して予防保全につなげる。同氏は「AIは課題であり、解決策でもある」と位置付けた。