個人投資家もヘッジファンド並み速度で対応可能に-AIツールで変革
- 既に変化の兆し、「マグニフィセント・セブン」への配分比率低下
- 注目度が低めの領域で投資家が機会を探り始めていることを示す
膨大なデータを分析してポートフォリオを構築する人工知能(AI)を活用したトレーディングツールが、ウォール街に衝撃を与えている。こうしたツールが個人投資家にも普及すれば、株式市場全体に大きな変革が生じることになりそうだ。
バークレイズの試算によれば、個人投資家が直接保有する米国株は市場全体の約25%に上る。また個人退職口座(IRA)や確定拠出型年金401kなどを通じた間接的な保有は60%超だ。
個人投資家はテスラやエヌビディアといった大手テクノロジー銘柄など一部の成長銘柄を選好したりゲームストップのようなボラティリティー(変動性)の大きい「ミーム株」に引かれたりする傾向がある。購入銘柄のファンダメンタルズとは無関係のトレードである場合が多い。
元個人トレーダーで株式トレーダー向けソーシャルネットワーク「アフターアワー」の創業者兼最高経営責任者(CEO)ケビン・シュウ氏は「個人投資家は金融をエンターテインメントのように捉えている」と指摘。「一般的に、株式市場の高度な概念を理解しておらず、ただ次の注目銘柄を知りたいだけだ」と話す。
AIを活用したプラットフォームが広く普及すれば状況は一変すると考えられる。個人投資家が数千銘柄を調査したり、高度なヘッジファンド並みのスピードでリアルタイムデータに対応したりする能力を得るからだ。
実際、個人投資家の行動は変化し始めている。JPモルガン・チェースのクオンツ・デリバティブ(金融派生商品)担当ストラテジスト、エマ・ウー氏のデータによれば、ポートフォリオに占めるハイテク7社「マグニフィセント・セブン」への配分比率は、昨年夏の10%から6月9日時点で1.1%まで低下した。
こうした変化は、市場で注目度が比較的低めの領域で投資家が既に投資機会を探っていることを示す。
バークレイズのグローバル株式戦術戦略部門責任者アレクサンダー・アルトマン氏は「高度なプログラミングの知識がなくてもAIにより大量のコーディングを行えるため、個人投資家は投資プロセスで機能強化を図れる」と指摘。そうした技術が投資業界のあらゆる面に影響を与えるとの見方を示した。
原題:Revolution Is Coming to the Stock Market as Retail Gets AI Tools(抜粋)