バフェット氏がケチ男だったら、純資産はマスク氏はるかに凌ぐ58兆円
バークシャー・ハサウェイを約60年間率いているウォーレン・バフェット氏。その富と影響力は、1670億ドル(約24兆3500億円)の資産ではとうてい語り尽くせない。
バフェット氏(94)は20年近く前から、バークシャー株を寄付してきた。寄付時点での価値に基づく総額は、600億ドルを上回る。ブルームバーグの試算によれば、これらの株式は現在、約2300億ドルの価値がある。
言い換えれば、「オマハの賢人」が株式を寄付していなければ、純資産は4月30日時点で4000億ドル近くに達していたことが、ブルームバーグ・ビリオネア指数に示されている。世界一の富豪イーロン・マスク氏の純資産を、670億ドル上回る金額だ。
「ウォーレンはその言葉と行動を通じて、影響力のある充実した人生を送る方法を示してきた」と、ヘッジファンド、ボーポスト・グループのセス・クラーマン最高経営責任者(CEO)は語る。同氏を含む多くの資産家が、年末でバークシャーCEOを退任すると発表したバフェット氏に惜しみない賛辞を送っている。
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バフェット氏は長年、自身の資産を死後に慈善団体に寄付する意向を表明している。しかしその方針に加速が付いたのは2006年。当時約440億ドルと評価されていた資産のうち、85%を直ちに寄付すると発表した。
バフェット氏は当時、寄付の大部分が友人であるビル・ゲイツ氏が運営する巨大な慈善団体、ゲイツ財団に提供されると述べた。残りはバフェット氏自身と3人の子どもたちが設立した4つの財団に提供されると述べた。
「自分が何をしたいのかは分かっている」とバフェット氏は当時、フォーチュン誌に語った。「こうすることが理にかなう」と述べていた。
過去20年間、バフェット氏は定期的に株式を寄付してきた。2010年にはゲイツ夫妻(当時)と共にギビング・プレッジを創立。他の超富裕層に資産の少なくとも半分を慈善活動に寄付するよう呼びかけた。これにはイーロン・マスク氏やマーク・ザッカーバーグ氏、ラリー・エリソン氏らが名を連ねる。
バフェット氏はこのとき、「私と家族は必要なものも欲しいものも何一つ失わずに、資産の99%を寄付できる」とし、1%より多くを自分たちのために使っても「自分の幸福や暮らしぶりが高まるわけではない。資産の99%は他人の健康と暮らしに多大な影響をもたらす」と書いている。
バフェット氏は死後の資産処理についても、昨年の書簡で詳細を明らかにした。残るバークシャー株は3人の子どもたちが寄付するが、決定には全員一致が必要とされる。また2021年に理事を退任したゲイツ財団には、死後の寄付は行われない。ゲイツ氏は2025年までに財団の寄付を倍増させ、2045年に閉鎖すると先週発表した。
ネブラスカ州出身のバフェット氏は、子供時代に株への興味を育み、新聞配達や菓子販売で資金を稼いだ。コロンビア大学大学院でバリュー投資の父、ベン・グレアム氏に師事。1962年に繊維メーカーだったバークシャーの株式を取得し始め、買収後は割安株を購入する投資企業に変身させた。企業買収を通じ、バークシャー株に5500万%を超えるリターンをもたらした。生活は質素で、1958年に購入したオマハの家に今も住み、趣味はブリッジとウクレレ。資産の99.5%以上がバークシャー株に結びついてている。
2004年に亡くなった妻のスーザンさんは、3人の子にそれぞれ1000万ドルを残した。バフェット氏は「子供に何でもできるだけの資産は残すが、何もしなくても生きていけるほどの資産は残さない」と株主に宛てた書簡に記した。この信念を40年近く繰り返している。
原題:A Less-Generous Warren Buffett Would Be Richer Than Elon Musk(抜粋)