【米国市況】S&P500種は続落、半導体に売り-ドル一時146円22銭
20日の米株式市場では、S&P500種株価指数が続落。地政学的リスクや通商に関する動向を見極めたいとのムードが広がる中、売り優勢の展開となった。トリプルウィッチング(三つのデリバティブ満期日が集中する日)に伴い、売買高は膨らんだ。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5967.84 -13.03 -0.22% ダウ工業株30種平均 42206.82 35.16 0.08% ナスダック総合指数 19447.41 -98.86 -0.51%イスラエルとイランの対立を巡り、米国が外交努力で緊張緩和を図ろうとする兆候はあるものの、リスクテーク意欲が高まるには至らなかった。
日本が米国との外務・防衛閣僚会合(2プラス2)を取りやめたとする英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道後、株式相場は下げ幅を拡大させる場面があった。
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業種別では半導体関連が売られた。中国で米国製の半導体製造装置にアクセスするために大手半導体メーカーが利用してきた特例措置を、米当局が取り消したいと考えているという米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)報道が影響した。
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フィラデルフィア半導体株指数は0.8%ほど下げて終えた。
UBSウェルス・マネジメントのブライアン・ビューテル氏は「市場は現在、数多くの問題に直面している。地政学的緊張や関税を巡る不透明感、米連邦準備制度理事会(FRB)の次の動きに関する不確実性などだ」と指摘。「この先にはさまざまなリスクが存在するが、株式は経済成長を先取りするバロメーターであり、当社では今年の成長は持ちこたえるとみている」と述べた。
国債
米国債相場は中短期債を中心に、全ての年限で上昇(利回り低下)。利回り曲線はスティープ化した。
ウォラーFRB理事が7月にも利下げを実施することは可能との見解を示したことを受け、相場はこの日の安値水準から反発した。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.89% -0.1 -0.02% 米10年債利回り 4.38% -1.6 -0.36% 米2年債利回り 3.90% -3.8 -0.96% 米東部時間 16時47分ウォラー理事はCNBCで、関税によるインフレへの影響は短期的なものにとどまる公算が大きいとの認識をあらためて表明した。
一方、リッチモンド連銀のバーキン総裁は、ロイター通信とのインタビューで、関税がインフレを押し上げるリスクがある一方で、米国の雇用市場と個人消費は堅調だとし、利下げを急ぐ必要はないとの見解を示した。
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短期金融市場では、9月会合での利下げ確率がわずかに高まった。10月利下げの可能性は引き続き完全に織り込まれている。
外為
外国為替市場ではドル指数が前日比で上昇。地政学的リスクの高まりを背景に、週間ベースでは0.7%上昇し、約4カ月ぶりの大幅高となった。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1211.06 1.56 0.13% ドル/円 ¥146.16 ¥0.71 0.49% ユーロ/ドル $1.1517 $0.0022 0.19% 米東部時間 16時51分ドル指数はこの日、一時0.2%下げる場面もあった。
カマクシャ・トリベディ氏らゴールドマン・サックス・グループのアナリストは、「足元では地政学的な緊張の高まりを背景に、ドル上昇の可能性があるとみている。弱気のポジショニングに加え、海外でショックが発生した場合、ドルが依然として安全資産と見なされるためだ」とリポートに記した。
円は対ドルで下落し、一時0.5%安の1ドル=146円22銭を付けた。ニューヨーク時間の朝方に下げに転じ、その後は軟調な展開が続いた。
デレク・ハルペニー氏ら三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のアナリストは「中東情勢に関連した世界的なインフレリスクで円は下落しているが、ファンダメンタルズの点では反発するはずだ」と指摘。「中東の地政学的リスクが和らげば、ドル・円のリスクは下落方向に見える」と述べた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は反落。トランプ大統領がイランを攻撃するかどうか2週間以内に決定を下すことを表明し、米国による差し迫った攻撃への懸念が後退したため、売りが出た。
19日のホワイトハウス声明に加え、イランがウラン濃縮の制限について協議する用意があるとのロイターの報道を受け、北海ブレントは大幅安となった。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は商いが薄かった。米国の祝日明けになったほか、この日が期近物の最終取引日に当たったことが影響した。
イランのアラグチ外相は20日にスイス・ジュネーブで英国、フランス、ドイツの外相と会談。国営イラン通信(IRNA)によると、アラグチ氏は欧州諸国との新たな会合を近いうちに開催する用意があると述べた。しかし、「攻撃が続く限り、いかなる当事者とも交渉は行わない」と警告した。
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会談後、ラミー英外相は記者団に対し、「イランとの協議と交渉を継続したいと考えており、イランにも米国との協議を継続するよう強く求める」と述べた。さらに「今は危険な局面であり、この紛争がこの地域で拡大しないことが極めて重要だ」と続けた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前営業日比21セント(0.3%)安い1バレル=74.93ドルで終了。8月限は0.5%高の73.84ドルで終えた。ロンドンICEの北海ブレント8月限は2.3%安の77.01ドルで引けた。
金
金スポット価格は小幅安。中東の地政学的緊張がやや緩和したため、安全資産への需要が弱まり、週間ベースでも下げた。米金融当局がインフレ警戒姿勢を維持し、利下げ回数が減少するとの思惑につながったことも売り材料。
RJOフューチャーズのシニアマーケットストラテジスト、ダン・パビロニス氏は「この日の金価格下落の最大要因は、中東情勢の緩和だ」と述べ、「週末を迎え、イランやイスラエル、米国は全てが一時停止状態にあると言える」と語った。
金相場は今年に入ってから28%余り上昇しており、4月に記録したオンス当たり3500.10ドルの最高値をわずかに下回る水準で取引されている。ウォール街では、金価格が記録的な上昇を維持できるかどうかについて見解が分かれている。ゴールドマン・サックス・グループは、来年までに4000ドルという予測を改めて示したが、シティグループは2026年に3000ドルを下回る可能性があるとしている。
スポット価格はニューヨーク時間午後2時30分現在、前日比0.1%安の1オンス=3366.10ドル。週間では1.9%下げた。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は前営業日比22.40ドル安の3385.70ドルで引けた。
原題:S&P 500 Trading Volume Spikes at Wall Street Close: Markets Wrap
Treasuries Front-End Draws Support From Dovish Waller Comments
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Gold Heads for Weekly Drop as Safe-Haven Demand Starts to Ease(抜粋)