トランプ関税懸念も市場に落ち着き、「解放の日」混乱乗り切った自信
トランプ米政権による上乗せ関税発動が懸念される中、株式市場の投資家らは、大統領が貿易相手国・地域に対する関税措置を大々的に発表した4月の「解放の日」を思い出しながらも、大きな懸念を示す様子はみられていない。
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスが先週、高値を付けたほか、米国や欧州、香港のボラティリティー関連指標は4月のピーク時から半分余り低下している。
ゴールドマン・サックス・グループのプライムブローカレッジ部門のデータによると、短期志向の投資家による先週の買い越しは約10年で最高水準に達した。BBVAのストラテジスト、ミハリス・オニシフォロウ氏は先週のリポートで、この数カ月間のような空売りの買い戻しではなく、大口投機筋が上昇相場に追随しているようだとし、「根強い悲観論のせいで、多くの市場参加者が取り残されている」と述べた。
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4月の「解放の日」によって市場が混乱に陥って以来、中東での紛争や関税を巡る不透明感など、さまざまな出来事を乗り越えた株式市場は、回復力への自信を深めている。最近ではハイテク株の上昇や予想を上回る米雇用関連指標を背景にS&P500種株価指数は3日に過去最高値を更新。先週末4日のアジアおよび欧州市場は、トランプ氏が最大70%の関税を各国に通知すると発言した後でさえ、堅調な値動きを維持した。
こうした中、BNPパリバの株式デリバティブストラテジスト、ベネディクテ・ロウ氏は、市場では7月9日の期限におけるユーロ・ストックス50指数の変動幅が1%強と見込まれていると指摘。ボラティリティーの期近物と期先物との価格差が拡大する中で、期近物を買いつつ現資産のこまめなポジション調整により利益を狙う「ロング・ガンマ」戦略の妙味が増していると述べた。
4月には、同様のガンマ戦略が「解放の日」におけるインプライド・ボラティリティーとリアライズド・ボラティリティーの急上昇によって大きな利益を生んだ。当時、ドイツのDAX指数における「割安なガンマ」を推奨していたバンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストらは現在、ユーロ・ストックス50指数での同様のポジションを推奨している。一方、ロウ氏は今回は同様の結果を期待していないとの見方を示している。
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トランプ政権下での市場変動の激しさを踏まえ、一部では市場間のボラティリティーを活用した戦略を推奨する声もある。しかし、このようなスプレッド取引は、かつて売買高の多くを占めていたストラクチャード(仕組み)商品関連のフロー減少により、近年は下火になっている。加えて、関税を巡る見通しが絶えず変化する中で、市場間のボラティリティーへの影響を見極めることも一層難しくなっている。
トランプ氏が発表した上乗せ関税の一時停止期限が9日に迫る中、ベッセント財務長官は期限までに合意がまとまらない一部の国について、3週間の交渉期間延長の選択肢が与えられる可能性を示唆。ラトニック商務長官はトランプ氏による国・地域別の関税措置について、8月1日に発効すると述べている。
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