「6時間睡眠」では脳にゴミがどんどんたまる…京大名誉教授「疲れづらい体に必要な"最低限の睡眠時間"」 将来アルツハイマー病やガンを発症するリスクが高まる

睡眠時間が短くなると体にどのような影響がでるのか。京都大学名誉教授の森谷敏夫さんは「睡眠不足や不規則な生活を続けていると、処理しきれない老廃物が日々蓄積されることになり、自律神経の働きが低下して太りやすくなる。また、5時間睡眠の男性の睾丸は7時間睡眠の方に比べると有意に小さいことが海外の研究でわかっている」という――。

※本稿は、森谷敏夫『京大式 脂肪燃焼メソッド』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/mapo

※写真はイメージです

簡単な習慣で、自律神経はガラリと変わる

自律神経が活発に働いていれば、食欲をコントロールでき、体脂肪をどんどん燃やせる体になります。逆にいえば、自律神経を鍛えてその活動レベルを上げない限りは、食欲のコントロールも体脂肪の燃焼もうまくいきません。

食事制限などで一時的には体重は減っても、筋肉量が落ちて、すぐにリバウンドすることは火を見るよりも明らかです。

そうはいっても、「自律神経の鍛え方」なんて聞いたことがない……という方が多いでしょう。自律神経はとても簡単な方法で鍛えられます。日々の行動を少し変え、それを習慣にするだけでよいのです。

ここから、自律神経を鍛える具体的な方法をお伝えしていきます。

1つ目の習慣は、睡眠時間を確保することです。

睡眠不足や不規則な生活を続けていると、自律神経の働きが低下して太りやすくなります。なぜでしょう。

睡眠と覚醒のリズムを調整しているのは、脳の視交叉上核しこうさじょうかくにある体内時計。体内時計は自律神経と密接に関連しているため、寝不足など不規則な睡眠状態が続くと体内時計が乱れて、その影響で自律神経まで機能が低下してしまうのです。

太りたくないなら、十分な睡眠時間を確保して、早寝早起きを心がけることが不可欠です。睡眠の習慣が整うと、体内時計が正しいリズムを刻むようになり、それにつれて自律神経がパワーアップされます。そうなれば、放っておいても太らない体になることは、すでにお話しした通りです。

では、体内時計のリズムを正して、自律神経を強化するためには、具体的にどのような睡眠を目指せばよいのか。さっそく見ていきましょう。


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自律神経を鍛えるためには、睡眠の量、つまり、1日何時間眠るかもまた重要な要素になります。最低でも1日7時間は寝ないと、脳に老廃物が溜まって自律神経の働きを低下させてしまうのです。どういうことでしょう。

森谷敏夫『京大式 脂肪燃焼メソッド』(青春出版社)

脳以外の場所ではリンパ管やリンパ腺が昼夜を問わず老廃物を処理しています。

それに対して、脳では、脳脊髄液が主に老廃物処理の役割を担っています。

盛んに活動している日中の脳は、血液などでパンパンに膨らんでいて、脳脊髄液が入り込む余地はありません。血液量の減る睡眠時にようやく脳に隙間ができるため、脳脊髄液が流れ込んで老廃物を脳から運びだせます。

つまり、睡眠中が老廃物処理の大きなチャンスであり、老廃物を完全に処理するには7~8時間の睡眠時間が必要です。睡眠時間が足りないと、処理しきれない老廃物が日々蓄積されることになり、自律神経の働きを低下させてしまいます。

それだけではありません。老廃物の中にはアルツハイマー病の原因物質であるβアミロイドも含まれていますし、また、脳に溜まった老廃物がガンをやっつけるNK細胞という免疫細胞を減らす可能性も指摘されているのです。

睡眠不足が続くと、自律神経の働きが低下するばかりか、将来アルツハイマー病やガンを発症するリスクが高まることも危惧されています。

また、5時間睡眠の男性の睾丸は7時間睡眠の方に比べると有意に小さいことが海外の研究でわかっています。睡眠不足の男性は男性ホルモンであるテストステロンのレベルが10歳年上の方と同レベルにあるというのも、最近研究でわかった事実です。

2021年OECDの調査では日本人の平均睡眠時間は7時間22分。加盟国の平均である8時間24分よりも1時間以上も短く、加盟国中、最下位でした。なんとか時間をやりくりし、最低でも7時間は眠るようにしましょう。

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