【米国市況】S&P500最高値更新、ハイテク株主導-ドル144円台後半
27日の米株式相場は続伸。関税に関するニュースが意識される中、S&P500種株価指数は終値で最高値を更新した。今週は中東情勢のリスクが和らいだほか、米経済が持ちこたえていることが示唆された。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6173.07 32.05 0.52% ダウ工業株30種平均 43819.27 432.43 1.00% ナスダック総合指数 20273.46 105.55 0.52%S&P500種の最高値更新は2月以来となる。大型テクノロジー株が上昇をけん引し、エヌビディアは時価総額が4兆ドルに近づいた。アルファベットは約3%高。
トランプ米大統領がカナダとの貿易協議を全て打ち切ると表明したことを受けて、相場は一時下落する場面もあった。同氏はこれより先、米国が「おそらく4-5カ国」と通商合意を結んだと述べた。これには中国および英国との合意も含まれる。
UBSのデービッド・レフコウィッツ氏は「米国株は関税のために3月と4月に急落したが、そこから回復してきた」と指摘。「大半の大企業は関税の影響を比較的うまく乗り切るとみられるため、こうした相場回復は理にかなう」と述べた。
シティー・インデックスのマーケットアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「上乗せ関税の一時停止措置が終了する期限が迫っている。これが延長されるか、あるいはもっと具体的な合意に置き換えられない限り、新たな貿易摩擦の波が訪れる可能性がある」と述べた。
ベッセント財務長官は主要貿易相手との協議が9月1日までにまとまる可能性があるとの見解を示し、一時停止措置を延長する可能性を示唆した。 欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、EU首脳会議での非公開の場で、7月9日の期限前に米国と合意できるかもしれないと自信を示した。中国は、ここ数日間で米国との貿易枠組みに関する詳細をさらに確認したと発表した。
この日米ミシガン大学が発表した6月の消費者マインド指数(確報値)は、速報値から上方修正され、4カ月ぶりの高水準となった。別に発表された米個人消費支出(PCE)統計では、食品とエネルギーを除いたPCEコア価格指数の伸びが市場予想をやや上回った。
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのゲーリー・シュロスバーグ氏は、5月のPCE統計について「所得と支出の伸び悩みに加え、インフレ指標は連邦準備制度理事会(FRB)が目指す2%に十分近いことから、早期利下げへの期待は維持された」と指摘。「政策変更の機会は今年の最終3会合(9月、10月、12月)の一つで訪れる可能性が高い。その頃には関税引き上げがインフレに及ぼす影響が一段と明確になる」と話した。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のマイケル・ハートネット氏は、米国の利下げ観測を背景に株式市場へ大規模な資金流入が続いており、投機的な株式バブルのリスクが高まっていると指摘。EPFRグローバルのデータによれば、今年に入り既に1640億ドル(約23兆7200億円)が米国株に流入しており、年間ベースで過去3番目の規模となる勢いだ。
国債
米国債は下落(利回りは上昇)。先週末から続いた相場上昇が失速した。この日発表されたインフレ指標を受けて、年内の利下げ観測がやや後退した。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.83% 3.4 0.71% 米10年債利回り 4.27% 3.3 0.78% 米2年債利回り 3.75% 2.9 0.77% 米東部時間 16時54分市場は今年の利下げ幅に関する予想を引き下げ、7月利下げの確率は20%未満とみている。
ここ最近は一連の経済指標が利下げ観測を補強したほか、トランプ大統領が次期FRB議長にハト派的な人物を指名するとの見方から、相場は上昇していた。
コロンビア・スレッドニードルの金利ストラテジスト、エド・アルフセイニ氏は「市場はFRBのウォラー理事とボウマン副議長の発言を受けてややオーバーシュートした。週末にかけてリスクを一部削減している」と述べた。
市場は6月の雇用統計など来週発表される経済指標に注目している。
TDセキュリティーズの米金利戦略責任者、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「利下げは近いというかすかな楽観ムードがある。ウォラー、ボウマン両氏が7月会合も選択肢だと示唆したことが大きい」とブルームバーグテレビジョンで指摘。連邦公開市場委員会(FOMC)内では、年内2回の利下げを見込む派と利下げなしを予想する派の2陣営にわかれていると述べた。TDでは次回利下げは10月になると予想。それまでにはインフレや雇用市場に関する十分なデータがそろうとしている。
外為
外国為替市場ではブルームバーグ・ドル・スポット指数が上昇。トランプ氏がカナダとの貿易協議を全て打ち切ると表明したことを受けて、カナダ・ドルは下落した。午前の取引では米PCE統計が強弱まちまちの内容となり、ドルはもみ合いの動きとなっていた。
円は対ドルで小幅下落。一時0.4%下げて1ドル=145円に接近した。米国債利回りの上昇が円の重しとなった。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1195.87 1.86 0.16% ドル/円 ¥144.68 ¥0.26 0.18% ユーロ/ドル $1.1719 $0.0018 0.15% 米東部時間 16時54分ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのグローバル市場戦略責任者ウィン・シン氏は「来週には関税を巡るノイズが相次ぐと見込まれる。ドルが堅調を維持できるかどうかが注目だ。私の直感では、短期的には米国指標の軟化がドル安の大きな要因になるだろう」と述べた。
同氏は「5月のインフレ指標上振れで、FRBは7月も政策を据え置くだろうが、実体経済がさらに軟化すれば9月の利下げに向けた地ならしが進むはずだ」とも話した。
バークレイズの通貨ストラテジスト、スカイラー・モンゴメリー・コーニング氏は「米国とカナダの貿易協議の決裂は、カナダ・ドルにとって明確なマイナス材料だ」と指摘。「交渉は明らかに後退した。楽観論の織り込みを見直す必要性を意味する」と述べた。
原油
ニューヨーク原油相場は小幅ながら3日続伸。米国とイランによる核協議を巡る不透明感や、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスが、大幅な供給引き上げの継続を検討するとの報道が意識された。
OPECプラスの主力8カ国は、過去3カ月連続で当初予定の3倍となる日量41万1000バレルの生産拡大に合意している。複数の参加国代表によると、7月6日の会合では8月についても同じ規模の供給増を検討する用意がある。代表らは匿名を条件に語った。
関連記事:OPECプラス、8月分も大幅な供給拡大を検討へ-参加国代表
アゲイン・キャピタルのパートナー、ジョン・キルダフ氏は、この生産拡大はほぼ予想通りだとしつつ、「OPECプラスが日量41万1000万バレルを上回る生産拡大に踏み切る可能性も示唆されている」と指摘。「次の注目は自主減産の目標未達状況に関する報告だ。最終的な決定は、価格にとって弱気材料となる可能性が高い」と述べた。
原油は一時1.3%高となる場面があった。米エネルギー省のライト長官は対イラン制裁は当面維持されると、ブルームバーグに述べた。トランプ大統領はまた、対イラン制裁の緩和に向けた取り組みを全て中止すると表明。イスラエルとの戦争で勝利を宣言したイランの最高指導者ハメネイ師を、強く非難した。
関連記事:トランプ氏、イラン制裁緩和の検討中止-ハメネイ師の勝利宣言に反発
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は前日比28セント(0.4%)高の1バレル=65.52ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は4セント(0.1%)上昇の67.77ドル。
金
金スポット相場は続落。週間でも下げ、2週続落となった。世界的な貿易協議の進展や米消費者心理の改善を受け、安全資産としての金の魅力が薄れた。
6月の消費者マインド指数は4カ月ぶり高水準に上昇。またインフレ期待が大きく低下し、経済見通しと家計の財務状況に関する懸念は後退した。一方、欧州連合(EU)と米国は、上乗せ関税の一時停止措置が終了する7月9日の期限までに何らかの形で貿易合意にこぎ着けられると考えている。また中国は、ここ数日間で米国との貿易枠組みに関する詳細をさらに確認したと発表した。
貿易協議の進展で、株式などリスク資産に対する投資家のセンチメントが改善する一方、金の逃避需要は後退している。金スポットは27日、一時2.2%安の1オンス=3255.94ドルと、日中ベースで5月29日以来の安値を付けた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時58分現在、前日比52.04ドル(1.6%)安の1オンス=3275.88ドル。週間では2.7%下げた。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限はこの日60.40ドル(1.8%)下げて3287.60ドルで終了。
原題:S&P 500 Hits Record High After $10 Trillion Rally: Markets Wrap(抜粋)
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