マクロスコープ:春節の中国人客減少、懸念は将来の「日本ファン」先細り
[東京 3日 ロイター] - 今年の春節(旧正月)は、中国からのインバウンド(訪日外国人)客が大きく落ち込む見込みだ。中国政府が日本への渡航自粛を自国民に呼びかけ、百貨店や宿泊などのサービス業や関西の一部地域などでは打撃が顕著に表れそうだ。ただ、経済全体からすると影響は限定的で、むしろ来日の減少で日本文化に直接触れる機会が減り、日本への親近感など「無形の資産」が静かに削がれていくリスクを指摘する声が出ている。
中国では、春節を前にした帰省や旅行ラッシュが2日に始まった。春節を挟んだ40日間の国内旅行者数は延べ95億人と過去最多を記録する見通し。一方、海外旅行先は東南アジアが人気で、日本への旅行者数は大幅に減少すると予想されている。
台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁を受けて、中国は昨年11月に同様の勧告を出しており、今回改めて発出した。一方、日本政府は過度な反応を避け、佐藤啓官房副長官は1月27日の会見で、日中間の民間交流や経済活動は促進されるべきだとした上で「状況を注視し、適切な対応を行う」と述べるにとどめた。
8日の衆院選の結果を受けて中国側が態度を変化させるか不透明だが、足元では訪日中国人客は急減している。日本政府観光局(JNTO)によると、昨年12月の訪日外国人客数は同月として過去最多を記録したものの、中国からの訪問者数は前年同月比で約45%減少した。
今年の春節の連休期間(2月15日から23日)も影響は免れない見込みで、中国の旅行予約サイト大手が行った予約状況に基づく調査によると、人気渡航先にはタイやオーストラリア、韓国などが並び、日本は上位から外れた。百貨店や宿泊、外食などの関連産業や、大阪、京都といった一部地域では、売り上げへの影響が意識され始めている。
もっとも、日本経済全体への波及は限られるとの見方が多い。ソニーフィナンシャルグループの宮嶋貴之シニアエコノミストは、中国人観光客の消費が1年間半減した場合、インバウンド消費全体を約1割押し下げると試算する。インバウンド消費は名目国内総生産(GDP)の1.5%程度のため、機械的に計算するとGDP成長率の下押しは0.15%程度にとどまるという。
過去と比べた構造変化も大きい。足元では、インバウンド消費全体に占める中国人のシェアは10年前と比べて半分に低下している。インバウンド市場の国籍・地域分散が進み、中国人客の日本経済全体に与える影響は過去と比べて相対的に小さくなっている。
一方、影響が長引いた場合の論点は、短期の観光消費にとどまらない。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの丸山健太・副主任研究員は、日本を訪れた経験が中国での日本ブランド消費を下支えしてきた点に注目する。「日本旅行の経験が帰国後の日本の外食産業や財需要につながってきたところもある。訪日客が減れば、その『入り口』が細る」と話す。
日本が実効支配し、中国も領有権を主張する尖閣諸島(中国名:釣魚島)の国有化に伴い、日中関係が悪化した2012年にも同様の事態が起こった。JNTOの統計によると、12年の中国からの訪日客は約83万人。翌13年には70万人となり、11年の東日本大震災後に持ち直していた客足が減少に転じた。
三菱UFJリサーチの丸山氏は「人的交流の縮小が長引けば、日本ブランドの浸透や企業の成長余地を静かに削いでいくリスクがある」と警鐘を鳴らす。
(杉山健太郎 編集:橋本浩)
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