「自分が感動すれば、届く」 関西吹奏楽コンクール中学生Aレビュー
関西吹奏楽コンクール(関西吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)は29日、中学生Aの部が開かれた。近畿2府4県の代表28団体が、豊かなハーモニーをフェニーチェ堺のホールいっぱいに響かせた。
コンクールは、西宮市立上甲子園中(兵庫)が奏でる課題曲Ⅲのマーチの奥行きのあるサウンドで幕を開けた。
自由曲の「彩雲の螺旋(らせん)」(中橋愛生作曲)でも、冒頭から厳かで色彩豊かな和音が美しく響いた。ソロを奏でたソプラノサックスの音色と表現力が際立つ演奏で、銀賞を受けた。
西宮市立上甲子園=2026年8月29日午前10時11分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影吹田市立山田中(大阪)も銀賞。喜歌劇「メリー・ウィドウ」(レハール作曲)を全員で楽しげにうたい上げた。トランペットの発音が特に素晴らしく、全員で深く息を入れた音がつくり出す一体感のあるサウンドも魅力的。鍵盤打楽器の旋律に合わせて奏でるクラリネットやコントラバスの、一音一音に神経を研ぎ澄ませて響かせるさまも見事だった。
部長で打楽器の濱田夏希さん(3年)は、舞台上で笑顔を絶やさなかった。「一緒に練習してきた仲間と先生へ、思いを伝える演奏をしたい」と、演奏に臨んだ。
クラリネットを吹いたコンサートマスターの住吉倖弥さん(3年)は「関西大会を目の前にして、自信が無くなってしまったときもあったのですが、今までつくってきた音楽を忘れずに演奏しようと練習してきました。今日は一番思いがこもった演奏ができました」と振り返った。
吹田市立山田=2026年8月29日午前10時41分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影立命館中(京都)は21人で、自由曲で「ゾウの足」(林大地作曲)を演奏。銀賞を受けた。比較的少人数で演奏できる曲だが、厚みのあるサウンドと、一人ひとりが発音やニュアンスをきちんとそろえることで、チョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故を題材とした作品が訴えるメッセージに深く迫った。
豊かな響きと迫力を持ったテューバのソロが出色の出来。打楽器群の高いアンサンブル力も光った。
立命館=2026年8月29日午後0時33分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影銀賞を受けた大阪市立城陽中は自由曲「ブラック・ゴールド」(ドゥルルイエル作曲)での中低音の厚みのある響きが際立っていた。特にトロンボーンやホルンが、和声進行を美しいハーモニーで奏でた。
大阪市立城陽=2026年8月29日午後1時16分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影関西創価中(大阪)は、無理なく自然に響くサウンドが魅力的。自由曲「第六の幸福をもたらす宿」(アーノルド作曲)のゆっくりとした部分で、金管低音の和音が解決するところの美しい響きが光った。ホルンが高音で奏でるメロディーも立体的に響いた。有名な行進曲のメロディーも明るくさわやかな音色で演奏し、銀賞を受けた。
関西創価=2026年8月29日午後1時54分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影関西大会初出場の長岡京市立長岡第三中(京都)は、自由曲「ラ・レーヌ・ヴィクトリア」(樽屋雅徳作曲)を演奏。銅賞を受けた。フルートやサックスが高いアンサンブル力でフレーズを奏で、一つの音楽を織り上げていく。民俗的な旋律を奏でるクラリネットや、アルトサックスソロの豊かな表現力も光った。
アルトサックスのソロを演奏した副部長の津崎湖都実さん(3年)は「大事なパートとしての責任を持ちつつ、全力を出し切れた。悔いの残るところもあるけど、ここまで来られたのはすごくうれしいし、いい経験になった」と充実した表情を浮かべた。
副部長でフルートの村山葉菜さん(3年)は「京都府大会と会場の違いがありすぎて、緊張した。演奏前の拍手の大きさから圧倒された」と驚いた様子。それでも、フルートの舞曲の旋律を「楽しい踊りのイメージをパートで統一して、弾むような感じでできた。『終わっちゃったんだな』と思ったけど、達成感もあるし、この経験を将来にも生かしたい」と語った。
長岡京市立長岡三=2026年8月29日午後3時37分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影大阪市立鯰江中は、金賞に輝いた。課題曲Ⅰの叙情的なメロディーを、密度の濃い音でたっぷりと奏でた。大阪府大会以降、冒頭の部分の練習を重ねてきた。副部長でトランペットの竹内葵さん(3年)は「入りのタイミングや音程をそろえて、良くなったと思います」。
部長の古野大雅さん(3年)は、アルトサックスを吹きながら「盛り上がるところがホール全体に響き渡ってよい音色になっている」と感じたという。副部長でバリトンサックスの東瑞乃さん(3年)も「メロディーと低音のテンポがずれていた所や音量バランスが直って、府大会よりもいい演奏ができたと思います」と振り返った。
自由曲は、ラベルのピアノ曲「クープランの墓」の吹奏楽編曲版に挑戦。トランペットやトロンボーンが全音音階的に和音をスムーズに移行させ、繰り返されるフレーズごとの変化で微妙な「陰影」を表現する見事な演奏。速いテンポで同音反復するところも音の粒をそろえつつ、内声のクラリネットが流れるように奏でた。
大阪市立鯰江=2026年8月29日午後4時18分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影西宮市立瓦木中(兵庫)は、自由曲「ダフニスとクロエ」(ラベル作曲)で、木管低音やテューバがわき上がるように展開していき、夜明けの美しさを表現。全員で上り詰めたところでふわりと浮かぶように響く和音も出色の出来。「全員の踊り」もクラリネットを中心に華麗に吹ききって、金賞に輝いた。
西宮市立瓦木=2026年8月29日午後4時32分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影人気曲だが難曲の「ローマの祭り」(レスピーギ作曲)に挑戦した尼崎市立小園中(兵庫)は、多くの団体が選ぶカットではなく「十月祭」から演奏。イタリアの歌の「間合い」を意識した旋律に、テューバやコントラバスの弱音が美しく寄り添った。喧噪(けんそう)の中で繰り広げられる「主顕祭」は、荒れ狂うことなく上質な音で奏でた。トランペットやトロンボーンのソロも見事な演奏で、金賞に輝いた。
部長でクラリネットの尾本虹心さん(3年)は「気持ちは燃えるけど、吹くのは冷静に、というのを意識した。一番いい演奏だったかは分からないけど、笑顔を忘れず楽しんでできました」と話した。
副部長でティンパニの内田陽菜乃さん(3年)も「打楽器パートでずっと笑顔でいよう、と話していて、リラックスしてできた」と笑顔。副部長でホルンの川元千尋さん(3年)は「音が出なかったり、指が回らなかったりだった最初と比べて成長できた。完成よりも完璧を求めてきた」と満足げに語った。
尼崎市立小園=2026年8月29日午後5時41分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影香芝せいかキッズ・ジュニアバンド(奈良)は、香芝市の学校法人が2024年に作った地域バンド。小中学生がメンバーで、この日の舞台に上がった45人のうち小学生が21人だった。
部長でトランペットの中尾紗季さん(中学3年)は「演奏の時の指揮者の先生の表情やみんなの雰囲気に励まされて、高い音が出せました。奈良県大会での課題だったミスや音程も良くなって、演奏できました」と笑顔を見せた。結果は銀賞。昨年、コンクール初出場で関西大会銅賞だったが、一歩ステップアップできた。
香芝せいかキッズ・ジュニアバンド=2026年8月29日午後6時44分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影姫路市立山陽中(兵庫)は、自由曲「ローマの祭り」(レスピーギ作曲)の冒頭、舞台の前方に出てきたバンダの均整の取れた音質が美しかった。バンド全体が重厚で立体的なサウンドで、終盤の熱狂的なリズムと細かな動きが一致した演奏だった。金賞に輝いた。
姫路市立山陽=2026年8月29日午後7時0分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影金賞を受賞した橿原市立畝傍中(奈良)は、課題曲Ⅰをたっぷりとうたい上げたかと思うと、自由曲「プロミシング・スカイ」(スミス作曲)で、トランペットがジャズトランペッターさながらにソロを奏でた。ニューオーリンズを舞台にした曲で、トロンボーンやテューバが入って、コンクールをスイングジャズのステージに変えた。クラリネットも体でビートに乗って、会場を盛り上げる。客席を圧倒するジャズステージに、拍手が湧き起こった。
橿原市立畝傍=2026年8月29日午後7時10分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影◇
関西代表に選ばれた4団体は、いずれも個性あふれる名演で客席をうならせた。
加古川市立中部・浜の宮中
加古川市立中部・浜の宮中(兵庫)は、6大会連続で関西代表に選ばれた。第2次大戦時に多くのユダヤ難民を救った外交官・杉原千畝を描いた「ペルソナ・ノン・グラータ」(樽屋雅徳作曲)を演奏。木管楽器の各パートが高いアンサンブル力で、速いパッセージを正確な動きでつなぎ、金管楽器がむらのない響きで美しく支えた。
中部中の部長でトロンボーンの永光理乃さん(3年)は「気持ちを高めて吹いてくれているメロディーをしっかり支えようと思って吹きました」。浜の宮中の部長でピッコロの足立咲葵(さき)さん(3年)は「杉原千畝が、生死を分けるはんこを押す時の気持ちなど、戦争を経験していない私たちが分からないことがたくさんあったので、動画を見て学習した。速い部分とおだやかできれいな部分とのコントラストをしっかりつけて演奏できた」と語った。
加古川市立中部・浜の宮=2026年8月29日午前10時47分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 加古川市立中部・浜の宮=2026年8月29日午前10時49分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影豊中市立十一中(大阪)は、7年ぶりに関西代表に返り咲いた。課題曲Ⅲのマーチを、密度の高い音で演奏。テーマが再現される部分での対旋律との対話がくっきりと浮かぶ、バランスの取れた演奏だった。
自由曲には、一昨年に関西大会で金賞を受賞したときと同じ「紺碧(こんぺき)の波濤(はとう)」(長生淳作曲)を選んだ。ファゴットの表情豊かなうたから、ミュート付きトランペットやトロンボーンの豊かな響きで客席を魅了した。息の深く入ったクラリネットが奏でるフレーズが打ち寄せる波のように重なり、ピークに上り詰めるドラマチックな演奏だった。
部長でアルトサックスの泉幸佑さん(3年)は「自分に感動できる演奏をすれば、聞いている人にも届く」と思って奏でたといい、「満足いく演奏ができました」と笑顔を見せた。
豊中市立十一=2026年8月29日午後1時33分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 豊中市立十一=2026年8月29日午後1時39分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影課題曲Ⅳの冒頭から、度肝を抜く重々しいサウンドで客席を引き込んだのは、生駒市立生駒中(奈良)。奥深い課題曲Ⅳを、フレーズを中空に漂わせるように吹いたり、伸ばした音の表情を変えたりすることで、ドラマチックに解釈した名演を聴かせた。
自由曲の「交響曲第5番ニ短調」(ショスタコービチ作曲)も、冒頭の主題からインパクト十分。シンフォニックな響きで、全てのパートが楽器を十分に鳴らす文字通り「圧倒的な」演奏。演奏が終わり一息置いて、圧倒された客席から割れんばかりの拍手が起きた。
部長でクラリネットの中垣樹さん(3年)は「聴いたことない曲で最初は分からなかったけど、奥が深い音楽だった」。社会科教諭でもある顧問の大西潤之さんから、ロシア革命とショスタコービチが生きた時代について話を聞いたという。中垣さんは「華やかな場面もあるけれど、その中でショスタコービチが書きたかったことを伝えられたらいいなと思って演奏した」と話した。
全国大会に向けて、副部長でトロンボーンの池内那菜さん(3年)は「生駒中にしか出せない音で、会場を沸かせたい」、もう一人の部長でユーフォニアムの永松風香さん(3年)は「曲のことをさらに理解して、関西大会よりももっといい演奏がしたい」と意気込んだ。
生駒市立生駒=2026年8月29日午後2時10分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影大阪市立堀江中も、関西代表に選ばれた。課題曲Ⅳをシンフォニックで層の厚い響きで奏で、和音を閉じるところまで神経の行き届く、丁寧な演奏だった。自由曲の「アンティフォナーレ」(ネリベル作曲)でも、倍音を含んだ豊かな音で、和音の重なりや動きを美しく表現。音響のレイヤーを重ねて全体の音楽の陰影をつけていくような、繊細な表現が光った。
大阪市立堀江=2026年8月29日午後3時3分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 大阪市立堀江=2026年8月29日午後3時3分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 精華町立精華西=2026年8月29日午前10時17分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 滋賀県立守山=2026年8月29日午前11時5分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 西宮市立塩瀬=2026年8月29日午前11時19分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 守山市立守山北=2026年8月29日午前11時37分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 香芝 Central East Wind Ensemble=2026年8月29日午後0時53分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 和歌山市立紀伊=2026年8月29日午後1時12分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 大阪市立茨田北=2026年8月29日午後3時17分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 大阪市立梅香=2026年8月29日午後3時46分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 和歌山市立西和=2026年8月29日午後4時2分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 立命館守山=2026年8月29日午後5時48分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 神戸市立本庄=2026年8月29日午後6時13分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影 西宮市立甲陵=2026年8月29日午後6時19分、フェニーチェ堺、高野良輔撮影