日経平均7万円は通過点?キオクシア、東京エレクトロンなど生成AIが導く半導体産業の構造変化

 こうしたAI特需とメモリ市場の地殻変動による最大の恩恵を享受し、日本株をけん引するニュースターとして躍進しているのが、キオクシアホールディングス(285A)です。

 同社は2024年12月18日、日本の株式の新規公開(IPO)史上初となる承認前提出方式(S-1方式)を活用して上場を果たしました。連結の従業員数は約1万5,000人を誇る巨大メーカーであり、株価は上場初値の1,440円から驚異的な上昇を続け、2026年6月3日時点の終値では7万8,080円という超大物銘柄へと成長を遂げています。

 株価急騰を正当化しているのは、その業績の大きな伸長にあります。同社が2026年5月15日に発表した決算では、売上が前期比37.0%増の2兆3,376億2,800万円、営業利益が同92.7%増の8,703億6,900万円、純利益が同103.6%増の5,544億9,600万円という飛躍的な成長を達成しました。

<キオクシアHD業績>

【単位:円】 2025年3月期 2026年3月期 売上高 1兆7,064億 2兆3,376億 営業利益 4,517億 8,703億 純利益 2,723億 5,544億 出所:会社資料より楽天証券作成

 自己資本利益率(ROE)は51.9%に達し、設備投資も営業活動によるキャッシュフローで十分賄えています。生成AIの爆発によるデータセンター向け高付加価値ソリッドステートドライブ(SSD)の単価高騰や、PC・スマホ向け需要の底打ちがこれを強くけん引しました。

 さらに2027年3月期第1四半期の連結業績予想では、わずか3カ月間で売上収益1兆7,500億円(前四半期比74.5%増)、営業利益1兆2,980億円(同117.5%増)という目覚ましい業績を決算短信で提示しています。

 また、2026年5月15日には米国証券取引所への米国預託株式(ADS)の上場準備を開始したと発表しており、グローバル資本からの直接投資ルートを開拓しています。さらに2026年4月8日には台湾のDRAM大手ナンヤ・テクノロジーの株式を約782億円(約156億台湾ドル)で取得し、DRAM領域とのシナジー創出を模索する攻め経営を行っています。

 これほどの急成長企業であるにもかかわらず、2027年3月期の予想EPS(約7,687円)ベースで評価すると、予想株価収益率(PER)は10倍程度となり、割安感が意識されています。

ロジック半導体におけるラピダスの2nmパイロット検証とRUMSモデルの革新性

 次世代ロジック半導体の分野においては、日本政府による最大級の支援を背景に、北海道千歳市に製造拠点を置くラピダス(Rapidus)が驚異的なスピードで技術的進捗(しんちょく)を遂げています。

 2025年4月に研究製造拠点IIM-1で試作ラインを稼働開始させると、わずか3カ月後の2025年7月18日には、世界最先端の2nm GAAトランジスタの動作確認を、通常は6カ月を要するプロセス検証からわずか12日と18時間という短期間で完了させました。さらに2026年2月には2nmの設計用プロセス開発キットをリリースし、クリーンルームを稼働させています。

 ラピダスの最大の優位性は、設計支援から前工程・後工程までを垂直統合型で一貫して最適管理するRUMSモデルにあります。従来の半導体製造で主流である大量生産バッチ処理を廃し、ウェハー1枚ずつを精密に処理する枚葉式を徹底することで、ウェハーの製造リードタイムを従来の約120日から50日へと約60%も短縮することを目指しています。

 また、後工程においては、2024年12月にセイコーエプソン千歳事業所内に開設したRapidus Chiplet Solutions(RCS)において、2026年4月に本格的な研究開発がスタートしています。

 SEMICON Japan 2025で公開された世界初の600mm角ガラス基板を活用したインターポーザー試作の成功は、従来の300mmシリコンウェハー比で最大10倍のパッケージ製造効率を誇り、先端パッケージングにおける主導権獲得を強くアピールしています。

 政府は2030年度に向けて半導体・AI分野へ10兆円以上の支援を表明しており、ラピダスへの個別支援も累計約2.9兆円規模に及んでいます。民間からの資金調達も、2026年初頭にはソフトバンクグループ(9984)やソニーグループ(6758)といった最大の民間株主をはじめ、株主数は30社以上に拡大し1,600億円超を確保するまでに成長しています。

 これに伴い既存大手の再編も進んでおり、ルネサス エレクトロニクス(6723)は2026年初頭にタイミング事業をSiTime(SITM)に売却することを決定し、車載マイコン(MCU)などの自社コア領域に経営資源を集中させる、選択と集中を推し進めています。

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