米政府閉鎖、トランプ氏と民主党の対立は泥沼に-双方に政治的代償
米政府閉鎖から数時間が経過した。トランプ大統領と民主党の対立は、全ての関係者にとって早くも政治的な泥沼の様相を呈している。
トランプ氏は「狂気の」民主党に閉鎖の責任を押しつけ、政治的な代償を背負わせようとしている。一方で大統領自身も、混乱を招いた自らの指導力に対する反発を受ける可能性がある。
民主党は有権者に対し、トランプ氏やその政策に毅然と立ち向かう気概を示そうと躍起になっている。ただ、トランプ氏主導の環境の中で団結を維持し、自分たちのメッセージを浸透させる難しさにも直面している。
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駆け引き
今回の予算を巡る争いの核心は政治にある。両党が来年の中間選挙を前に、優先課題を打ち出そうとしているからだ。ただ、その影響はもっと早く表れる可能性がある。トランプ政権は、従来の一時自宅待機を超えた大規模な政府職員解雇の計画を練り、連邦官僚制を大幅に縮小するという目標に向かっている。
今回の政府閉鎖は、両党の立場の逆転も意味する。過去には政府閉鎖をテコに政策での譲歩を引き出そうとした共和党が、今は短期的な予算延長を無条件で求めている。政策要求を突き付けているのは民主党の側だ。
民主党幹部のシューマー上院院内総務とジェフリーズ下院院内総務は、今回の争いを医療保険を巡る対立として位置づけ、党内をこの戦略のもとにまとめようとしている。共和党は、審議を終えて予算案を可決するには、民主党からわずか8票を得ればいい。閉鎖開始前の9月30日の採決では、すでに民主党議員3人が造反した。
トランプ政権1期目に仕えたマーク・ショート氏は、閉鎖を引き起こしているのは民主党と主張する一方で、トランプ氏が注意を欠けば政治的優位を失いかねないと警告する。同氏は「私は民主党が優位に立っていると思う。ただ問題は、トランプ氏が事態を進めさせるのか、それとも自ら介入してしまうのかだ」と述べた。
7年ぶり
トランプ氏の大統領1期目以来初となる政府閉鎖は、ホワイトハウスの基準から見ても、米国政府の激動ぶりを象徴するものだ。トランプ氏は関税の脅しを一層強め、司法省に長年の政敵を起訴するよう圧力をかけ、さらに国連や多数の軍指導者を前にした場で暗く、不満に満ちた演説を行った。
民主党のストラテジスト、カレン・フィニー氏は、多くの有権者がトランプ氏とその政策への反発を望んでいると指摘する。同氏は「エプスタイン文書、関税、インフレや物価、どの問題でもトランプ氏は支持を失っている。民主党には、今回の閉鎖を、大統領の誤った指導力を物語るものの一部にするチャンスがある」と語った。
民主党指導部が予算案で最も求めているのは、年末で期限切れとなるオバマケアの補助金延長と、今年初めに実施されたメディケイド削減の撤回だ。また、議会が承認した資金の執行を大統領が拒否する権限を制限することも求めている。
ただ、こうした幅広い課題は、簡単には政治的なスローガンに変換できない。フィニー氏は 「民主党にとって最大のリスクは、団結を保てず、実際に何が起きているかについて一貫したメッセージや批判を示せないことだ」と指摘した。
ホワイトハウスは、今回の政府閉鎖を「米国民がわずか1年前の選挙で否決した民主党の政策」の押し付けと位置づける考えを示した。ホワイトハウスのジャクソン報道官は「過激な民主党は、不法移民への無償医療を含む約1.5兆ドル規模の要求リストのために政府を閉鎖している」と強調した。
世論
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)とシエナ大学が9月30日に発表した世論調査によると、米国の登録有権者の26%が、政府閉鎖の責任を共和党に、19%が民主党にあると回答した。一方、33%は双方に同じ責任があると答え、全関係者にリスクがあることが示唆された。
経済的な影響が明確になれば、国民の不満はさらに高まりそうだ。30日の株式市場は揺れ動き、投資家は経済データ発表の遅延を懸念した。一部の専門家は、データ不足が今後の追加利下げ見通しを不透明にする恐れがあるとも警告した。
トランプ氏の1期目でも、政府閉鎖は2度起きた。最も有名なのは2018年末、大統領が国境の壁建設費を要求して予算を止めたときだ。5週間後、支持率が急落し、給与未払いと行政サービス遅延への圧力が高まる中、同氏は成果をほぼ得られないまま引き下がった。
世論調査で、トランプ氏の支持率は低迷を続けている。NYTとシエナ大の調査では、43%がトランプ氏の職務を支持し、54%が不支持と回答した。
原題:Trump, Democrats Grapple for Edge as Government Shutdown Begins(抜粋)
— 取材協力 Derek Wallbank