走る日経平均に遅れるTOPIX、好業績の裾野拡大が追撃の鍵-脱AI人気

史上初の5万円に乗せた日経平均株価と比べ、日本株全体の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)の出遅れが目立っている。両社の上昇率格差を埋めるには今後本格化する決算発表で業績改善の裾野が多様な業種に広がるかどうか、人工知能(AI)ブームだけに頼らない相場への転換が鍵を握る。

  ソフトバンクグループアドバンテスト東京エレクトロンなど値がさで時価総額の大きいテクノロジー銘柄の影響力が大きい日経平均の10月の上昇率は約12%(28日時点)と、4.7%にとどまるTOPIXの2倍以上に達する。TOPIXに対する日経平均の相対的な強さを示すNT倍率は約15.3倍と、4年ぶりの高水準だ。

  中国とのAI覇権争いに熱心な米国で8月以降、半導体大手インテルへのトランプ政権による出資や生成AI「ChatGPT」を展開するOpenAIマイクロソフトの連携など材料が相次ぎ、テクノロジー株への投資人気を通じて日経平均を押し上げた。今後TOPIXが日経平均に追いつくには、AI以外の好材料が必要になる。

  ブルームバーグのデータによると、アナリストによる今後12カ月先のTOPIXの予想1株利益(EPS)成長率は14%。時価総額上位銘柄では今週、半導体研削・切断装置メーカーのディスコ、製薬大手の武田薬品工業、鉄道大手のJR東日本などが7-9月期決算を発表する予定だ。

  SBI証券の鈴木英之投資情報部長は、日経平均の足元の堅調は半導体関連の上昇が背景だと指摘。今回の決算発表で自動車の業績が予想を上回るなどより広範囲で好調ぶりを確認できれば、「TOPIXも追いついてくる可能性がある」とみる。

  米関税政策の影響に対する懸念が和らいでいるほか、円相場が対ドルで8カ月ぶりの安値を付けるなど為替市場における円安進行は海外売上高比率の高い輸出セクターを中心に業績の押し上げ要因になり得る。日米通商交渉の不透明感が強まっていた前期や今年4-6月期と比べると大きな転換で、物価や人件費などコストの上昇が続く中、企業は価格転嫁も引き続き進めている。

  今月のTOPIXの業種別33指数の上昇率上位を見ると、AI・データセンター関連の電線株を含む非鉄金属や電機、情報・通信が並び、小売りも堅調。小売りでは、今期の営業利益計画が市場予想を上回った安価なイタリア料理店チェーンのサイゼリヤ、海外ユニクロの好調で今期営業利益は5期連続の最高益更新を見込む衣料品のファーストリテイリングの株価急伸も寄与した。

  岡三証券の大下莉奈シニアストラテジストは、TOPIXには内需拡大の期待が既に織り込まれているが、自動車や電子部品メーカーの決算内容次第では相場に一段の上昇余地が生まれると予測。TOPIXで最大のウエートを占めるトヨタ自動車は11月5日、続くソニーグループは同11日に7-9月期業績を開示する予定だ。

  大和アセットマネジメントの建部和礼チーフストラテジストは、海外経済や米国政策への不透明感は残るものの、国内の構造改革の進展が企業収益の追い風となる点は心強いとの指摘している。

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