植田日銀総裁「賃金に上昇圧力続く」、ジャクソンホール会議に登壇

日銀の植田和男総裁は米国時間23日、ワイオミング州ジャクソンホールで開かれたカンザスシティー連銀主催のシンポジウムに登壇し、「大きな負の需要ショックが生じない限り、労働市場は引き締まった状況が続き、賃金には上昇圧力がかかり続けると見込まれる」と語った。写真は左から英中銀のベイリー総裁、ECBのラガルド総裁、日銀の植田総裁、FRBのパウエル議長。8月22日、ジャクソンホールで撮影(2025年 ロイター/Jim Urquhart)

[23日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は米国時間23日、ワイオミング州ジャクソンホールで開かれたカンザスシティー連銀主催のシンポジウムに登壇し、「大きな負の需要ショックが生じない限り、労働市場は引き締まった状況が続き、賃金には上昇圧力がかかり続けると見込まれる」と語った。

欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁、英中銀のベイリー総裁とパネル討論会に参加した植田総裁は、人口が減少する日本の労働市場について説明。日銀が発言内容をホームページで公開した。

日銀を巡っては、日本経済が底堅く推移していること、米国の関税に対する過度な警戒が和らいだことなどから早期利上げ観測が強まっており、今後の金融政策の手掛かりを探る上でこの日の植田総裁の発言に注目が集まっていた。

市場では「金融政策に関する直接的な示唆や手掛かりに乏しいが、構造的な賃金上昇圧力の高まりは前向きに評価しており、米関税政策の影響が限定的なことが見えてくれば、段階的に利上げを続けていく方針であることがうかがわれる」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志・主席エコノミスト)との見方が出ている。

植田総裁は、2010年代から大規模な金融緩和を実施する中で労働需給が引き締まり始めたと指摘。コロナ禍後の世界的なインフレ進行が国内物価を押し上げ、ここ3年は高い賃上げ率も実現しているとした上で、「賃金上昇が大企業から中小企業にも広がっていることも、重要な点だ」とした。

女性や高齢者、外国人の労働参加が増えたこと、転職など人材の流動性が高まったこと、人工知能(AI)の活用が広がり始めたことなど労働市場全体の変化にも触れ、「こうした一連の動きは、労働市場の状況と賃金や物価との関係を複雑にする」と分析。「経済の供給サイドで起きている変化に関する評価も踏まえたうえで、金融政策を運営していく」と語った。

(山口貴也 編集:久保信博)

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