AirPods Pro 3レビュー 第2世代を使ってきた筆者が感じた進化点。日本語ライブ翻訳も試す(石野純也)

iPhoneやApple Watchのような毎年更新ではないため、やや不意打ち気味な感があった「AirPods Pro 3」。

先代の「AirPods Pro(第2世代)」が22年に登場して以来、実に3年ぶりのアップデートになりました。ノイズキャンセリングの性能が前モデル比で2倍へと大きく向上しているほか、心拍センサーを内蔵したことで、ワークアウトの測定にも利用が可能。さらには、iPhoneのAIと連携した対面のライブ翻訳も利用できるようになりました。

▲約3年ぶりに登場したAirPods Pro 3

このAirPods Proを借り、一足先にテストすることができました。まず、前モデルと比べて変わったなと思った点が、フィット感です。個人の耳穴のサイズにも左右されるため、一概には言えないものの、筆者の場合、第2世代のAirPods Proだと、Mサイズがやや窮屈、Sサイズだと小さすぎるといった具合でした。Mサイズを1時間以上使っていると、耳が疲れてきます。

これに対し、AirPods Proはイヤーピースのサイズが「XXS」「XS」「S」「M」「L」の5段階に再編され、中央が「S」になりました。より細かくサイズ調整が可能なったことで、ベストなフィット感を探れるようになっています。筆者はパッケージから出したままの状態がジャスト。耳への負荷が明らかに下がっていて、より着け心地がよくなっています。

▲イヤーピースも再設計されており、フィット感が上がった。サイズ調整もより細かくできるように

ノイズキャンキャンセリングの効きは、すぐに分かるレベルで向上しています。電車の中でつけていると、モーターの音が薄っすらとしか聞こえないレベルまで騒音が消えます。さすがに、「ガタンゴトン」という走行音までゼロにすることはできませんが、第2世代のAirPods Pro以上に静かになるのは断言できます。

室内でも効果を発揮しました。第2世代でも送風の音はかなり消えていましたが、若干機械音が残っていた一方で、3をつけると、完全に静寂に包まれるような感覚になります。とは言え、会話の音を検知すると、音量を下げて声が聞こえるようにする「会話検知」などもあり、着けっぱなしにしていてもOK。呼ばれて気づかないということはありません。

▲ノイズキャンセリングの効きが前モデル比で2倍に向上したという。実際、聞き比べてみると、より細かな音が聞こえないようになっている

オーディオ自体のキレもよりよくなっている印象で、特に高音部分の解像感が上がっているように聞こえました。プレスリリースでは、「サウンドステージを広げてユーザーがあらゆる楽器の音色を聞けるようにし、音楽、テレビ番組、通話にわたって、より高い周波数の声まであざやかでクリアに届けます」とうたわれている部分ですが、ここが音作りに関しては一番分かりやすい違いになっていると感じました。

心拍センサーでワークアウトを計測できるのも、おもしろい試みです。Apple Watchがあれば、いらないのでは……という気もしないではありませんが、手首に何も装着したくない時には便利。アナログ時計派が、心拍数や消費カロリーなどのデータを記録したい時にも役立つ機能になりそうです。

▲心拍センサーを搭載(左が3、右が2)

▲iPhoneのヘルスケアアプリで、ワークアウトの計測が可能になった

もう1つ大きな機能が、iPhoneのApple Intelligenceと連携したライブ翻訳機能。ライブ翻訳は、「アクティブノイズキャンセリング対応のAirPods 4または最新のファームウェアを搭載したAirPods Pro 2以降」に対応するため、厳密に言えばAirPods Pro 3特有の機能というわけではありませんが、よりノイズキャンセリングが効くAirPods 3に合わせたものと言えるでしょう。

Siriにライブ翻訳を起動してもらうよう頼むか、両ステムをロングクリックすることでライブ翻訳モードになります。現時点では、英語(アメリカ、イギリス)、スペイン語(スペイン)、ドイツ語、フランス語、ポルトガル語(ブラジル)の5言語(米語と英語を別カウントすると6言語)のみですが、年内には日本語への対応も予定されています。

実際、筆者は開発中の日本語で、英語を日本語に翻訳する体験をすることができました。ライブ翻訳をオンにすると、相手の声はほぼ消え、ワンテンポ遅れるような形でそれが日本語になります。話している内容は、きちんと把握できるレベル。あくまで日常会話レベルではありますが、このレベルであれば、相手がまったく知らない言語を話している時でも、内容は理解できそうです。

▲Apple Intelligenceと組み合わせたライブ翻訳に対応。現在は6言語対応だが、年内には日本語も利用できるようになる

若干不自然だなと思ったのは、相手が女性だったにも関わらず、さわやかなAirPods Proにはさわやかな男性の声が流れてきたこと。あからさまに声が違っているため、相手が話しているようには聞こえませんでした。グーグルのPixel 10シリーズには、「マイボイス通訳」という相手や自分の声をそのまま他言語にする機能がありますが、こうした仕掛けも必要になってくるかもしれません。

▲スペイン語で作られたアップル公式の動画を再生しながら、英語に翻訳している画面。ほぼほぼリアルタイムだ

また、相手もAirPods Pro 3(やそれ以前のモデル)とApple Intelligence対応iPhoneを持っていれば、双方ともに自分の言語を話しているだけで、相手との意思疎通が可能になります。これぞまさに“翻訳こんにゃく”といった機能。AIやスマホだけでなく、イヤホンを組み合わせることで、よりリアルなシーンで利用できるようになる点は評価できます。

ここまで機能が向上にしているにも関わらず、価格はAirPods Pro(第2世代)から据え置きの3万9800円。円安の為替レートが憎くなるものの、最新モデルの価格帯として高すぎるということはないでしょう。ノイズキャンセリングの性能がいいイヤホンがほしく、かつライブ翻訳対応のAirPodsを持っていない人にはお勧めできる1台と言えます。

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