ウクライナ保安庁、西部でハンガリー軍事情報機関のスパイネットワークを摘発
SBU広報室が公表した。
発表によれば、このグループの課題は、ウクライナ西部ザカルパッチャ州の軍事防衛に関する情報収集、地域の地上・空中防衛に関する脆弱な場所の模索、地元住民の社会・政治的な意識調査(特に地域にハンガリー軍が入ってきたシナリオの住民の反応)だったという。
SBUは、ザカルパッチャで、このハンガリー情報機関のエージェントを2名拘束したと伝えた。
捜査により、この2名を担当する責任者は、ハンガリー軍事情報機関の職員であることが判明し、SBUはその人物はすでに特定したという。
拘束されたエージェントの内1人は、ザカルパッチャ州ベレホヴェ地区出身の40歳の元軍人で、2021年にリクルートされた上で、「待機」状態にあったという。
SBUの防諜要員と捜査員の情報では、ハンガリー側担当者は2024年9月にこのエージェントに活動をさせ始めたという。
その際この男性は、地元住民の世論を分析するという課題を受けたとし、とりわけ、「ザカルパッチャ地方にハンガリー軍をはじめとする平和維持部隊が入ってきたら、地元の軍人や民間人の反応はどのようなものになるか」「ザカルパッチャのブラックマーケットで入手可能な軍用装備品や武器はどのようなものか」「地域のハンガリー住民の移民状況はどうなっているか」「ザカルパッチャ州にはどのような軍事部隊が配備されているか、多くの輸送車両、戦闘車両があるか」「法執行機関はどれぐらい整備されているか、人員は何人か」という課題だったという。
このエージェントの男性自身が、地域のウクライナ防衛戦力の配置や防空システム「S300」の座標を偵察したことが記録されているという。
さらに発表によれば、男性は、偵察情報を収集した後に、担当者への報告のためにハンガリーへと出国。国境を越える際には男性は、外国の施設での治療が必要な病気の父親のための介護人としての証明書を取得していたという。
捜査資料によれば、ハンガリー側担当者は、面会時にこの男性に任務遂行に用いるための現金を渡したと言う。加えて男性は、情報提供者のネットワークの構築にも取り組んでいたとし、少なくとも2名の人物をリクルートしようとしていたと発表された。
ハンガリーの情報機関は、エージェントネットワークを形成することで、情報収集の範囲を、前線隣接地域や最前線地域を含める範囲にまで広げることを期待していたと推測されている。
SBUは、今年の3月に、この男性とハンガリー側担当者の2回目の面会を記録したと報告。その際、男性は、秘匿通信のための特別なソフトウェアがインストールされた携帯電話を受け取ったという。
受け取った新しい課題の中には、ザカルパッチャ州の安全保障・防衛戦力代表者が使う公用車を特定することが含まれていたという。
さらに、男性は、ウクライナ軍の戦争や前線の出来事での損耗に関するデータを見つけて、ハンガリー情報機関に渡す課題を受けており、ウクライナの防衛戦力内の適切な接触先を集めていたという。
今回拘束されたもう1人の女性は、2025年にウクライナの安全保障・国防戦力から解任された元軍人だと報告されている。この女性の課題は、ハンガリー側にザカルパッチャ州内に配備されている航空機やヘリの情報、自身が勤務していた軍の基地の防衛システムの情報を提供することだったという。
SBUは、防諜要員はハンガリーのスパイネットワークの行動を1つ1つ記録した上で、容疑者を居住地で拘束したと報告。家宅捜索の際には、携帯電話やその他の工作活動の物的証拠を押収したとある。
SBU捜査員は、2名に対して、ウクライナ刑法典第111条2項(戒厳令化の国家反逆罪)の容疑を伝達。現在両名とも拘禁されており、財産没収の上での終身刑が科される可能性があるという。
今回の摘発特殊作戦は、検事総局の手続き監督の下で行われたとのこと。
これに先立ち、2018年9月、ウクルインフォルムは、ザカルパッチャ州ベレホヴェ市にあるハンガリー総領事館が、ウクライナ国民にハンガリー身分証明書(国籍証明のパスポート)を発行している場面の動画を公開していた。
このスキャンダルを受けて、当時ハンガリー政府は、ハンガリー法と国際法に合致しているものであるとし、ウクライナの規範にも反していないと強調していた。