米価格高騰も「もうからない」の悲鳴…約70年続く米農家三代目の本音「重労働。担い手不足で農家の数が単純に減ってしまう」 千葉・旭市
16週連続で上がり続けている米の価格。 “米不足”が叫ばれ米の価格高騰が続いていますが、農家からは「もうからない」との悲鳴が。 29日の「ソレってどうなの?」は“コメ価格高騰でも農家はもうからない?”をテーマにお伝えします。 29日、青井実キャスターが訪れたのは、田園風景が広がる千葉・旭市です。 待ち合わせをしていたのは、旭市で代々米農家を営む加瀬園芸・三代目の加瀬好基さん(34)。 今の時期、田植えシーズンは終盤を迎えていて、早速、案内していただいたのは苗が保管されているビニールハウス。 青井実キャスター: これが苗?こういうふうになっているんですね。 三代目・加瀬好基さん: 4000枚ちょっと、自分の所では種まきしている。 早速トラックに苗を積み込む作業を手伝わせていただきました。 青井実キャスター: 結構重いですね。軽々持ってらっしゃったから。重い…私だけハアハア言ってる。 苗の重さは5kg以上あり、これを全て手作業で行っているといいます。 青井実キャスター: 高齢者の方でもできるけど、スピードが落ちるし、ここからまたひずみというか、問題点があるんだなと体で感じた。 作業効率が一番大事だという加瀬さん。 ただしかし、機械に頼れる作業ばかりだけではなく、人の手で行わなければならない作業が多くあるといいます。 そして、休む間もなくトラックに積み込んだ苗を植える作業に向かいます。 加瀬さんが米を作っている田んぼの総面積は約20ha。 東京ドーム約4個分の広さに相当します。 そして、先ほど積み込んだ苗をまた人の手で田植え機に積み直します。 青井実キャスター: これは大変。 三代目・加瀬好基さん: これを32回やる。 青井実キャスター: 腰がもげますね。 加瀬さんは米農家の3代目で、初代のおじいさんから約70年にわたって一家で米作りを行ってきました。 今は2代目の62歳のお父さんなどと一緒に毎日農作業を行っているそうです。 ここまでの作業を行うのに青井キャスターを含めて4人で約40分。 そして、やっと田んぼでの作業が始まります。 三代目・加瀬好基さん: この田植え機はGPSが備え付けられていて、ボタン1つで真っ直ぐ植え付けてくれる。 青井実キャスター: 今はそういうことができる時代なんですね。 28日に発表された、全国のスーパーで販売された米5kgあたりの平均価格は、前の週より3円高い4220円と16週連続で最高値を更新している状況ですが、今回の価格高騰で米農家の収入は増えているのでしょうか? 青井実キャスター: 今お米高いじゃないですか?利益は2年前と比べてどうですか? 三代目・加瀬好基さん: コメの価格が高くなったから、もうかっていると言われたらそうではなく、油代・肥料代、全てにおいてコストが上がっているので、現状は平行線のままかなと。 加瀬さんは収穫したお米をJAなどには卸さずに自身で販路を開拓して米問屋などに販売するなどしています。 青井実キャスター: 市場に出回っている量は足りている? 三代目・加瀬好基さん: 実際のところ足りていないと思う。 青井実キャスター: お米が足りないという中で、作る場所を「もっと広げればいい」という意見はどう思いますか? 三代目・加瀬好基さん: 大規模になればなるほど、効率が非常に求められる。田んぼが飛び地だったりとかになると、移動するにも時間がかかる。そういう面では農地の集約が非常に大事になってくる。 加瀬さんの田んぼの近くにも休耕地になっている田んぼなどがありました。 ただ、こうした土地を活用して生産量を増やそうとしても、個人では作業効率の悪さから利益につながりづらく、手が出せない現状があるといいます。 そして加瀬さんは、こんな本音も話していました。 三代目・加瀬好基さん: 農家というのは結構重労働の仕事。価格転嫁という面では、米価は上がっていただきたいのが本音。 さらに、取材を進めていくと価格の現状とともに様々な決断を迫られている現実が見えてきました。 三代目・加瀬好基さん: 今までは減反政策って言って、米がたくさん昔は余ってたから転作して、国から補助金をいただいて耕作するっていうのがあった。 加瀬さんは、2024年までは飼料米と食料用の米を7対13の比率で作ってきましたが、2025年は1対19に。 安定的な収入が得られる飼料用の米を減らしてでも、2025年は食料米を増やして対応しなければいけないと考えているといいます。 さらに決断を迫られているのは、米自体の価値の上昇です。 独自での米のブランド化を行うことによって、さらに日本国内で米が消費されるようになってほしいといいます。 ただ一方で、まだ決断しきれないこともあるといいます。 三代目・加瀬好基さん: 本当に担い手不足で農家の数がもう単純に減ってしまう。 青井実キャスター: 今4代目で息子さんいるけど、正直なところ継がせていきたい? 三代目・加瀬好基さん: 自分としては正直(継がせたいと)思っています。思ってますけども、どういうふうに変わっていくのかわからない状態ですので、やってくれとはね…ちょっと言いにくい部分はあります。 大きな転換期を迎えている日本の米問題。 生産者と消費者の互いが納得のいく状況を作るまでに、加瀬さんはどのくらい時間がかかると考えているのでしょうか。 三代目・加瀬好基さん: もう10年、20年。 青井実キャスター: 10年、20年ですか、皆さんが求める農業という形にいくには。 三代目・加瀬好基さん: そうですね、かかるんではないかなと思います。