ケインズが考えた「仕事の序列」3番が実業家で2番が科学者…では意外な1番は?(ダイヤモンド・オンライン)
1936年、「金利操作と財政出動によって景気をコントロールできる」と書いたケインズ。その言葉は、21世紀のいまも為政者の心をつかみ続けている。だが、経済学者の水野和夫が注目するのは、ケインズの1930年論文のほうだ。そこでは「100年後にゼロ金利社会がやってくる」という。そしてそれは、明日の心配が要らない豊かな社会なのだとか。幸福を考える宗教学者・島田裕巳との対談をお届けする。※本稿は、水野和夫、島田裕巳『世界経済史講義』(ちくま新書、筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● ケインズが説く「人間の序列」 3番は実業家、1番は? 島田 ケインズの『一般理論』(編集部注/『雇用・利子および貨幣の一般理論』)はよくわからない本で、私も読もうと思って読めなかったんですが、ケインズは基本的にどういう考え方をしていた人ですか。 水野 ある先生にケインズの『一般理論』は日本語が難しいですよねと言ったら、その先生は「いや、英語で読むともっとわからない」と。ケインズは英文も悪文だということです。 島田 わかりやすい英語で書かれていれば、どなたかがちゃんと日本語にできると思うんですよね。ケインズってどういう人だったんですか。 水野 マルクスは周りに、エンゲルスの他にも支援者がいました。ケインズはもっとすごくて、当時のケンブリッジの倫理学の先生とか、芸術の先生とかいろんな人が集まる「ブルームズベリー・グループ」に参加して議論しています。 あらゆるジャンルの本、数学も駆使して確率論まで書いています。大蔵省の試験で2番だったそうです(編集部注/高等文官試験で1位の合格者が大蔵省入りしたため、2位だったケインズはインド省に配属された)。ケインズ自身は芸術家になりたかったのですが、なれなかった。 ケインズの考え方によると、人間の仕事は序列的に分かれており、クリエイティブな仕事、つまり芸術家が最上位に位置します。次に科学者、たとえばニュートンのような人物がいます。 芸術家は直感を通じて善に至るとされます。道徳的な善、つまり良い行いをすることに至るというのです。しかし、自然法則を発見する科学者は、必ずしも良き行いに結びつくわけではありません。原子爆弾を作ったりしますから。そして3番目が実業家で、最も下位に位置します。 労働者はどうなるんだと思いますけど(笑)。