アングル:物価高はトランプ氏のせいか、支持者が大統領に「成績表」

[13日 ロイター] - 米西部コロラド州デンバー都市圏に住み、人材関連会社に勤めるロン・デイリーさん(63)は外食するとメニューを見て衝撃を受ける。「朝食でも、どう考えても20ドルはする」と話す。

2024年11月の米大統領選でトランプ候補に投票したデイリーさんは、大統領に復帰したトランプ氏が課した「関税(交渉)のやりとり」が市場の不確実性を招き、一部のコストを押し上げたと考えている。

一方で、価格が下落しているものがあることも知っている。ガソリン価格はこのところ1ガロン当たり1.74ドルにとどまっていた。全体としてデイリーさんはトランプ氏の生活費への対応を10点満点中8点と評価した。

「大統領に魔法のつえなどない」と話し、トランプ関税と規制緩和が最終的に日常的なコストの大部分を低減させると信じ込んでいる。

有権者が物価を最重視とする中、来年の中間選挙に向けて準備を進める共和党は、インフレが続いて議会で過半数割れに追い込まれることを特に懸念している。

インフレ抑制を公約に掲げて大統領選を展開したトランプ氏はこの数週間、生活費高騰を「デマだ」と一蹴したり、バイデン前大統領に責任をなすりつけたり、自身の経済政策が来年には米国人に恩恵をもたらすと約束するなど態度を急変させている。

ロイターは今年2月以降、全米各地のトランプ支持者20人に毎月インタビューをした。物価高が生活にどう影響しているのか、彼らがその責任をどこにあると考えているのかが明らかになった。支持者にトランプ政権の物価対策に1―10点で採点するように求めたところ、6人が5点以下、8点を超えたのは1人だけだった。

A dot plot shows how 20 Trump voters rate the president's approach to affordability from 1 to 10, with six of the 20 voters giving it a score of 5 or lower, and only one rating it higher than 8.

有権者の過半数はトランプ氏への強い支持を崩さず、長期的に購買力が向上すると予測しつつも、日常的な物価上昇には大統領のコントロールが及ばないとの見解を示した。回答者の大半は生活費高騰の原因を米国経済の構造的問題である企業の寡占状態、企業の強欲な姿勢、過剰なマネーストック(通貨総量)に求めた。

<生じる不安>

彼らの声は最近の世論調査結果とほぼ一致する。12月上旬のロイター/イプソス世論調査で回答したトランプ支持者の4分の3弱が、トランプ氏の物価対策を支持すると答えた。一方、全回答者の支持率は30%にとどまった。

トランプ氏は東部ペンシルベニア州での集会で「米国の物価を再び手頃にすることを最優先課題としている」と訴え、ガソリンやエネルギー、卵の価格が下がったことを自身の功績だと言い張った。大統領復帰から1年弱が経過したにもかかわらず、他の品目で物価高が続いていることについてはバイデン氏に責任を押しつけた。

政府の統計によると、第2次トランプ政権では雇用増加が鈍化し、失業率は約4年ぶりの高水準に悪化し、消費者物価も高止まりしている。

ロイターが取材した有権者のうち8人は、地元の飲食店や食料品店で特に肉やコーヒーの価格が上昇していると報告した。一方で食品価格が下落したとの回答もわずかながらあり、11人は地元でガソリン価格が下落したと答えた。

トランプ氏の拙い関税政策により、米国民の負担が不必要に増大したとの不満も漏れてくる。

南部テキサス州ヒューストン近郊に住む3児の母、ロレッタ・トーレスさん(38)はトランプ氏に8点をつけたが、トランプ関税で一部の物価が2―3倍に跳ね上がったため、今年の年末商戦が例年より苦しかったと打ち明けた。トーレスさんは「関税が引き下げられ、状況が改善されることを強く望む」と話した。

東部ニューヨーク州ハドソンバレーで武術を教えるジェラルド・ダンさん(67)は、トランプ氏の生活費の負担軽減策に6点をつけて「理由もなく関税を乱発すべきではない。不確実性が不安を生み、経済に悪影響を与える」と評した。

しかし、他の有権者は関税による価格上昇は全く感じていないと言及。中西部ミシガン州のパイロット、テリー・アルバータさん(64)は、米国でブラックフライデーのセール期間中のオンライン通販販売額が過去最高だったとして「人々は苦しんでいると言うが、どうやらその支出を抑えるほどには苦しんでいないようだ」と指摘。「政権を批判して『ああ、この関税はひどい』などと文句を言うのに、なぜ買い物を続けているのか」と問いかけた。

<企業の強欲に規制要望>

トランプ氏への評価に関わらず、有権者の大半は生活必需品やサービスの価格上昇は民間企業や、マクロ経済に原因があるとして非難する。

回答した20人は年齢、学歴、人種・民族、居住地、投票歴がトランプ支持者全体の傾向とおおむね一致している。彼らは2025年2月のイプソスの世論調査に回答した429人のうち、昨年11月の大統領選でトランプ氏に投票したと回答し、記者に話すことに同意した者から選ばれた。

南部バージニア州バージニアビーチに住む無職のドン・ジャーニガンさん(75)は、寡占を規制する取り組みが不十分であるとし、トランプ氏の生活費の負担軽減策への評価を4点とした。食肉加工などの業界では「大企業が商品のサプライチェーン(供給網)の大部分を占めている」とし、「小規模な企業は規制によって完全にシステムから締め出され、その状況を変えるような動きは全く見られない」と批判した。

南部ジョージア州のデビッド・ファーガソンさん(54)はトランプ氏が大統領令を駆使し、健康保険などの分野で利益の上限を定めることを望むと発言。高コストの原因は支配的な企業による「やり過ぎ」のせいだと非難した。

中西部アイオワ州デモインに住む退役軍人のルー・ヌネスさん(83)は、年末で期限切れとなる医療保険制度改革法(オバマケア)の補助金を延長しなければ、オバマケアの保険料が2倍になるとして「トランプ氏が望むならば議会に補助金(延長)の法案を可決させられるだろうが、彼はかなり反対していると思う」と言及。ヌネスさんはトランプ氏の医療費負担軽減策を2点と評価した。

<「掘って、掘って、掘りまくれ」>

トランプ氏を全体的に高く評価した有権者を中心に、同氏には物価を即座に低減できる権限がないという主張が目立った。

中西部イリノイ州シカゴ近郊に在住のケイト・モットルさんはトランプ氏を8点、南部ノースカロライナ州シャーロットのリッチ・ソモラさん(62)は6点と採点。トランプ氏の選挙スローガン「掘って、掘って、掘りまくれ」を例示し、米国のより多くの地域で原油やガスの採掘を許可することが生活費の削減に役立つとの考えを示唆した。

2人ともトランプ氏が物価を直接引き下げるのは限界があると強調。モットルさんは食料品や公共料金の値下がりを望むとしつつ、トランプ氏の経済面での指導力には「非常に楽観的」だと主張。「就任からほぼ1年という短期間では、できることには限界がある」と同情して見せた。ソモラさんは「多くは政策変更であり、その多くが議会を通過する必要がある」と指摘した。

中西部ウィスコンシン州マディソン在住の学生ウィル・ブラウンさん(20)は、現在のインフレをバイデン政権の連邦支出策が通貨総量を膨らませ過ぎたためだと非難。食肉価格が「法外に高い」とし、住宅費が多くの米国民にとって手の届かない水準にあることを認めつつも、トランプ氏の生活費の負担軽減策に7点を付けた。

インフレと高騰する生活費の解決は「口で言うのは簡単だが、実行は難しい」とブラウンさんは話した。

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