健康診断で見逃された心房細動をApple Watchが発見できた5つの理由
Apple Watchの心電図機能が、51歳のエンジニア・鈴木政博さんの命を救いました。
運動記録を取るために購入したApple Watchが、健康診断でも見つからなかった心房細動という不整脈を早期発見し、迅速な治療につながったのです。なぜApple Watchが健康診断でも見つからない病気を発見できたのか、その5つの理由を詳しく解説します。
杏林大学医学部循環器内科学教室診療科長の副島京子先生によると、心房細動は不整脈の一種で心拍が不規則になっている状態を指します。65歳未満の約2%、65歳以上の9%以上が心房細動の症状を持つとされていますが、症状が出て病院で診断される人はごく一部で、大半の患者は自覚症状がないまま見過ごされているといいます。
理由1:24時間連続で心拍を監視している
鈴木さんは元々金属アレルギーで腕時計をあまりしないタイプでした。しかし2022年、サイクリング記録を取りたいという思いからApple Watch SEを購入しました。
Apple Watchは装着している間、常に心拍数を記録し続けます。健康診断の心電図は数十秒程度の短時間の検査ですが、Apple Watchは24時間体制で異常を監視しているため、たまにしか出ない不整脈も捉えることができるのです。
理由2:異常を検知すると即座に通知する
運命の日は2023年6月20日。自宅でテレワーク中に、普段とは明らかに違う振動と通知音でApple Watchが異常を知らせてきました。メッセージには「ぜひ医師に相談してください」という強い言葉が添えられており、鈴木さんは「『ぜひ』というのは相当強い言葉だな」と感じ、すぐに奥さんと相談して循環器内科を受診することを決めました。
この通知機能により、異常が起きたその場で気づくことができ、早期発見につながったのです。
理由3:症状がある時に心電図を記録できる
病院の心電図で心房細動であることが確定診断されましたが、危険な要因がなかったため一旦様子を見ることになりました。しかし心配になった鈴木さんは、心電図アプリが使えるApple Watch Series 8をその場で購入しました。
そして2カ月後、サイクリング中に左胸がドキドキしていることに気づいた鈴木さん。Apple Watchを見ると心拍数が198という異常な数値を示していました。すぐに心電図アプリを起動して記録したところ、心房細動と表示されました。
症状がある時にその場で心電図を取れることで、医師への正確な情報提供が可能になったのです。
理由4:医師に見せられる記録データを作成できる
週末の出来事だったため、月曜朝一でクリニックを受診。Apple Watchで記録した3回分の心電図をPDFで印刷して医師に見せたところ、病院の心電図でも心房細動が確認され、手術が決定しました。
副島医師は「自分で心電図を取れる、というのが1番の評価ポイント」と語ります。患者がApple Watchで記録したデータを医師に見せることで、医師はより具体的なアドバイスを提供できるようになります。
理由5:他社製品より高い精度を実現している
Apple Watchの心電図機能は、精度が高く綺麗に波形が取れるという点で他社製品より優れているとされています。副島医師は「脈拍と心電図は違います。正確性はAppleは他と比べようがない」と評価しています。
Apple Watchの心電図機能では、正常な心拍、心房細動、心拍数の異常、判定不能の4つの結果を正確に判定できます。
医師が語る早期発見の重要性
10月に心臓カテーテルアブレーション手術を受け、手術は成功。鈴木さんは「早期で見つかって逆にラッキーだった」と振り返ります。注目すべきは、健康診断では全く問題がなく、自覚症状もなかったという点です。
副島医師は、Apple Watchの医療現場での有用性について高く評価しています。「鈴木さんのような段階で見つかるのはすごくラッキー。心電図は長ければ長いほうがよく、長時間記録できていることが重要」と説明します。
年に数回しか不整脈が出ない人もいる中で、簡単な腕時計で計測できるのは画期的だといいます。
包括的な健康管理への可能性
Apple Watchは心臓の機能だけでなく、睡眠時無呼吸、運動量、酸素飽和度などを記録できます。副島医師は「どれぐらいの運動量をしているのか見える化され、瞑想機能も自律神経を整えるために重要」と指摘します。
夜間の装着や睡眠状況の把握も心房細動の早期発見において重要で、継続的な記録が可能なApple Watchの価値は大きいといえます。
健康への意識を変える存在
鈴木さんは現在、Apple Watchの価値を実感しています。「サイクリングの記録を取りたいと思って使い始めましたが、病気が見つかって良かった。転倒検知機能も理解したし、自分が理解できない身体の変化に気づいてくれる。昔は腕時計は嫌いでしたが、今は欠かせない存在」と語ります。
副島医師も、Apple Watchをうまく活用することで心房細動の早期発見・予防が可能になると結論付けています。「自分の健康に対して興味が湧くということは良いこと」として、健康管理ツールとしてのApple Watchの可能性に大きな期待を寄せています。
健康とは、病院での診断や治療だけではありません。日常の中で、自分の体に起こる小さな変化に気づくこと——Apple Watchは、そんな健康管理の新しい形を提示しています。