高市早苗氏「外国人が奈良公園のシカを蹴る」発言を称賛する人が知らない、キックより残忍な“日本人のシカ虐待”(ダイヤモンド・オンライン)

 自民党総裁選で先行する高市早苗氏の「外国人が奈良のシカを蹴る」という発言に、称賛の声が上がっています。しかし、日本人がキックどころではない残忍な方法でシカを虐待してきた“不都合な歴史”は、あまり語られません。多くの人が知らない、この問題に潜む本当の構図と、語られることのない衝撃の事実を暴き出します。(ノンフィクションライター 窪田順生) ● 自民党総裁選の行方 高市「鹿キック」発言  「小泉vs高市」という2強対決でほぼ決まりと言われる自民党総裁選。本命・小泉進次郎氏がステマ疑惑、大量離党問題と「文春砲」に“2週連続被弾”するなかで、対抗馬・高市早苗氏にはここにきて思わぬ「追い風」が吹いている。  「外国人観光客の鹿キック問題」である。  ご存じのない方のために概要を説明すると、発端は9月22日に開かれた自民党総裁選の所見発表演説会。ここで高市氏は、集まった国会議員たちが戸惑うようなこんな“第一声”をあげた  「皆様こんにちは。高市早苗、“奈良の女”です。大和の国で育ちました。奈良の女としては、奈良公園に1460頭以上住んでいる鹿のことを気にかけずにはいられません」  「そんな奈良の鹿をですよ。足で蹴り上げるとんでもない人がいます。殴って怖がらせる人がいます。外国から観光に来て、日本人が大切にしているものをわざと痛めつけようとする人がいるんだとすれば、皆さん、何かが行き過ぎている」  実は男性が鹿を蹴り上げている動画というものは確かに存在する。だが、この男性が日本人なのか外国人観光客なのかはわかっていない。しかも、奈良公園の鹿を保護している団体「奈良の鹿愛護会」が外国人観光客のそのような行為を「見たことがない」と述べたことで、「出所不明の情報で外国人差別を煽るのはいかがなものか」と叩かれてしまったのだ。

 ただ、結果としてこの「鹿キック」発言は、高市人気アップのきっかけとなる。  ネットやSNSは「よくぞ言ってくれた」と大絶賛。「中国人観光客が鹿の頭を叩いたり、蹴ったりするのは日常的に見る」と高市氏を擁護する人たちも現れ、自民党の党員・党友票も増えたという報道もある。  これにはいろいろな意見があるだろうが、個人的には「でしょうね」というくらいで、それほど驚きはない。  どういう綺麗事を並べたところで、「選挙」の本質というものは、大衆の潜在的な不満・不安を刺激することで自分の支持にもっていく、という“扇動競争”という面があることは否定できない。  そこで「外国人憎悪」を煽るという手法は、古今東西の政治家がやってきたことであり、2025年現在も最も効果の高い“選挙プロパガンダ”のひとつだ。先の選挙で参政党が掲げた「日本人ファースト」や、アメリカ大統領選でトランプ氏が「移民がペットを食べている」と繰り返し主張して、移民反対派の溜飲を下げたことを見ても明らかだろう。  そんな王道でベタな選挙プロパガンダを今回、高市氏もやってみたというだけの話なのだ。 ● 奈良公園の鹿と暴力 日本人も加害の歴史  …という冷めた意見を耳にすると、「神の使いである鹿が外国人にキックされて怒りがわかないとは貴様、それでも日本人か!」と愛国者の皆さんから飛び蹴りをくらいそうだが、もしも本当に心の底から、鹿の安全を願っているのなら“マナーの悪い外国人観光客”を敵視、攻撃したところで、あまり意味はない。  「事実」を客観的に振り返ると、キックどころではない残忍さで奈良公園の鹿を痛めつけ、命を奪ってきたのは他でもない我々日本人だからだ。  2021年2月、奈良公園内で雌のシカ1頭(推定11歳)が、斧(おの)のようなもので頭部をかち割られて、殺された。やったのは不良外国人…などではなく、三重県松阪市のとび職(当時23)だった。

ダイヤモンド・オンライン
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