「超人を作りたい」。ベルギー15歳量子物理学で博士号取得、企業から早期オファーも(Forbes JAPAN)
多くの10代がまだ中等教育を受けている年齢で、量子物理学の博士号を取得した少年がいる。ベルギー出身のローラン・シモンズは、15歳という若さでアントワープ大学の博士課程を修了した。 Earth.comによると、本人はこの快挙を「ゴールではなく、もっと大きな目標への通過点」にすぎないと考えており、将来は人間の寿命や健康を生物学的に向上させることを目指しているという。 大学の記録によれば、シモンズは2025年11月17日に博士論文の公開審査を行った。ベルギーのメディアは、彼を「国内で史上最年少の博士号取得者」と報じており、その学歴はまさに異例だ。8歳で高校を修了し、通常3年かかる学士課程をわずか1年半で終えるなど、本来なら数十年かかる節目を驚くべきスピードで通過してきた。 博士論文のテーマは「ボース・ポーラロン」と呼ばれるもので、量子多体系物理学という非常に専門的な分野に属する。簡単に言えば、超流動体や超固体といった特殊な量子環境の中で、1つの粒子がどのように振る舞うかを研究したものだ。 とくに「超固体」は、結晶のような固い構造を持ちながら、同時に超流動のように摩擦なく流れるという、非常に奇妙な状態の物質である。これはもはや理論上の存在ではなく、極低温の原子を使った実験によって、条件次第で実在することが確認されている。 シモンズの論文では、「変分法」と呼ばれる数学的手法が用いられている。これは、厳密な解を求めるのが難しい極めて複雑な系でも、現実的な近似モデルを作ることができる方法だ。さらに彼は、光の吸収を使って超固体内部の粒子の動きを観測する方法も提案しており、理論的な予測を実験で検証する道筋を示した。 一見抽象的にもみえる研究だが、量子物質に対する理解を深め、理論を洗練させる上で重要な役割を果たし得るという。 とはいえ、シモンズ本人は「物理学が最終目的ではない」と語っている。注目を集めるIT企業や先端技術分野に進むよりも、医療に注力したいという考えを公にしており、両親も米国や中国の企業からの早期オファーを断ったと報じられている。話題性や短期的な利益よりも、体系的な教育と倫理的な管理を重視した判断だという。 博士号取得後まもなく、シモンズは再びミュンヘンに戻り、今度は医科学分野で2つ目の博士課程に進んだ。専門は人工知能(AI)で、物理学で培った厳密な思考法やデータ解析を、病気の早期発見や老化といった生物学的課題に応用することを目指している。 彼が口にする「超人を作る」という表現も、SF的な意味ではなく、健康寿命を延ばし、生活の質を高めることを指しているという。 実際には、彼がこれから進む道は決して自由奔放ではない。医療分野の進歩には、長年にわたる臨床試験や厳密な安全確認、多分野の研究者による協力が不可欠だ。AIもまた、偏りや過剰適合がないか慎重に検証する必要があり、生物は黒板上の数式のように単純には振る舞わない。 「史上最年少の博士号取得者」といった肩書きは、国ごとに教育制度が異なるため単純に比較するのは難しい。それでもこのケースでは、正式な博士論文審査の記録があり、研究成果は学術誌『Physical Review X』に査読付き論文として掲載されている点が重要だ。 現時点でシモンズの物語は、不老不死のような神話というより、突出したスピード、強い集中力、そして長期的なビジョンの組み合わせを示している。彼が成功するかどうかは、どれだけ若く学位を取得したかではなく、理論が実際の医療や人間の健康に、どれほど慎重かつ確実に結びつくかにかかっている。 なお、この研究成果は学術誌Physical Review Xに掲載されている。 ※本稿は英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」の記事からの翻訳転載である。
Forbes JAPAN 編集部