なぜ日本の風力産業は消えたのか? 欧州市場から覇権を奪った中国の戦略

──再生可能エネルギーは非常に期待されると、ここ数十年言われ続けてきました。しかしこれも、石油や天然ガスを代替するほどには日本では大きくなりきれませんでした。これはなぜでしょうか。 吉井 最初に再生可能エネルギーを育てたのは欧州です。風力や太陽光、特に風力の世界的なメーカーを欧州が育てたのですが、途中から欧州ではなく中国の風力メーカーが強くなってきました。それはレアアースが部材として使われているからです。中国は非常に戦略的にやっている国で、欧州が育てた市場でどうやって製造の覇権を握るかということを考えて、欧州から取っていったのです。 2008年や2010年頃でしょうか、私は風力発電会社の買収担当でした。欧州の市場にならい、日本の市場でも風力発電を育てましょうということで懸命にやっていたのです。日本の東京電力も、世界的に大きかった風力発電会社を買収して「じゃあ日本の風力産業を育てましょう」と言っていたのですが、結果として育たなかった。メーカーもみんな撤退してしまい、日本でいま、作っているところはありません。 電力会社と電機メーカーは相互補完的な関係にあります。電力会社が需要を作り、そこに適切な機材を作って供給するのが電機メーカーで、これは米国も欧州も世界共通の原則なのです。日本の場合は、東京電力が風力発電会社を買収して日本の風力産業を育てましょうと言ったのですが、なぜ育たなかったのか。 なぜかは私にも不思議です。私はその後、風力発電から離れて原子力に行きましたが、当然風力は大きくなっているものと思っていました。ふと何年か後に風力を担当している人に話を聞いたら「いや、それほど育っていない」と。そうして結局、東京電力も風力発電会社を売ってしまいました。 ──太陽光発電についてもさまざまな問題が言われていますが、総合的にどう判断すべきでしょうか。 吉井 やはり面積ですね。太陽光は発電効率が高くないため、たくさん面積を必要とします。たとえば田舎の景観がおかしくなってしまうなど、さまざまな問題が起きています。 ただ、実は太陽光発電の効率は10年で倍ぐらいになっています。技術がきちんと進歩していて、かつ景観と共存できるような規制をいま作っているようですから、制度が整備されてくればきちんとした発電アセットだということです。 ──将来的に太陽光などは可能性があるけれど、日本ではまだ大きく成長しきっていないということですね。 吉井 日本では大きくなっていません。デンマークなどは風力が6割以上の比率です。ヒースロー空港に着陸するときに飛行機から下を見ていると風力発電ばかりで、英国の東の海上でも回っています。日本はまだそこまで行っていません。 ──日本のエネルギー状況がこれほど脆弱だとわかっていたのに、なぜ改善できなかったのでしょうか。これでも改善できたほうなのか、まだできるのか、どうでしょうか。 吉井 もう少しできたと思います。端的に言ってなぜそれができなかったかというと、仲が悪いからです。 原子力をやっている人は再生可能エネルギーの悪口ばかり言っているし、再生可能エネルギーをやっている人は原子力の悪口ばかり言っている。天然ガス(LNG)をやっている人は我関せずで自分の道に行く。だからみんな協力しないのです。 ──それは民間の企業レベルでそうなっているのでしょうか。それとも政府がもっと指導できたということでしょうか。 吉井 民間の部門ごと、要するに風力発電事業部や原子力事業部とか本部の縦割りが悪いのです。本当であれば役所が「まあまあみんな仲良くしましょう」と言うのですが、役所も縦割りなのです。役所の人に聞くと「官僚という立場だと、特定の電源を応援できないのです」と言い、それぞれ並行している政策が出てきます。「これとこれを組み合わせて新しい価値を作りましょう」といったものは出てこないですね。 ──総合的な戦略を持てずにそのまま突っ込んでいってしまっている気がします。 吉井 歴史に詳しい人は、太平洋戦争の前をイメージしやすいかと思いますが、海軍と陸軍の仲が悪い、陸軍のなかでも仲が悪いという、そのような感じです。仲良くしてほしいと主張する人は、逆に双方から嫌われてしまうような、きわめて難しい状況なのです。

COURRiER Japon

クーリエ・ジャポン
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************

関連記事: